Canon Clinical Report(キヤノンメディカルシステムズ)

2019年10月号

高速撮影と高スループットによる“ドクターフリー”のCT検査で病院経営に貢献 〜救急外来や心臓CTに対応し検査件数の増加と同時に、医師の働き方をサポート〜

済生会宇都宮病院

済生会宇都宮病院

 

栃木県宇都宮市の済生会宇都宮病院(小林健二院長)は、3次を中心とする救急医療の提供などで地域での中核的役割を果たしている。同院では、増え続ける心臓検査や救急撮影に対応するため、2018年7月にキヤノンメディカルシステムズのADCT「Aquilion ONE」を新たに導入した。検査のスループットだけでなく、“ドクターフリー”のコンセプトで医療経営や働き方も考慮した新しいADCTの運用について、本多正徳副院長兼診療部長と診療放射線技術科のスタッフに取材した。

本多正徳副院長兼診療部長

本多正徳
副院長兼診療部長

石川 剛 科長

石川 剛 科長

園部富美恵 係長

園部富美恵 係長

 

高度な診断を可能にする機器をそろえて高度医療を提供

済生会宇都宮病院は、1942年に宇都宮市に開設、1996年に現在地に移転し、病床数644床で地域がん診療連携拠点病院、地域医療支援病院などの指定を受け、栃木県救命救急センターを県から受託運営するなど、急性期病院として地域医療の要の役割を担っている。画像診断機器は病院1階に配置されており、CT3台、MRIは3Tを含めて4台のほか、血管撮影装置、PET/CTを含む核医学装置、放射線治療装置などが整備されている。CTは、他社製(海外メーカー)の2管球装置と64列2台が導入されていたが、2018年7月に64列CT1台をリプレイスして、320列ADCTのAquilion ONEが稼働を開始した。
本多副院長は、同院における機器導入の考え方について、次のように説明する。
「地域の中核基幹病院としては、高度医療が提供できる最先端の機能を備えていると同時に、病院経営的にコストパフォーマンスに優れていることも必要です。一方でCTについては、検査にかかる医師の人件費コストをいかに削減できるかが選定の優先事項でした。例えば、心臓CTで高心拍でも画像が取得できる時間分解能の高い装置を導入すれば、βブロッカーを使わずにすみ“ドクターフリー”での検査が可能です。医師のマンパワーが限られる中で、心臓検査にかかる時間を減らすことができれば、単なる人件費の削減だけでなく、その時間をほかの業務に振り分けることで医療収入の増加にもつながります」
最初にドクターフリーのコンセプトで体制を構築した2007年以降、救急撮影をはじめとしてCTの検査件数が増加し、増設を含めた新たなCTの導入が検討された。本多副院長はその経緯について、「心臓CTが増加し、検査までの待ち時間が長くなっていました。増設するほどの件数増加ではなかったことから、救急外来や入院患者の撮影を主に行っていたCTをリプレイスすることにしました。機種の選定では、改めてドクターフリーでの検査が可能なスピード、救急撮影に対応できるスループット、64列の部屋に設置できるコンパクトさをポイントに検討を行い、Aquilion ONEを導入しました」と述べる。

ドクターフリーの心臓CTに対応するAquilion ONE

2007年に発売されたAquilion ONEは、0.275秒/回転という撮影スピードの向上やハーフ再構成などで、心臓のワンビートのボリュームスキャンを可能にし、多くの施設で実績を積み重ねてきた。本多副院長はAquilion ONEについて、「救急撮影では面検出器による全身パンスキャンが可能で、高い性能を持つことはわかっていました。心臓撮影についても画質の向上と収集時間の短縮が図られており、多くの臨床データを見て、これならばドクターフリーの運用が可能だと判断しました。実際に稼働後は基本的に医師が検査につくことはなく、ドクターフリーでの運用を行っています」と述べる。
診療放射線技術科の石川 剛科長は運用について、「導入前には心臓CTの予約待ちは2週間を超えていました。新たにAquilion ONEが導入されたことで待ち時間は短縮されています。検査のスループットについても、撮影時間、画像の処理時間も速く処理能力の高さを実感しています」と説明する。CT担当の園部富美恵係長は心臓CTについて、「高心拍や不整脈のある患者さんの検査オーダが多くなっていますが、Aquilion ONEでは1心拍でのボリュームスキャンに加え、不整脈が起きた場合は次の心拍で再撮影を行う自動制御機能によって、ハートレートが高く、心拍変動が不安定な患者さんでも安定した検査が可能です。さらに、逐次近似画像再構成の“FIRST”を適用することで、ノイズの少ない画像が得られます。精度の高いデータにより画像処理の時間も短縮でき、迅速な情報提供が可能です」と評価する。

