Canon Clinical Report(キヤノンメディカルシステムズ)
2021年1月号
回診用X線装置Mobirex
地域医療を支える基幹病院にCXDIとMobirexを導入しX線検査を一新 〜“その場ですぐに”の画像確認が臨床現場にもたらすメリット〜
佐野厚生総合病院
地域基幹病院として体制強化を進めている佐野厚生農業協同組合連合会佐野厚生総合病院は,2020年1月にデジタルラジオグラフィ「CXDIシリーズ」(キヤノン社製)を導入し,それまでのCR運用からFPD中心の運用へとX線撮影環境を刷新した。また,併せて回診用X線装置「Mobirex IME-3000D」(キヤノンメディカルシステムズ社製:以下,Mobirex)を導入して,病棟撮影や救急でのポータブル撮影に活用している。CXDI導入による運用の変化を中心に,同院におけるX線撮影の現況について,放射線科の江原信隆技師長と本郷宗史技師に取材した。
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体制強化を図る基幹病院にCXDIとMobirexを導入
2003年に現在地に移転した佐野厚生総合病院(531床)は,高度急性期医療から療養までを担うケアミックス型の二次救急病院として地域医療を支えている。村上円人院長が就任した2017年以降は,5疾病5事業を担う基幹病院としての使命を全うするため,糖尿病専門医の採用など各科への常勤医増員をはじめ,がん診療では内視鏡手術支援ロボット「da Vinci」の導入,災害医療では2つのDMAT立ち上げ(2020年4月に指定病院)など体制強化を進めている。江原技師長はじめ19人の診療放射線技師が在籍する放射線科では,院内勉強会や認定技師取得の推奨などをとおして知識と技術の向上に努めつつ,画像検査や放射線治療の業務に当たっている。
同院では,病院移転前の2001年にCRを導入し,一般撮影領域をデジタル化した。移転後も継続して使用してきたCRが経年劣化してきたことから更新が検討されたが,時代の流れを踏まえFPDの導入を決定。CXDIの採用を決め,2020年1月に一部CRを残してX線撮影の大部分をFPDに切り替えた。
軽量で堅牢なCXDIを病棟,救急,オペ室で活用
同院は,フルサイズの「CXDI-410C Wireless」を4枚,半切サイズの「CXDI-710C Wireless」と大四切サイズの「CXDI-810C Wireless」をそれぞれ2枚導入した。フルサイズの4枚は,外来一般撮影室2室の立位・臥位撮影台でそれぞれ使用し,半切サイズは病棟やオペ室でのポータブル撮影,救急での撮影(一般/ポータブル),大四切サイズは整形領域や保育器での撮影に活用している。
最新のCXDIワイヤレスシリーズは,軽量・防水・防塵を特長とし,シンチレータにヨウ化セシウムを採用することで高感度・低被ばく撮影を実現する。画素サイズはいずれも125μmで,整形領域で求められる詳細な観察も可能だ。
パネルの厚さは15.7mm,重さはフルサイズ2.8kg,半切サイズ2.3kg,大四切サイズ1.8kgと軽量で,江原技師長は,「CXDIは軽量なことに加え,深いくぼみを設けるなど持ちやすいように工夫されており,女性技師にも好評で救急やオペ室にFPDだけを持っていく時にも,軽々と手にして駆けつけています」と話す。
CXDIは,コントロールソフトウエア“CXDI Control Software NE”のわかりやすいGUIにより直感的な操作性を実現している。同院は,据え置き型のコントロールPCを外来一般撮影室に2台設置するほか,ノートPC型を3台導入して運用している。
病棟や救急で活躍する高出力なMobirex
放射線科では,CXDIと同時にMobirexを新たに導入し,2016年から使用している装置と合わせて2台のMobirexを病棟や救急を中心に活用している。
Mobirexは,本体幅56cmとスリムながら最大32kWの高出力が可能で,病棟などでも一般撮影並みの検査を実現する。X線管アームに伸縮可能なテレスコピック方式を採用しており,ベッド周りに機器が多く本体を近づけられない場合にも撮影をしやすい。本郷技師は,「パワーのあるMobirexでは,腰椎の側面撮影など,厚みがある部位でも視認性の高い画像を撮影できます。また,管電流が大きいため短時間でmAsを上げることができ,息止めが難しい患者でもブレなく撮影が可能です」と話す。
