技術解説(キヤノンメディカルシステムズ)

2019年9月号

MSK Solution No.3[US]

タブレットエコーからプレミアムエコーまで ─整形外科領域における新たなソリューションの提供─

キヤノンメディカルシステムズ株式会社超音波事業部超音波開発部 松永 智史

■はじめに

近年,超音波診断装置は,疾病の早期発見,予防,そして治療時のガイドとしての役割が注目されており,いつでもどこにでも持ち運ぶことが可能なハンドキャリータイプは,その活躍の場を急速に広げている。タブレット端末型の「Viamo sv7」は,診察室はもとより,往診時の持ち出しも容易で,患者のそばで診断するPOCUS(Point-of-Care Ultrasound)に適した小型軽量で高画質な超音波診断装置である(図1)。
一方,プレミアム超音波診断装置「Aplio iシリーズ」は,“iBeam”技術,超高周波プローブ,“iSMI”など,数多くの革新的な画像化技術と先進アプリケーションを搭載し,最先端の医療を支援する。
本稿では,Viamo sv7とAplio iシリーズの最新技術を紹介する。

図1 Viamo sv7

図1 Viamo sv7

 

■美しい高画質・大画面をいつも手元に「Viamo sv7」

1.持ち運びが容易で長時間使用可能
一般的なA4サイズのタブレット端末とほぼ同じ大きさで,約1.2kgと軽量。さらに最大3時間使用可能な長時間バッテリーを内蔵しているので,オペ室やリハビリ室でも電源コンセントの位置を気にせず使用でき,電源の確保が難しい災害現場やスポーツの試合会場など,院外での使用にも適している。

2.素早く直感的な操作性
災害現場,スポーツの試合などの緊急時には,検査や診断に正確さとともにスピードが求められる。Viamo sv7は起動が速いので使いたい時にすぐに使え,画面をタップあるいはスワイプすることによって,直感的にさまざまな操作が可能である。Viamo sv7の専用プローブは4種類あり,腹部はもとより,心臓,乳腺,甲状腺,運動器,産科・婦人科など,幅広い臨床分野をカバーする。なかでも高周波プローブ「PLU-1004SD」は,筋や腱などの浅部組織を鮮明に描出できるので整形外科分野において有用である(図2,3)。

図2 高周波プローブによる肩腱板の描出

図2 高周波プローブによる肩腱板の描出

 

図3 高周波プローブによる腕橈関節の描出

図3 高周波プローブによる腕橈関節の描出

 

3.便利なカメラ機能
カメラ機能を用いれば,外傷の表面の様子や,整形外科のダイナミック検査による可動域などの写真をエコー画像と併せて保存することができる(図4)。

図4 Viamo sv7のカメラ機能

図4 Viamo sv7のカメラ機能

 

■超高画質と先進アプリケーション 「Aplio iシリーズ」

1.革新的な画像化技術
Aplio iシリーズでは,iBeam Forming技術を採用している。その要素のひとつが“Multi-Sync Pulser”で,波形形成の精度を高めて高純度な二次高調波成分を抽出する。次に,“Multi-Beam Receiver”で従来よりも多くのビームを同時受信し,フレームレートを維持しながら空間分解能を数倍に高める。さらに,“Multi-Harmonic Compounding”で1つの走査線に対して複数の異なる送受信ビームを重ね合わせることにより,細く,鋭く,均一なビームを形成する。これらの技術によりアーチファクトが低減され,高分解能で鮮明な画像を得る。
血流の画像化モードとしては,当社独自の“Superb Micro-vascular Imaging (iSMI)”を搭載している。組織の動きの特徴を解析して分離することにより,低速度であるモーションアーチファクトを大幅に低減しながら,同じく低速度な微細血流は維持し,画像化することができる。さらに,スキャンと信号処理を独立に最適化することで,高フレームレート化も実現している。

2.超高周波プローブ
「PLI-2004BX」は,“iDMS”技術を採用し,高感度,広帯域,高スライス分解能のすべてを同時に実現した,まったく新しい超音波プローブである。8〜24MHzという広帯域かつ超高周波が扱えるため,微細構造の描出に適している。従来プローブとの比較として,図5に手指の画像を示す。
また,ホッケースティック型のきわめて小さい生体接触部を有する「PLI-2002BT」は,通常のプローブでは当てにくい部位の画像描出に適している。PLI-2002BTも,PLI-2004BXとほぼ同等の超高周波かつ広帯域の特性を有している。
さらに,33MHzという超・超高周波の送受信が行える「PLI-3003BX」は,きわめて浅い領域に限られるものの,今までにない高精細な画質を提供できる。図6に手背の静脈の画像を示す。
これらのプローブラインアップにより,整形領域においても多様なニーズに対応することが可能となっている。

図5 超高周波プローブの画像例(手指)

図5 超高周波プローブの画像例(手指)

 

図6 超・超高周波プローブの画像例(手背の静脈)

図6 超・超高周波プローブの画像例(手背の静脈)

 

3.Fusion(画像融合)技術
Aplio iシリーズに搭載できる“Smart Fusion”は,プローブに装着されたポジションセンサにより位置情報をリアルタイムに認識し,あらかじめ装置内に保存したMRIやCTのボリュームデータから超音波断層像に対応するMRIやCTの断層像を切り出し,超音波画像と並べて表示あるいは重畳表示することができる。図7は,肘のMRIと超音波画像の重畳画像である。MR画像をガイドにすることにより,超音波断層像が理解しやすくなることが期待される。

図7 重畳画像と超音波断層像の並列表示

図7 重畳画像と超音波断層像の並列表示

 

■まとめ

タブレット型の高画質超音波診断装置Viamo sv7,プレミアム超音波診断装置Aplio iシリーズの主な最新技術について説明した。これらの超音波診断装置を通じて,整形外科領域において有用な幅広いソリューションを提供していきたい。

*Viamo,Aplioはキヤノンメディカルシステムズ株式会社の商標です。

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