技術解説(富士フイルムメディカル)

2013年4月号

Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

心臓領域の検査におけるPhilips PET/CT装置の最新情報

新山 大樹(株式会社フィリップスエレクトロニクスジャパン ヘルスケア事業部ISアプリケーションサポート AMI)

■PET/CT装置による心臓領域検査へのClinical Solutions

心臓領域のPET/CT検査は,PETの持つ可能性への注目が高まっていることや,CT冠動脈造影,PET検査を補完するマルチスライスCTの普及により,検査数の増大が見込まれている。現在の臨床診療において,PETでは18F-FDGを使用した心筋viabilityの評価や,13NH3を使用した心筋血流の評価(図1)が行われており,CT検査と合わせて,今後はPETによる冠血流予備能測定や心筋機能解析,CT冠動脈造影などを組み合わせた検査が重要視されることが予想される。このように,心筋血流PETは,閉塞性冠動脈疾患を正確に診断できるための手段となり,加えて冠血流の絶対定量化が可能であるため,多枝冠動脈疾患の評価に向上をもたらす。現在では,標準的なイメージングプロトコルである心電図同期心筋血流PETによって,臨床的に有用なリスク層別化が可能となっている。

図1 Philips PET/CT装置による13NH3心筋PET検査の画像例

図1 Philips PET/CT装置による13NH3心筋PET検査の画像例

 

■PET装置のアドバンテージ

現在販売されているPETシステムの大半は,PET/CT装置であることから,CTとPETの心臓用アプリケーションを組み合わせた臨床検査が可能である。特に,CT冠動脈造影と心筋血流PETの組み合わせにより,診断精度の向上だけでなく,今後は分子イメージングにおける進歩を臨床応用に展開できる可能性も期待される。このように,心筋血流PETイメージングは,冠動脈疾患において重要な役割を果たしているが,特に心筋血流イメージングを語る上で,心筋血流PETはSPECTを補完しうるものと考えられる。診断精度でPETがSPECTに優れるのは,分解能だけでなく,PET/CT装置における吸収補正に起因するとも言える。また,PETスキャンはSPECTに比べ,比較的短時間で完了できる利点もある。

■心臓領域への検査におけるPhilips PET/CT装置

PhilipsのPET/CT装置ラインナップの1つである「GEMINI TF PET/CT」(図2)は,Cardiology領域におけるPhilipsのフラグシップ製品であり,PETイメージングの画質を向上させるTime of Flight(ToF) PETテクノロジー(図3)を搭載し,画質・分解能ともに非常に優れた画像を得ることができる。また,CTには,心臓領域のアプリケーションでパフォーマンスを広く認められた,64チャンネル「Brilliance CT」システムを統合することで,臨床的有用性を提案する。

図2 Philips GEMINI TF PET/CT

図2 Philips GEMINI TF PET/CT

図3 GEMINI TF PET/CTにおけるTime of Flightの概念

図3 GEMINI TF PET/CTにおける
Time of Flightの概念

 

Philips PET/CT装置の特長を図4に示す。被検者にアクセスしやすいオープンガントリ設計により,PETとCTが統合された環境での評価を容易にすることで差別化を図っている(図5)。

図4 GEMINI TF PET/CTのデザイン

図4 GEMINI TF PET/CTのデザイン
PET部(右ガントリ)は自走できる機構を持つ。

図5 オープンガントリ設計

図5 オープンガントリ設計
PETとCTが容易にセパレートできることで,スタッフによる患者へのアクセスが容易となる。

 

図6は,GEMINI TF PET/CTにおいて,90秒で収集したPETデータの画像例である。解剖学的構造が明瞭に描出されている。また,ToF効果により,従来のPET装置よりも画質の向上を実現している(図7)。

図6 GEMINI TF PET/CTによるToF-PET画像(90秒収集)

図6 GEMINI TF PET/CTによるToF-PET画像(90秒収集)

 

図7 Non-ToFとToF:心筋PET画像の比較

図7 Non-ToFとToF:心筋PET画像の比較

 

■解析アプリケーションの紹介

PETの心筋血流データおよび心筋viabilityデータは,定量評価を用いて解析することができる。
“Emory Cardiac Toolbox”(図8)では,統合されたソフトウェア環境で,心筋の血流,機能,およびviabilityを解析できる。主な機能には,スライスの比較レビュー,血流データとviabilityデータの比較,3D画像表示(右側の画像),心電図同期検査における機能解析,1画面に表示されるサマリーページなどがあり,血流データとviabilityデータの比較時には,ブルズアイ表示で安静時の血流とFDG viability検査結果を比較して,両者における分布の違いを示す。また,3D画像の比較により,負荷時および安静時の左室の大きさと心筋血流を直接目視可能となっている(図9)。

図8 Emory Cardiac Toolbox

図8 Emory Cardiac Toolbox
図では安静時の血流は異常であり,生存組織を示しているFDG検査とは一致していない。

 

図9 Emory Cardiac Toolbox

図9 Emory Cardiac Toolbox

 

本稿では,心臓領域におけるPhilipsのPET/CT技術について紹介した。Philipsは,これまで開発した臨床プロトコルを診療にいち早く導入してきており,特に,心臓領域の画像診断はPETビジネスにおいても重視している。これらが製品へのイノベーションおよび臨床におけるリサーチプログラムに反映できるよう,今後も開発を進め,われわれの経験やノウハウを通じて,より良い医療実績の提供をサポートし続けていく。

 

【問い合わせ先】
(株)日立メディコ 核医学治療製品部 TEL 03-3526-8340
(株)フィリップスエレクトロニクスジャパン フリーダイヤル:0120-556-494 【フィリップスお客様窓口】土日祝休日を除く9:00〜18:00

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