Canon Clinical Report(キヤノンメディカルシステムズ)
2019年2月号
救急車年間1万台を受け入れる民間病院で急性期医療の診断に80列CTを活用 〜救急用CTとして連続撮影に対応し50件/日の検査に迅速対応〜
苑田第一病院
医療法人社団苑田会(苑田一郎理事長)は、東京都足立区を中心に11の医療機関を展開する。苑田第一病院は、その中核施設として年間1万台を超える救急車を受け入れるなど、24時間365日の断わらない救急医療を展開し東京都東北部(城東地区)における“最後の砦”として診療を提供している。同院は2018年2月に救急用のCTを16列から、キヤノンメディカルシステムズの80列CT「Aquilion Lightning / Helios Edition」にリプレイスした。外傷や脳卒中など緊急検査を中心に1日50件以上の検査を行うCTの運用を、賀川幸英院長と放射線科の平畑 忍副主任に取材した。
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救急医療に特化し年間1万台の救急車を受け入れ
苑田第一病院は、東武スカイツリーラインの竹ノ塚駅から商店街を抜けた国道4号線沿いにある。病床数は221床だが、ハイケアユニット(HCU)20床、脳卒中ケアユニット(SCU)6床などを設け、年間1万台を超える救急車を受け入れるなど、救急医療に特化した診療を行っている。東京都の地域救急医療センターの指定を受け、二次救急医療機関として東京都東北部(足立区など)を中心に、隣接する埼玉県草加市、八潮市などからも患者を受け入れている。賀川院長は同院の診療について、「地域の要望にこたえて、24時間365日、断らない救急医療がモットーです。救急医療は苑田会グループの原点でもあり、病院の開設当初から力を入れて取り組んできました。内科系からスタートし消化器外科、脳神経外科と対応領域を広げ、地道に実績を重ねることで信頼を得てきました」と述べる。
同院の救急体制は、休日・夜間帯でトリアージを担当する救急科をはじめ、内科、消化器外科、整形外科、脳神経外科の医師5名体制で対応することが特徴だ。さらに、それだけでなく「夜間や休日でも消化器外科の緊急内視鏡手術や脳神経外科の開頭手術、整形外科による開放骨折などの手術を行っています」と賀川院長は説明する。同院を運営する苑田会は、同院に隣接する苑田第二病院、苑田第三病院、リハビリテーション病院など、高度急性期から回復期、慢性期までをシームレスに提供する体制を整えている。
救急専用と入院検査用の2台のCTを導入
同院には、CT2台のほか一般撮影装置、MRI(1.5T)、血管撮影装置が導入されている。このうち、休日夜間帯でもCT、MRI、血管内治療について、当直の2名の診療放射線技師が対応する。
同院では、2018年2月に救急用の16列CT(他社製)を、80列のAquilion Lightning / Helios Editionにリプレイスした。もともと2001年のリニューアルの際に、救急用CTを1階に、入院や精査用として2階に「Aquilion64」を導入していた。そのねらいを賀川院長は、「1階は救急専用として外来や緊急検査に対応できるようにし、2階では脳内出血に対する穿頭術などの術中撮影や時間のかかる精密検査などに対応できるようにしました。また、災害拠点病院として、1階が浸水しても2階以上で診療を継続できることを考慮したものです」と説明する。2階には、ほかにMRIと血管撮影装置が設置されている。
1階の救急用CTでは、緊急検査を中心に1日最大80人、平均で50〜60人の検査を行っている。同院の救急搬送は、約半数が脳神経外科疾患だが、交通事故などの多発外傷や吐下血の搬送も多く、CTが果たす役割は大きい。賀川院長は、「外傷では一般撮影も行いますが、CTによる全身撮影で迅速な判断が求められることが増え、診断はCTがメインになりつつあります。それだけに、CTには画質とスピードで高いレベルを求めました」と述べる。
80列CTを導入し1台で1日50人以上の検査を実施
今回の更新では、救急対応のCTとして多くの患者に対応できるスピードが第一条件となった。賀川院長は、「救急にも“サーカディアンリズム”があって、明け方など集中する時間帯があります。その時間には1時間に5、6台の救急車が集中し、その中でも迅速に対応することが必要で、高速撮影が可能なことは必須条件でした。国産企業としてメンテナンスなどのサービス対応を含めた安心感と、ランニングコストなども考慮して選定しました」と述べる。平畑副主任は救急も含めたCT検査について、「以前は、撮影終了後の画像処理に時間を取られていましたが、Aquilion Lightning / Helios Editionはセミオートで処理できる部分が多く、その時間をほかの検査に手を回すことができ、画像提供までの時間短縮に寄与しています。特に、夜間など人手の少ない時間帯では、その効果を強く実感します」と評価する。
