技術解説(AZE)
2013年12月号
最新ビューワ&タブレットソリューション
AZE Phoenixの“バーチャルシリーズ”(ビューワ)
阪本 剛(開発部)
大量のデータが高速に生み出される現在,1シリーズのデータ量もさることながら,1回の検査における画像の種類も膨大である。特に,MRI検査はいくつもの画像を生み出せることが利点であり,読影者はこれらの比較検討を行うことで,より高度な鑑別,診断を実施できるようになった。同時に,ビューアソフトウェアは常に最適化されなければならず,読影に際する数秒の損失に注意を払う必要がある。本稿では,近年の「モニタによる比較読影法」に注目した新しい機能を紹介する。
■バーチャルシリーズ
“バーチャルシリーズ”とは,複数の比較画像データ間でページングを行うことで,同一ビューア上で簡単に次のシリーズに表示を切り替えることができる機能である(図1)。これにより,別シリーズのデータを,仮想的に1つのシリーズとしてビューア内で扱うことができる。これは,CTデータのフィルム読影では,シャウカステンにフィルムを並べて配置された画像を見ながら病変の検出を行っていたのに対し,モニタ読影ではページング操作によって「目線を動かさず」「連続的に上下スライスを観察する」という特徴を反映させたものである。この機能を利用すれば,例えば肝臓や頭部の前方などに目線を固定したままページングをし続けることで,別のシリーズにデータを切り替えながら読影を行うことが可能となる。また,比較データが多くなると,ビューア内で1つのシリーズの表示が小さくなる一方であるが,バーチャルシリーズによる読影では,大きなレイアウトを維持したまま,次々と比較データを切り替えて読影できる。さらに,比較データの表示順は,タブを左右にドラッグすることで切り替えることができる。造影検査でのデータをバーチャルシリーズにする場合は,撮影時間順に並べ替えることも可能である。
バーチャルシリーズは,読影時の「目線の固定」と「レイアウトの固定」を提供する。われわれの調査では,読影医はモニタを通じて膨大な情報処理活動を行うが,そのためには身体へのほんの少しのストレスも負担になることがわかってきた。また,比較データの増加と同様に,近年のビューアソフトは高機能化が進むにつれ,画面を圧迫するほど機能アイコンが増えており,比較読影ビューアを圧迫しかねない事態にもなっている。本機能は,それらの事態を解消する有効なツールとして開発された。
■ハンギングプロトコルとバーチャルシリーズ
ハンギングプロトコルとは,読影データに対してビューアレイアウトや表示データの指定などを行うことによる「読影ビューアの定式化」と呼べる。主にMRIの読影や,ダイナミックデータの読影に用いられる機能である。「AZE Phoenix」(以下,Phoenix)では,ユーザーの任意のデータ関連づけ機能である“smart tag”を用いることで,容易にハンギングプロトコルを設定することができる。また,smart tagを利用したハンギングプロトコルでは,指定ビューアを指定のタグに設定すると,そのタグで関連づけられたデータをバーチャルシリーズとして扱うことができる。図2ではMRIの読影を再現しているが,画面の左側は関連づけられたT1強調画像をすべて表示しており,中央はT2強調画像,右側は拡散強調画像を配置している。ビューアの上下は,最新検査日の画像と過去画像を表示している。20シリーズあるMRIの1検査の画像が,すべてビューア上に配置されており,「シリーズリストから比較データを探して,表示データを上書きする」という従来の操作は不要である。Phoenixでは,ページング操作だけですべてのデータを比較することができる。
今回は,Phoenixの最新機能であるバーチャルシリーズを紹介した。ビューアソフトの快適な操作感を誌面で伝えることは難しいが,一度マウスを持って操作を実感いただければ,近年のWebブラウザと変わらない「快適な操作性」を体験いただけると考えている。
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