Report 第15回日本術中画像情報学会
「術中画像の威力:デジタルとアナログの協調」をテーマに開催
2015-9-25
講演会場の様子
第15回日本術中画像情報学会が2015年6月20日(土),森田明夫会長(日本医科大学脳神経外科 大学院教授)の下,東京サイエンスセンター(神奈川県川崎市)にて開催された。今回は,「術中画像の威力:デジタルとアナログの協調」をテーマに掲げ,目覚ましく進歩するデジタル技術と,それを十分に生かすためのアナログ的ソフト面の双方に焦点を当て,特別講演,ランチョンセミナー,イブニングセミナー,一般口演,そして,手術デモンストレーションがプログラムされた。一般口演は,「モニタリング」「手術記録と教育」「手術画像・情報管理」「手術シミュレーションとナビゲーション」「術中画像(ECHOとCT)」「術中画像(蛍光診断)」「術中画像(MRI)」の7セッションが企画され,演題は計50題に上った。
ランチョンセミナー(座長:山形大学医学部先進がん医学講座・嘉山孝正氏)では,東京大学工学部長の光石 衛氏が「医療におけるロボティクスの展望と課題」と題して,最先端のデジタル技術の一つである治療へのロボット技術の導入について講演。手術ロボットの進化を,医師が判断と治療を行う第一世代,診断・治療が一体化し自動化が進む第二世代,再生医療やマイクロロボットが活躍する第三世代に分けて説明し,医療の未来を展望した。また,続いて行われた「シミュレーションラボ・ITラボ オンサイト・デモ&ライブ中継」(コーディネーター:森田会長)では,会場内の手術シミュレーションルームと講演会場をライブ中継でつなぎ,開発中の微小外科用ロボットなどのデモンストレーションが行われた。マイクロサージェリーロボットを使った実演では,0.3mmの人工血管の縫合などが行われ,中継だけでなく,ラボでの見学や手術デモへの参加もできる,会場設備を生かした企画となった。
一般口演で最も多い11題の発表が行われた術中MRIのセッションでは,座長を松田昌之氏(医療法人社団昴会湖東記念病院),藤井正純氏(名古屋大学),荒川芳輝氏(京都大学)が務めた。日立メディコ社製中低磁場MRIの導入施設からは,鹿児島大学と名古屋大学が報告した。鹿児島大学の平野宏文氏は,「膠芽腫生存率に関する術中MRIの効果」と題して,術中MRIが生存率へ及ぼす効果について手術難易度(重症度)を取り入れた検討結果を発表。開頭腫瘍摘出術107例を対象に,ステージ分類と重症度スコアで分類して評価したところ,摘出困難な重篤症例ほど術中MRIの使用が生存期間延長因子となっていたと述べた。また,名古屋大学の庄子 巴氏は,「低磁場術中MRIにおける超急性期出血・血腫判定用画像の新規開発」と題して報告した。庄子氏らは,腫瘍摘出腔内の髄液に混入した血腫の評価に適したシーケンスを検討した上で,閾値を調整することで特定の濃度以上の血腫を描出できるCNR(FLAIR)画像を開発。これにより,術中・術直後の超急性期血腫評価を行える可能性を示した。
術中MRIのパイオニアである東京女子医科大学からは,「手術画像・情報管理」のセッションで2題の発表が行われた。東京女子医科大学では,日立メディコ社製MRIを採用したスマートサイバー手術室「SCOT」を構築し,脳腫瘍摘出術で高い成績を上げている。セッションでは,田村学氏が「未来予測手術を見据えた覚醒下手術中の電気刺激位置情報取得」,岡本淳氏が「術中画像・情報を統合管理するスマートサイバー手術室(SCOT)の開発」と題して発表し,SCOTにおけるシステムやソフトウエアの開発,各種機器のネットワーク化について説明した。また,同セッションでは広島大学脳神経外科教授の栗栖 薫氏が「広島大学病院におけるSmart Cyber Operation Theater(SCOT)建設に向けて」と題して発表した。広島大学病院では,NEDOのプロジェクトに採択されたSCOTの導入を予定しており,パッケージ化・ネットワーク化されたSCOTの特徴と今後の計画について説明した。
次回は,「不易流行:基本の維持と新しさの追求」をテーマに,久門良明会長(愛媛大学脳神経外科教授)の下,2016年7月9日(土)に松山全日空ホテルで開催される予定である。