技術解説(キヤノンメディカルシステムズ)
2014年12月号
Digital Radiography(DR)を極める【動画編】
東芝循環器動画ネットワークとレポートシステム「CardioAgent Pro」(システム:CardioAgent Pro)
大江 光雄(東芝メディカルシステムズ(株)SI営業部)
循環器動画ネットワークは,当初はシネフィルムの電子化の位置づけであったが,近年,診療技術の発展と学会関係の動向によりレポート機能が非常に重要な役割を担うようになっている。本稿では,最近のレポートの技術動向について説明する。
■被ばく線量管理
患者のQOL管理では,治療成績とともに被ばく線量を管理することが重要である。従来は透視時間と面積線量計だけであったが,近年は照射位置,線量まで計算できるようになった。「CardioAgent Pro」では,血管撮影装置から“DoseRite DTS(Dose Tracking System)”の結果をレポートに取り込んで管理することができる(図1)。また,DoseRite DTS機能がない血管撮影装置でも,DICOM radiation dose structure report(RDSR)により撮影条件と面積線量を取り込んで皮膚線量を計算することができる(図2)1)。
この機能により,被ばく量の多い部位を意識して観察し,次回検査ではその部分を避けて照射できるようになった。
■学会レジストリ
多くの学会で治療結果を登録することが要求されている。J-PCI,J-EVT,およびJCDTRは,レポートを入力すると学会登録レポート(図3)が完成し,学会ホームページに自動登録できる。また,日本循環器学会,日本成人心臓血管外科手術データベース(JACVSD),小児各種レジストリ,脳神経外科学会などもレポートからレジストリフォーマットを作成できる。カルテからの登録は医師が直接入力する必要があり,入力項目が多いので大変な労力がかかっていたが,この機能により秘書への委託が可能になった。
■東京大学CAIRS-PCI
東京大学循環器内科が開発した,シェーマ上でラインを引くことで,狭窄の程度や留置したステントの位置を細かく設定できる新しい入力モジュール“CAIRS-PCI”をレポートに組み込んだ(図4)。さらに,これを多くの病院・研究機関に普及させることで,同大学が進める将来の臨床研究のための共有データベース化事業にも協力している。
◎
動画ネットワーク・レポートシステムは,カテーテル室で発生するデータを集約してレポートを作成する段階から,データを学会に登録して臨床研究に利用する段階に差し掛かっている。今後,臨床ニーズを先取りして医師およびスタッフを支援して,より患者のケアに注力できるシステムを開発していく所存である。
*CardioAgent Proは東芝メディカルシステムズ株式会社の商標です。
●参考文献
1)藤原知佳, 山崎智香, 大沼千津・他 : 循環器診療における患者被ばく線量管理ソフトの開発と検証. 第70回日本放射線技術学会総会学術大会, 2014.
●問い合わせ先
キヤノンメディカルシステムズ(株)
広報室
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