午前中に行う病棟撮影は,前日までに入っているオーダ(1日20〜30件)をRISからCXDIのノート型コントロールPCに送信し,FPDとペアリングさせた上で回診撮影を行う。一方,救急には専用の一般撮影室があるが,患者を動かせない場合にMobirexでポータブル撮影を行っている。Mobirexが2台体制になったことで,病棟撮影中に救急からポータブル撮影依頼が入っても迅速に対応できるようになった。なお,救急撮影室にはCRも設置されているが,現在は放射線科からCXDIを持ち込んでFPD撮影を行うことが多い。
さらに,CXDIはオペ室でも活躍している。オペ室にはCRとCXDIのノート型コントロールPCおよびポータブル装置が設置されており,FPD撮影がオーダされると放射線科からCXDIのパネルを持参して撮影し,撮影データはオペ室からRISに転送する。2020年からガーゼ残存などの事故防止のために開腹手術は全例で確認撮影を行うことになり,撮影件数が増えている。
■CXDIによる臨床画像
線量低減や画質向上,技師の業務負担軽減に貢献
CXDIの導入により,同院のX線撮影環境は大きく改善した。なかでも運用におけるメリットは大きく,技師の負担軽減や診療の質向上に直結している。病棟撮影では,CXDIのパネル1枚とコントロールPCをMobirexに積んでいけば検査を完遂することが可能だ。江原技師長は,「CRではポータブルに積載できる枚数が限られ,放射線科と何度も往復する必要がありましたが,その必要がなくなり,担当技師は余裕をもって業務に当たれるようになりました」と述べる。そして,FPDの最大のメリットは撮影後に“その場ですぐに”画像を確認できる点だと強調する。
「写損による再撮影をすぐに行えるため,病棟撮影では何度も患者のところへ行くことがなくなりましたし,オペ室では手術後のチェックを迅速に行えるため,医師を待たせずに手技を完了してもらえます。また,FPD撮影では画像を即時に確認できるので,二重曝射を防げることも技師の心理的な負担を軽減してくれます」(江原技師長)
本郷技師も即時確認の有用性について,「病棟で挿管したチューブや中心静脈栄養のカテーテルの位置を確認する撮影では,看護師や医師にその場で画像を確認してもらい,位置が不適切ならば迅速に対応してもらうことが可能です」と述べる。また,一般撮影においても,患者の在室時間がCR撮影の約1/4に短縮した。特に,複数枚を撮影するような整形領域検査では1/10程度まで短縮し,スループットが大幅に向上している。
さらに,FPD撮影の線量や画質について江原技師長は,「どの領域の撮影でも,CRと比べて半分以下の線量で十分に診断可能な画像を得られるようになりました。ポータブル撮影やブッキーを使用しない撮影では,散乱線低減処理を適用することで明瞭な画像を得られており,ポータブルの胸部撮影では線量を1/4程度にまで低減しています」と説明する。また,本郷技師は,「特に整形領域の画質が非常に良く,骨やインプラントのエッジが明瞭に描出されています」と述べる。
院内でニーズの高まるFPD撮影への期待
同院では,オペ室や救急などにCRを残しているものの,現在はFPD撮影が中心となっている。江原技師長は,「ポータブル装置のさらなるコンパクト化や,CXDIとポータブル装置の一体化が進めば,よりスマートに検査を行えると思います。FPD導入は技師の業務負担を大きく軽減しましたし,医師,患者にも大きなメリットがあります。FPD撮影のニーズは高く,FPDが不足することが増えているため,増設を検討中です」と話す。
CXDIは,2020年1月からキヤノンメディカルシステムズでも販売取り扱いが始まった。キヤノングループは“ONE CANON”としてメディカル事業の統合を進めていることから,将来的にX線撮影領域のよりスムーズな連携が実現することも期待される。X線検査を革新したCXDIシリーズが,地域基幹病院である同院の診療にこれからも貢献していく。
(2020年11月5日取材)
佐野厚生農業協同組合連合会
佐野厚生総合病院
栃木県佐野市堀米町1728
TEL 0283-22-5222
http://jasanoko.or.jp
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