技術解説(富士フイルムメディカル)

2015年4月号

Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

64列/128スライスCT「SCENARIA EX edition」による心臓領域の最新技術

萩原 久哉(CT・MRマーケティング本部)

心臓領域でCTに求められる性能として,被ばく低減技術や高画質化技術だけでなく,撮影前から後処理までのワークフローが通常のルーチン検査以上に重要になる。SCCT(Society of Cardiovascular Computed Tomography)ガイドラインでも,患者の適切なポジショニング,線量やピッチ,回転速度の最適化などが推奨されている1)
当社は2014年11月に,高速撮影や心臓の診断能向上だけでなく,線量最適化のための機能や最大で84kWまで出力可能な大容量X線管を搭載した新バージョン64列/128スライスCT 「SCENARIA EX edition」を発売した(図1)。本稿では,心臓検査のワークフローに沿って,SCENARIA EX editionの心臓領域に関連する技術を紹介する。

図1 SCENARIA EX editionの特長

図1 SCENARIA EX editionの特長

 

■IntelliCenter(横スライド+小視野用Bow-tieフィルタ)

SCENARIA EX editionは,従来の標準寝台とは別に,オプションとして横スライド機構を備えた寝台を組み合わせることができる。この横スライド寝台は,左右合わせて最大160mmの横移動が可能である。この機構を使って心臓を撮影中心に移動させ,さらに小視野用Bow-tieフィルタを用いてX線を関心領域に絞ることで,被ばく低減と空間分解能向上の両方の効果が期待できる。この撮影機能を“IntelliCenter”と呼ぶ。
寝台を横移動させずに標準のBow-tieフィルタを組み合わせた心臓検査と,IntelliCenterを使った心臓検査の被ばく低減効果を,仮想ファントムを用いてシミュレーションした。その結果,全体で24%の被ばく低減となり,さらにFOV外に限った場合では35%の被ばく低減効果があるという結果が得られた。

■CardioConductor(心臓撮影条件自動設定)

心臓検査は,患者の心拍のコントロールや数回の息止め練習,適切な撮影条件の設定,最適な心位相の探索など,CT検査の中でも非常に時間のかかる検査の一つである。SCENARIA EX editionは,心臓検査時のワークフローを改善するために,心臓検査の撮影条件を自動設定する“CardioConductor”を搭載した。
CardioConductorは,患者の息止め練習時の心拍数範囲を取得し,システムの推奨する撮影条件を自動設定する機能である。息止め練習は,コンソールまたはスキャナガントリ(Touch Vision)のどちらでも可能である。撮影条件設定は,使い勝手を考慮した“オート”や自由に条件をカスタマイズする“マニュアル”など,目的に合わせた使い方が選べる(図2)。

図2 CardioConductorの画面

図2 CardioConductorの画面

 

■IntelliEC Cardiac(心電同期における管電流変調)

“IntelliEC Cardiac”は,心臓検査時に目的とする心位相に応じて管電流を変調することで,心臓検査時の被ばく線量を低減することができる。一般的にはECG dose modulationとも呼ばれている(図3)。
心臓検査前のスキャン条件設定画面で,最適線量で撮影する心位相範囲と,低線量で撮影する心位相範囲を設定する。最適線量で撮影する心位相範囲を狭くするほど被ばく低減効果は高いが,患者の心拍数を考慮して設定する必要がある。最適線量で撮影する心位相範囲は,最大2相まで設定できるため,例えば収縮期と拡張期それぞれにmodulationを行うことが可能である。
また,心臓検査時に不整脈を検出した場合には,直ちに最適線量に切り替え,それ以降は最適線量のまま心臓検査を続けることもできる。

図3 IntelliEC Cardiacの概念図

図3 IntelliEC Cardiacの概念図

 

■CardioHarmony(最適心位相探索支援)

“CardioHarmony”は,撮影後,心位相ごとに作成された画像から心臓全体の動き量を抽出し,これが最小となる位相を最適心位相としてシステムが自動的に提案する機能である。通常,患者の心拍が十分に安定している場合は拡張期付近を探索することが多いが,
CardioHarmonyを組み込んでおくだけで,90%付近が最適な心位相である場合でも,約20秒で自動的に探索し,診療放射線技師が最適な心位相を見つけるまでの時間を短くすることが可能である(図4)。

図4 CardioHarmonyによる再構成

図4 CardioHarmonyによる再構成

 

■Intelli IP(Advanced)(逐次近似を応用したノイズ低減)

“Intelli IP(Advanced)”は,投影空間上でのノイズ成分を高精度な統計学的モデルに基づき逐次近似解法により低減した後に,画像空間上で解剖学的情報と統計学的情報を基に画質のコントロールを行う処理である。画像ノイズやストリークアーチファクトを大幅に低減する効果が期待できる。Intelli IP(Advanced)は,Level 1からLevel 7まで7段階の設定があり,数値が大きくなるほどノイズ低減効果が高くなる。Levelを7段階から選択できるため,撮影条件や目的に応じて効果の調整が可能である。

■Dose Information(線量情報の送信)

撮影後の線量情報をDICOMの構造化レポートとしてPACS,RISへ送信することができる“DICOM Dose SR(Structured Report)”を搭載した。また,線量情報をセカンダリーキャプチャ(画像)として作成し,CT画像と同様に一般的なPACSに転送することができる“Simple Dose Report”も搭載した。画像ビューワを利用して,撮影依頼元の医師がCT画像と一緒に線量情報を簡便に確認することが可能である(図5)。

図5 Simple Dose Reportの画面

図5 Simple Dose Reportの画面

 

* SCENARIA,IntelliCenter,CardioConductor,IntelliEC,CardioHarmony,Intelli IPは株式会社日立メディコの日本における登録商標です。

●参考文献
1)Abbara, S., et al. : SCCT guidelines for performance of coronary computed tomographic angiography ; A report of the Society of Cardiovascular Computed Tomography Guidelines Committee. J. Cardiovasc. Comput. Tomogr., 3・3, 190〜204, 2009.

 

●問い合わせ先
株式会社日立メディコ
CT・MRマーケティング本部
〒101-0021
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