技術解説(キヤノンメディカルシステムズ)

2019年4月号

Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

高精細CT/面検出器CTによるCardiac Imagingと新たな解析技術

山田 徳和(CT営業部)

64列CT装置の普及とともに,心臓CT検査も普及し,血管造影検査に迫るほど多くの検査が実施されている。
心臓CT検査は,虚血性心疾患の診断において除外診断に適していると証明されている一方で,冠動脈造影検査や心筋シンチグラフィなどの検査をゴールドスタンダードとした際に,特異度,陽性適中率に課題が残るとされている。
各社これらの課題を解決すべく,CT装置,解析技術を開発し改良を進めている。本稿では,高精細CT「Aquilion Precision」,面検出器CT「Aquilion ONE/GENESIS Edition」および医用画像処理ワークステーション「Vitrea」について紹介する(図1)。

図1 Aquilion Precision・Aquilion ONE 概観写真

図1 Aquilion Precision・Aquilion ONE 概観写真

 

●高精細CT Aquilion Precision

Aquilion Precisionは,従来のCT装置に比べ面内・体軸方向にそれぞれ2倍の空間分解能を得ることをめざし,必要とされる性能から各コンポーネント〔X線管システム,検出器(図2),撮影寝台,データ転送システムなど〕を開発した装置である。
世界初となる面内空間分解能0.15mmと最小スライス厚0.25mmを有し,従来型臨床用CT装置では得られない高精細撮影ができる160列マルチスライスCT装置である。
心臓全体を撮影するためには,心電図同期によるヘリカル撮影でのデータ収集を必要とするが,高い空間分解能を獲得したことでより正確な冠動脈の形態評価を可能にした(図3)。

図2 Aquilion Precision検出器と従来型検出器の比較

図2 Aquilion Precision検出器と従来型検出器の比較

 

図3 Aquilion Precisionで撮影された冠動脈CT画像 (画像ご提供:藤田医科大学病院様)

図3 Aquilion Precisionで撮影された冠動脈CT画像
(画像ご提供:藤田医科大学病院様)

 

‌●面検出器CT Aquilion ONE/GENESIS Edition

Aquilion ONE/GENESIS Editionは,0.5mm×320列の検出器を搭載した面検出器CTである(図4)。寝台移動することなく1回転かつ1心拍で全心臓の撮影が可能となり,心臓CT検査をより簡便な検査にした。また,面検出器による心臓CT検査では,「サブトラクション技術」「ダイナミックボリューム撮影」など,さまざまな技術の臨床応用が可能となる。

図4 0.5mm×320列 面検出器

図4 0.5mm×320列 面検出器

 

1.サブトラクション技術の臨床応用
造影画像から単純画像を差分して得られるサブトラクション画像は,広く臨床で用いられているが,拍動し続ける心臓での臨床応用は困難とされていた。
「面検出器CT」と「非線形位置合わせ技術」により,心臓(冠動脈)へのサブトラクション技術の臨床応用が可能となり,冠動脈CT検査において課題とされる石灰化やステント留置後の症例における診断精度の向上を可能とした(図5)。

図5 サブトラクション処理前後とCAGとの比較 (画像ご提供:磐田市立総合病院様)

図5 サブトラクション処理前後とCAGとの比較
(画像ご提供:磐田市立総合病院様)

 

2.ダイナミックボリューム撮影の臨床応用
Aquilion ONEでは,心臓全体(左室内腔および心筋)の造影剤の挙動を経時的にとらえるダイナミックボリューム撮影が可能である。
心筋灌流の評価を目的とした特長的な撮影モードとして,ダイナミックボリューム撮影時に特定の心位相をねらって間欠曝射を実施する機能を有している。本機能を用いることで,被ばく線量の低減を図りつつダイナミックボリュームデータを収集することが可能である。さらに,一連の撮影の中で最も冠動脈が造影される時相のみ一時的に線量を上げて撮影することが可能で,高画質なCTA画像も得ることができる(図6)。
ダイナミックボリューム撮影で得られる左室内腔と心筋の経時的な造影効果の変動情報を解析することで,定量的な心筋灌流情報を求めることが可能である。
解析には専用の解析ソフトウエアを必要とし,当社では医用画像処理ワークステーションVitreaにて解析ソフトウエアを提供している。

図6 ダイナミックボリューム撮影の種類

図6 ダイナミックボリューム撮影の種類

 

‌●医用画像処理ワークステーションVitrea

Vitreaには,画像を読み込むと冠動脈(芯線)の自動抽出とラベリングを行い,冠動脈内腔の径,面積,血管壁面積(容積)などを自動で算出する冠動脈解析ソフトウエアと,Aquilion ONEで得られた心臓のダイナミックボリュームスキャンのデータを用いて心筋灌流を解析するダイナミック心筋パーフュージョン解析ソフトウエアを搭載している。
ダイナミック心筋パーフュージョン解析では,安静時と負荷時のダイナミックボリュームデータを同時に読み込ませて解析を開始すると,自動的に左室の心軸および心筋の輪郭を抽出し,心筋灌流の計算が行われる。解析結果として,心筋血流量(myocardial blood flow:MBF)と冠動脈血流予備能(coronary flow reserve:CFR)が自動的に算出され,簡便に定量的かつ客観的な心筋虚血評価が可能である。また,MPR画像とvolume rendering(VR)画像に解析結果をオーバーレイ表示することが可能で,視覚的にも血流情報が判別しやすい仕様となっている(図7)。

図7 ダイナミック心筋パーフュージョン解析結果画面

図7 ダイナミック心筋パーフュージョン解析結果画面

 

本稿では,空間分解能を追究した高精細CT Aquilion Precision,安定した検査と臨床的な付加価値をもたらす面検出器CT Aquilion ONE/GENESIS Edition,CTで得られたデータの解析処理用の医用画像処理ワークステーション Vitreaについて紹介した。各装置に特色があり,それぞれの特長を把握する上で参考になれば幸いである。

*Aquilion Precision,Aquilion ONE/GENESIS Editionはキヤノンメディカルシステムズ社の商標

 

●問い合わせ先
キヤノンメディカルシステムズ株式会社
広報室
TEL 0287-26-5100
https://jp.medical.canon/

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