Canon Clinical Report(キヤノンメディカルシステムズ)

2013年6月号

64列を超えたテクノロジーを搭載したAquilion PRIME/Beyond Editionが稼働 〜0.5mm×80列検出器、0.35秒/回転で大学病院での臨床ニーズに高いレベルで対応〜

北海道大学病院

笹木 工主任

笹木 工主任

 

北海道大学病院では、2013年3月から東芝メディカルシステムズの「Aquilion PRIME」が稼働した。同院に導入されたのは臨床のニーズに応えるため新開発されたAquilion PRIME/Beyond Editionである。病床数946床、1日の外来患者数3300人を超え、北海道の臨床、教育、研究の基幹施設である同院での、新しいAquilion PRIME/Beyond Editionの初期運用について診療支援部の笹木 工主任に取材した。

[Aquilion ONE/ViSION Editionなど診断用に3台のCTが稼働]

北海道大学病院に導入されたのは、新たにフルモデルチェンジされた「Aquilion PRIME/Beyond Edition」である。前モデルと同様にスライス厚0.5mm×80列/160スライス、1回転0.35秒での高速撮影が可能で、データサンプリング精度の向上やV-TCOT再構成アルゴリズムの搭載など、高画質の技術をそのまま受け継ぎながら、ハードウエアを一新してコンパクト化と省エネルギー化を図り、64列超のハイエンドのマルチスライスCTとして投入されたものだ。同院では、結石破砕装置が設置されていた部屋に導入され、64列CTをリプレイスする形で稼働を開始した。
診療支援部では、現在、診断用のCTが3台稼働している。Aquilion PRIME/Beyond Editionのほか、もう1台は、2012年7月にAquilion64からリプレイスされたADCTの「Aquilion ONE/ViSION Edition」(東芝メディカルシステムズ)である。同院のCT検査は、3台で1日100〜120件、検査を担当する診療放射線技師は6名で、検査から画像処理までを担当する。

[80列/160スライスのスペックを受け継ぎハードウエアを一新]

Aquilion PRIME/Beyond Editionの導入には、大学病院での多様な検査や、Aquilion ONE/ViSION Editionのバックアップとしての役割を果たせる性能を持った64列以上のCTという要望があった。また、以前のAquilion64からの流れもあり、操作の共通性や、造影検査を多く行うことから造影剤注入後の最適な撮影タイミングを自動検知する“RealPrep”が使えることなど、「今まで当院で行っていた業務を継続的に行える装置」(笹木主任)であることが評価された。
また、同院ではCTの読影でMPRが多用されており、CTの機種選定にあたってもMPRの作りやすさが1つの判断基準になったと笹木主任は言う。「64列CTになってから読影にMPRを多く使うようになっていますが、東芝のCTではルーチンの検査から0.5mmスライス厚での収集が可能で、MPRの作成が容易に行えることがポイントでした。ルーチンの画像で疾患が見つかって詳しく見たいというオーダがあった際にも、コロナルやサジタルのMPRをすぐに提供することができます」とメリットを説明する。

コンパクトなガントリで省スペースで設置可能

コンパクトなガントリで省スペースで設置可能

AIDR 3Dを含めた画像再構成時間が大幅に短縮され高スループットで検査を支援

AIDR 3Dを含めた画像再構成時間が大幅に短縮され
高スループットで検査を支援

 

[撮影時間の短縮などで検査待ちが短縮し予約外検査にも対応]

Aquilion PRIME/Beyond Editionでは、0.35秒のガントリ回転速度と160mm/秒の寝台移動速度、80列検出器専用DAS(Data Acquisition System)によって、高速で高精細の撮影が可能になっている。同院の現在のCTの検査待ちは2週間程度だが、これは今回のAquilion PRIME/Beyond EditionへのリプレイスとAquilion ONE/ViSION Editionの導入によって、検査のスループットが向上し短縮された結果だと言う。「以前は5〜6週間になっていましたから、ずいぶん短縮されました。1日にこなせる検査件数も増えて、予約外の臨時検査にも柔軟に対応できるようになっています。検査の効率が上がったことはもちろんですが、撮影が短時間で終了し再構成にも時間がかからないので、MPRの作成など1件1件の検査内容の密度が濃くなっています」(笹木主任)。
画像再構成エンジンも最適化されており、低被ばく撮影の“AIDR 3D”を使っても従来と変わらない再構成時間を実現している。笹木主任はAquilion PRIME/Beyond Editionの処理速度について、「スキャンが速いことは当然ですが、ソフトウエアの反応が速く操作がスムーズなこと、またベッドの上下動などの動きも機敏で、全体の操作感がきびきびしていると感じます。これが検査時間の短縮にもつながっています」と言う。

[4D画像を撮影可能なダイナミックヘリカルスキャンを搭載]