また、平畑副主任は、救急撮影用CTとして金属アーチファクト低減技術“SEMAR”と、逐次近似応用再構成法“AIDR 3D Enhanced”による被ばく低減が可能な機種が前提だったと次のように述べる。
「救急では、撮影後にインプラントがあることがわかって、アーチファクトで十分な画像が提供できないケースがあります。それだけに金属アーチファクト低減技術は必須の機能として要望しましたが、なかでもSEMARは効果が高いことと同時にレトロスペクティブに適用できる点が大きなアドバンテージです」
さらに、施設の事情として1階のCT検査室が狭く、十分な設置面積を確保できないという条件があった。平畑副主任は、「1階のCTはあくまで救急対応であり、時間のかかる心臓検査を行わないことを考えると大容量の管球は必要なく、設置スペースなども考慮すると、多くのCTのラインアップがある中でAquilion Lightning / Helios Editionというのは最適解だったと思います」と述べる。
Early CT signの描出で迅速な脳梗塞診断
賀川院長はAquilion Lightning / Helios Editionの頭部領域の画質について、「後頭蓋窩の水平断は、複雑な顔面の骨の影響でアーチファクトが出やすい領域ですが、クリアに描出されています」と評価する。同院では、脳梗塞の治療については、内科的な血栓溶解療法(t-PA)を基本として、脳神経外科による血栓吸引療法にも対応する。急性期脳梗塞症例に対するCT検査におけるAquilion Lightning / Helios Editionの画質について平畑副主任は、「コントラストが向上することで、急性期の脳梗塞のearly CT signが以前よりも判定しやすくなりました。われわれ技師にとっても、early CT signがわかれば、MRI検査やアンギオの状況を考えながら次の準備を一足早く進めることができます」と述べる。
また、平畑副主任はSEMARやAIDR 3Dなどを搭載したAquilion Lightning / Helios Editionが放射線部スタッフのモチベーションアップにもつながっているという。
「キヤノンメディカルシステムズのCTは、より良い画像を撮りたいという技師の欲求に応えるさまざまな最新技術が搭載されています。良い装置との出会いは、技師の成長やスキルアップにつながると実感しています」
AIDR 3D Enhancedについては、以前と画質を変えずに半分以下の線量での撮影が可能になった。また、線量をかけずに撮影が可能になったことで、管球容量に余裕が出たことが大きいと平畑副主任は評価する。「Aquilion Lightning / Helios Editionは、決して管球容量は大きくありませんが、タフな検査が連続しても管球負荷による待ち時間などが発生することはありません。画質だけでなくAIDR 3D Enhancedの見えない効果を実感する部分です」と述べる。
■Aquilion Lightning / Helios Editionによる臨床画像
新病院の建設など診療体制を充実し地域の要望に応える
苑田会では、グループとして新病院を立ち上げる計画を進めている。賀川院長は、「地域の要望に応えるべく、小児医療と周産期医療も視野に含め、さらなる救急医療の充実をめざし計画を進めています」と述べる。足立区など城東地区は新たな都市開発などで人口が増えている地域だが、今後高齢者が増加する傾向は変わらない。その中で病院としての取り組みについて賀川院長は、「最後の砦となるべく、救急医療を含めて高いレベルの医療を提供し続けていくことが当院の使命です」と述べる。
コンパクト・高機能という80列CTが城東地区の救急医療を支えていく。
(2018年12月18日取材)
地域救急医療センター、災害拠点病院
医療法人社団苑田会
苑田第一病院
東京都足立区竹の塚4-1-12
TEL 03-3850-5721
http://www.sonodakai.or.jp/shisetu/so1.html
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