救急を含め24時間フル稼働するAquilion ONE

救急を含め24時間フル稼働するAquilion ONE

 

スピードと高スループットで検査件数が増加

2018年8月のAquilion ONEの本稼働開始後、救急体制の充実もあり検査件数は大きく増えている(グラフ参照)。救命救急センターでは、2019年4月から救急医を9名増員し、総勢17名で外来から集中治療まで一貫した医療を提供する体制を整えた。救急受入件数は前年比で月100件以上増えており、救急車搬送台数は年間8000台に迫る勢いだ。それに伴い、Aquilion ONEの検査も増加し、時間外で1日平均15件前後、多い時には20件にもなるなど、24時間フル稼働している。救急以外でもAquilion ONEでの検査が増えており、2019年7月には3台のCT検査合計3260件のうち、Aquilion ONEは1480件と45%を占めた。
検査は、診療放射線技師がオーダ内容などから振り分けている。Aquilion ONEでは、救急外来、入院患者の検査が多いが、そのほか小児科や血管系、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)や脳神経外科の頭部3D撮影などを行っている。石川科長は、「心臓CTでも不整脈症例や全身の血管撮影など、オーダの内容から判断して振り分けています。診療科からはAquilion ONEで撮影してほしいというオーダもあり、どうしても撮影件数は増えてきますね」と言う。
現在、放射線科では画像診断医10名で、画像診断管理加算2を算定している。本多副院長は病院運営にもたらすメリットについて、「24時間絶え間なく検査が行われる中で、夜間、休日を含めて翌診療日までにレポートを提供するという加算の要件を満たすのは大変なことです。当院の放射線診断専門医による遠隔読影システムなど、救急・集中治療科や他診療科の医師の業務をサポートする環境を整備していますが、経営的な側面のみならず、現在求められている医師の働き方も考慮した体制を構築するためにも、スループットの高いAquilion ONEのような装置が必要です」と説明する。

■済生会宇都宮病院におけるCT検査数推移

済生会宇都宮病院におけるCT検査数推移

 

面検出器の特徴を生かした撮影方法を活用

園部係長はAquilion ONEでの検査のメリットについて、「面検出器の1回転で広範囲をカバーできるメリットを感じています。体動のある方の頭部撮影や小児、整形外科領域など、スカウト画像を撮影しなくても、そのまま撮影できるので、確実にスループットは上がっています。撮影時間も1秒以下と短く、撮り直しもないので、患者さんへの負担も少なく、被ばくの低減にもつながっています」と評価する。Aquilion ONEでは、バリアブルピッチヘリカルスキャン(vHP)や4D perfusionなどを利用した検査が可能になった。vHPはTAVIの術前スクリーニングなどに用いているが、園部係長は、「心臓を含めた大血管を1回のスキャンでそのまま撮影できるので、血管系の特殊な撮影ではAquilion ONEを使っています」と述べる。
Aquilion ONE導入前に懸念となったのが、機器の操作環境である。CTの操作は、担当技師だけでなく当直に入る技師全員が習得する必要があった。石川科長は、「ほとんどのスタッフがキヤノンメディカルシステムズのCTを扱うのは初めてで、その部分を一番心配しましたが、結果的にはまったく問題ありませんでした」と述べる。また、石川科長はサービスについて、「救急を含めて24時間稼働する当院のような運用では、故障などトラブル時の対応が重要です。機械ですから故障があるのは当然ですが、いざという時のサポート体制が充実していることが大きなポイントになります」と述べる。

■Aquilion ONEによる臨床画像

症例1:頭部外傷・側頭骨骨折(生後2か月の乳児)

 

症例2:腹部大動脈瘤の切迫破裂・ステントグラフト施行予定

 

AIなどを用いた診断や業務の効率化に期待

本多副院長は、「放射線科の読影や検査業務への人工知能(AI)の活用を期待しています。AIによる診断支援は画像診断医にとって究極の労務軽減につながりますので、技術をさらに発展させてほしいですね」と期待する。
CTのラインアップに加わったAquilion ONEが、臨床の最前線の多忙な診療をサポートし、病院運営の改善や医療の質の向上に貢献している。

(2019年8月26日取材)

 

社会福祉法人恩賜財団 済生会支部栃木県済生会宇都宮病院

社会福祉法人恩賜財団 済生会支部栃木県済生会宇都宮病院
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http://www.saimiya.com/

 

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