技術解説(富士フイルムメディカル)
2013年4月号
Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点
SPECT装置BRIGHTVIEWシリーズ心臓核医学技術
三好 永哲(核医学治療製品営業本部)
心臓核医学検査は,「心臓核医学検査ガイドライン」1)に掲げられているように,心疾患の診療において,診断,重症度評価,治療方針の決定や予後評価に広く用いられている。201TlClをはじめ,123I-BMIPP,123I-MIBG,99mTcなど,さまざまな標識製剤が開発され,心機能解析,心筋血流イメージング,心筋代謝イメージングなど複数の情報が得られるようになった。また,解析ソフトの進歩により,心機能と心筋血流の同時評価なども可能となり,心疾患診療の重要な役割を担っている。
核医学検査では,高精度な診断を行うため,標識製剤から放出される放射線を最大限に生かし,限られた臨床検査時間とさまざまな状況に応じて,効率的に検査を行う必要がある。本稿では,こうした状況に最適化したPhilips製SPECT装置の技術について述べる。
■SPECT装置BRIGHTVIEWシリーズの特徴
核医学検査に最適な装置として,SPECT装置「BRIGHTVIEW」シリーズがある(図1)。BRIGHTVIEWシリーズには,従来好評な技術である,目的臓器をSPECT視野マスクが追従する機構であるRoving Mask(図2)とCardiac High Resolution(CHR)コリメータ(図3)を組み合わせた,心筋SPECT収集を高画質で撮像するための“CardioTrac”を有する。
CHRコリメータは,Low Energy High Resolution(LEHR)コリメータと比較して,空間分解能・感度を保ちつつ,コリメータが厚いこと(ロングボア)が特徴であり,検出器相対角度が90°の場合に,デッドスペース(撮像できない範囲)がほとんどなく近接撮像できる。さらに,コリメータと臓器の距離が離れていても,深部の画像ボケ(空間分解能の劣化)を抑えることができる。また,斜入してきたガンマ線の貫通(ペネトレーション)の影響を抑え,低エネルギー核種の99mTcや201Tlだけでなく,低・中エネルギー核種の123Iについても対応している。
さらなる特長として,最大15種類までの異なるSPECT撮像条件を同時に撮像できる機能である“Concurrent Imaging”もある。体格の小さい小児やSmall Heart対策として,異なる拡大率のデータの同時収集を行い,診断データとしての撮像ミスを減らすことができる(図4)。
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■診断精度向上への取り組み
診断精度向上のため,SPECT検査ではさまざまな取り組みが行われており,CTデータを用いたSPECTデータの減弱補正も有用な手段の1つである。
しかし,通常,SPECT検査は自由呼吸下,CT検査は呼吸停止下で行われるため,CTデータを用いたSPECTデータの減弱補正を行う場合,特に心尖部領域においてSPECTデータとCTデータに位置ズレが生じることもあり,正確な補正を行うためには注意を要する。
フラットパネルCTを搭載したSPECT装置「BRIGHTVIEW X」は,フラットパネルCT検出器とSPECT検出器が同一平面に配置されていることから,最小限の天板移動で天板のたわみによる位置ズレを抑えることができる。また,XCT収集も,自由呼吸下を考慮した体軸方向14.4cmの1回転60秒収集や,通常収集の1回転12秒,24秒収集が可能である。60秒収集では,減弱補正に特化した低線量撮像を採用し,被ばく低減を行っている。
さらに,診断精度向上に貢献する技術である“Full Iterative Technology(FIT)”を搭載している。これは,SPECTデータの再構成処理に,コリメータ開口径補正,減弱補正,散乱線補正(ESSE法2))を組み込んだ逐次近似法“Astonish”3)を使用し,加えて,CTデータの再構成処理にも逐次近似法を行う,SPECTとCTの画質向上技術である。Astonishのノイズ抑制およびコリメータ開口径補正の効果を利用することで,従来の半分の収集時間での心筋血流SPECT検査が試みられており,従来と同等の診断精度が得られることが報告されている4)(図5)。
多施設共同研究によると,心筋血流SPECT検査に対して減弱補正を行うことで,さらに感度・特異度が向上すること4)(図6),また,負荷のみの検査でも診断能が良いとの報告がなされ,Astonishを用いた,投与回数低減による被ばく低減の可能性も示唆されている5)。
■収集・解析処理フロー
BRIGHTVIEWシリーズは,静電容量センサにより,被検者に自動近接し,わずかなステップで近接SPECT検査を進めることができる。また,XCT検査も,CT検出器とSPECT検出器の同一平面設計により,ガントリ移動が非常にスムーズである。
解析についても,米国のCedars-Sinai Medical Centerと共同で開発された再構成ソフトウェア“AutoSPECT Pro”を用いることで,自動かつ再現性のある再構成データを生成することができる。心筋の自動抽出・軸調整の成功率も98.5%と高精度である6)。また,“AutoQUANT(QGS・QPS・QBS)”“Corridor 4DM”“Emory Cardiac Toolbox”といった心臓定量解析ソフトウェアも充実している。
* BRIGHTVIEW XのフラットパネルCTは,診断を目的としたCTではありません。
●参考文献
1)循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009年度合同研究班報告). 心臓核医学検査ガイドライン(2010年改訂版). 日本循環器学会, 日本医学放射線学会, 日本核医学会・他 編, 2010.
2)Frey, E.C., et al. : A new method for modeling the spatially-variant, object-dependent scatter response function in SPECT. IEEE, 2, 1082〜1086, 1996.
3)Jinghan, Y., et al. : Iterative SPECT reconstruction using matched filtering for improved image quality ; Nuclear science symposium conference record, IEEE, 4, 2285〜2287, 2006.
4)Venero, C.V., Heller, G.V., Bateman, T.M., et al. : A multicenter evaluation of a new postprocessing method with depth-dependent collimator resolution applied to full-time and halftime acquisitions without and with simultaneously acquired attenuation correction. J. Nucl. Cardiol., 16・5, 714 〜725, 2009.
5)Timothy, M. B., et al. : Multicenter investigation comparing a highly efficient half-time stress-only attenuation correction approach against standard rest-stress Tc-99m SPECT imaging. J. Nucl. Cardiol., 16・5, 726 〜735, 2009.
6)Germano, G., et al. : Automatic reorientation of three-dimensional, transaxial myocardial perfusion SPECT images. J. Nucl. Med., 36, 1107〜1114, 1995.
【問い合わせ先】核医学治療製品部 TEL 03-3526-8340