技術解説(AZE)
2013年12月号
最新ビューワ&タブレットソリューション
AZE VirtualPlaceタブレットクライアントがもたらす画像解析のポータビリティ(タブレット)
阪本 剛(開発部)
近年の画像解析装置は,院内ネットワークを利用することで,さまざまな場所にデータ配信を行うことや,本体が設置されている部屋とは別のあらゆる場所からデータ解析を行うことが可能になった。「AZE VirtualPlace」(以下,VirtualPlace)は,thinクライアント方式を採用しており,解析計算はすべて本体サーバーでなされるため,ワークステーションのような高機能なコンピュータでないクライアントでも,本体と同等のパフォーマンスを発揮することが可能である。われわれは,このようなネットワーク技術を背景に,近年では医療現場でも活用されているタブレット端末を,クライアントとして使用する取り組みをいち早く進めてきた。本稿では,VirtualPlaceのタブレットクライアントの特徴を紹介する。
■快適な画像表示とシチュエーション
前述の通り,データの解析や表示はすべてサーバー側でなされているため,ワークステーションや一般コンピュータに比べると低スペックであるタブレット端末でも,快適に操作することが可能である。これにより,タブレットクライアントの有効活用が考えられるシチュエーションは2通りある。
1つ目は,診察室での患者説明用ビューアとしての利用である。マウス操作でなく,ハンドアクションによるタブレット独特の拡大・縮小・平行移動の操作などにはすべて対応しており,スライド操作によって画像のページングやボリュームレンダリングの回転などが自由に行える。大きなモニタに比べると省スペースであり,不要な時には本棚にも収納可能,また診察室以外での患者説明時にもデータの検索・呼び出し・画像表示を瞬時に行うことが可能である。タブレットは画面サイズが小さいため,解析作業には不向きであるが,画像表示操作の柔軟性が良いため,さまざまなシチュエーションでの利用を検討することができる。
2つ目のシチュエーションは,手術室での利用である。タブレットクライアントでは,作業の途中経過(ワークリスト)を起動することができるため,術前に解析を行った冠動脈解析や気道解析,肝臓解析といったソフトを表示しながら手術を進めていくことも可能である(図1)。タブレットクライアントは解析も可能であり,例えば,気道解析であれば仮想気管支鏡の経路を進め任意の分岐を表示,また肝臓解析であれば必要に応じて支配領域のセグメンテーションを追加・修正することもできる。術前には把握できず,術中にデータ修正が必要になった際でも,従来のクライアントシステムではマウス操作が必要だったのに対し,タブレットクライアントでは手術現場での編集が可能となる。
ここまで説明した通り,タブレットクライアントの大きな特徴は「可搬性(ポータビリティ)」であり,これは従来のコンピュータを使用した解析機器では成し得なかったソリューションである。このような特徴を持ったタブレットクライアントは,今後ますます活躍の幅を広げるものと思われる。
■考慮すべきポイントと解決された問題点
しかしながら,懸念される事項がいくつか存在する。まずは「患者データの拡散」である。これは,タブレットに入力された患者データが持ち出されてしまう危険性を懸念するものである。しかし,AZEのタブレットクライアントは,本体が解析している様子を見ているに過ぎず,患者データはタブレット内に一度も入っていない。したがって,われわれのタブレットクライアントでは,院内ネットワークの及ばない範囲へ患者データを持ち出すことはできない。クライアントからCDなど他の記憶媒体にデータを保存することも不可能である。また,パスワードによるユーザー管理も可能であり,不本意なデータの拡散を防ぐことに努めている。
次に,「データ接続の制限」である。基本的にタブレット端末は,Wi-Fiによる本体サーバーとの通信が必要になるので,広い院内ではWi-Fiスポットから遠ざかるにつれて接続や回線速度が弱まってしまう。したがって,前述のような手術室での使用を考えると,手術室近辺でのWi-Fiスポットの設置が必要になるだろうと考える。この部分は導入に際してご考慮いただきたい。
今回は,タブレットクライアントの有用性を説明した。便利さによる不本意な可能性も同時に注目すべきと考える。しかしながら,ポータビリティがもたらす未知なる有用性は,今後も検討されうるであろう。タブレット操作は非常に直感的であり,快適に使用可能であることから,臨床現場において積極的な活用が進むことを期待する。
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