Aquilion PRIME/Beyond Editionでは、新しい撮影法として“ダイナミックヘリカルスキャン”を搭載している。ダイナミックヘリカルスキャンは、ベッドを往復させて高速でスキャンを行う撮影法で、最大500mmの領域で4Dイメージングやパーフュージョン解析などが可能になっている。笹木主任は、Aquilion PRIME/Beyond Editionを使った同院でのダイナミックヘリカルスキャンの運用について、「肺がんの胸腔鏡下手術VATS(video-assisted thoracic surgery)の際の、術前シミュレーションとして肺の動静脈分離撮影に応用しています。シミュレーションでは、肺の動脈と静脈、気管支と腫瘍などを3Dで提供していますが、ダイナミックヘリカルスキャンによって、短時間で精度の高い画像の提供が可能になります」と笹木主任は期待する。
また、悪性腫瘍などの転移検索が目的で頸部から骨盤までの全身撮影を行う際に、部位によって撮影ピッチを可変する“バリアブルヘリカルピッチ”を使用している。「心臓の近くでは拍動の影響を受けるのでピッチを上げて撮影するなどがあらかじめプログラムによって制御できます。患者さんの体格によって調整も可能です」(笹木主任)。
Aquilion PRIME/Beyond Editionには、AIDR 3Dが標準搭載されている。AIDR 3Dは東芝独自の被ばく低減再構成法で最大で50%のノイズ低減と、75%の被ばく低減効果が得られる。同院では、AIDR 3Dを全撮影に適応し、通常は50%の被ばく低減の“mild”を用いている。笹木主任は、「当院では、担がん患者さんの撮影で、外科的治療や抗がん剤治療のフォローアップとして定期的に繰り返し撮影をすることが多いので、被ばく線量をできるだけ減らすことを考慮しています。AIDR 3Dは全例に適用しており、再構成時間などを意識することなく使っています」と評価する。

■Aquilion PRIME/Beyond Editionによる臨床画像

ダイナミックヘリカルスキャンを使用した肺動静脈分離撮影

ダイナミックヘリカルスキャンを使用した肺動静脈分離撮影
MIP画像    a:肺動脈相、b:肺静脈相
VR画像    c:肺動脈、肺静脈、気管、腫瘍のフュージョン。正面
d:気管と肺静脈に、腫瘍による狭窄・途絶が認められる。

 

0.35秒/回転を用いた、胸部から骨盤までの大血管撮影(撮影時間:5秒)

0.35秒/回転を用いた、胸部から骨盤までの大血管撮影(撮影時間:5秒)
a:MIP画像 b:VR画像 c:‌Slab MIP画像
高速回転による短時間撮影であるが、細部の血管まで描出されていることがわかる。

 

[コンパクト化して狭い検査室にも設置可能]

Aquilion PRIME/Beyond Editionは、高さ、横幅が大きくダウンサイジングされている。最小設置面積も14.8m3となっており、16列CTが設置されているような狭い検査室からのリプレイスにも対応する。笹木主任は、「大きなガントリサイズを想像していましたので、最初に見た時には小さすぎて、かえって不安になるぐらいでした。実際に使用してみると、性能は以前のAquilion64以上のスペックで、小さくなったにもかかわらず開口径も広く、ベッドが左右に動くなど撮影のしやすさにも配慮されていると感じました」と第一印象を語っている。
また、Aquilion PRIME/Beyond Editionには、東芝のCTとしては初めて、ボアの上部に患者の息止めタイミングなどを示す表示ウインドウが設けられたほか、ガントリの両サイドにタッチパネルがついた。「息止めのアナウンスなどをタッチパネルで選択して、実際に患者さんに説明しながら操作できますので、理解が早いですね」と笹木主任は使い勝手を評価する。

ボア上部の息止めをサポートするウインドウ

ボア上部の息止めをサポートする
ウインドウ

ガントリの両サイドには操作用のタッチパネルを設置

ガントリの両サイドには操作用の
タッチパネルを設置

 

[今後のハイエンドのマルチスライスCTのスタンダードモデルとして期待]

同院のAquilion PRIME/Beyond Editionは、ルーチン検査として、悪性腫瘍の転移検索、肝臓や体幹部のダイナミック撮影、歯学部の頭頸部の撮影が中心になっているが、笹木主任は「80列での高速撮影が可能なので、心臓や脳血管などの検査を含めて全身の疾患に対応できます。今後は、整形領域の人工関節が留置されている症例などで“デュアルエネルギー”撮影にも取り組んでいきたいですね」と今後を展望する。
臨床現場のニーズをもとにフルモデルチェンジされたAquilion PRIME/Beyond Edition。笹木主任は、「コンパクトながら64列以上の性能がつまった“小粒でもピリリと辛い”装置です。操作性も含めて今後のCTのスタンダードとなるのではないでしょうか」と期待している。

 

北海道大学病院

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札幌市北区北14条西5丁目
TEL 011-716-1161

 

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