セミナーレポート(AZE)

第74回日本医学放射線学会総会が2015年4月16日(木)〜19日(日)の4日間,パシフィコ横浜にて開催された。19日(日)に行われた株式会社AZE共催のランチョンセミナーでは,北海道大学病院放射線診断科准教授の工藤與亮氏と愛媛大学医学部附属病院放射線科助教の井手香奈氏が,ボリュームビューア「AZE Phoenix」について,遠隔読影と臨床応用に関する講演を行った。

2015年7月号

第74回日本医学放射線学会総会 ランチョンセミナー28

ボリュームビューアAZE Phoenixの臨床活用

井手 香奈(愛媛大学医学部附属病院放射線科)

井手 香奈(愛媛大学医学部附属病院放射線科)

当院がAZE Phoenixを導入した当初の目的は,画像データを保存しているサーバの負荷を軽減するため,診療データ以外の3Dデータや今後の研究に必要なデータを保存するサーバ機能の利用であった。しかし,読影用セカンドビューアとして使用したところ大変便利であったため,その機能や使用例を紹介する。

AZE Phoenixの特徴

AZE Phoenixには,読影に便利なさまざまな機能が搭載されている。「スマートタグ」は,あらかじめキーワードを設定してタグを作成しておくと,シリーズに自動的にタグ付けされて管理できる。特にMRIはシリーズが多く,画像を探す手間がかかるが,タグがあることで容易に見つけることができる。
「バーチャルシリーズ」は,複数のシリーズをひとまとめにできる機能である。各シリーズの画像をビューアに並べることなく,1画面で連続して読影することができ,ビューアの狭さを解決する。
また,三次元的に自動で位置合わせを行う「ボリュームレジストレーション」は,治療評価にも有用である。位置合わせだけでなく,フュージョンもできるため,RFA前後の画像を重ね合わせることで腫瘍が焼灼範囲内に入っているかを容易に判定できる。
さらに,「スライディングMPR」機能では,診断に有効な断面のMPR画像を,マウス操作で簡単に作成することができる。

各種機能の組み合わせで読影時のストレスを軽減

日常の読影業務において,読影するための準備作業が非常に多いことが医師を悩ませている。カルテから患者情報を読み解き,過去画像や他院画像から必要な画像を選び,さらに必要なシリーズを抽出する。そして画像を並べ替え,位置合わせをして,ようやく読影できる状態になる。
これに対し,AZE Phoenixでは機能を組み合わせることで,読影前,読影時のストレスを軽減でき,読影効率の向上,時間短縮が可能になった。その結果,読影精度が改善した症例も経験したため,以下に紹介する。

●乳腺MRI
当院では,乳房専用コイルを使って乳腺MRIを撮像している。シリーズが多く,抽出や並び替えの負担が大きいだけでなく,撮像体位の腹臥位のままの画像が転送されてくるため,読影前に1つ1つの画像を回転する作業が必要で,非常に手間がかかっていた。
そこで,AZE Phoenixのスマートタグ,ハンギングプロトコル,ボリュームレジストレーションを使ったところ,読影が非常に容易になった(図1)。あらかじめ乳腺MRI用にハンギングプロトコルを設定しておけば,必要なシリーズの抽出,並べ替え,腹臥位から仰臥位への回転が自動で行われる。また,ダイナミック撮像の画像をスキャン順に並べる作業も自動化しており,キー画像を決めてボリュームレジストレーションすると,最も良く濃染しているシリーズを簡単に見つけることができる。各画像は拡大や移動も同期するため,従来は手動で行っていた作業の大部分を自動化でき,ストレスなく読影することができる。さらに,任意の断面表示も同期するため,各断面の観察を容易に行え,診断精度向上にもつながる。

図1 乳腺MRIの読影

図1 乳腺MRIの読影
a:従来は,必要なシリーズの抽出と並べ替え,さらに各画像の回転をすべて手作業でしなければならなかった。 b:AZE Phoenixでは,瞬時に必要な画像を必要な条件で表示でき,ボリュームレジストレーションで位置合わせ,拡大・移動の同期が可能となった。

 

●Ai(死後画像)
2014年に愛媛大学医学部附属施設として四国初のAiセンターが設立されたことにより,死後画像を読影する機会が増え,週に3,4件の読影を行っている。
死後画像には特有の問題点がある。死亡した状態で撮影することから,体が真っすぐでなかったり側臥位であったりするため位置合わせができないことや,外傷の有無を確認するために,さまざまな角度から詳細な検討が必要となることである。また,全身撮影が必要となるが,当院のAi専用CTは古い機種のため,全身を一度に撮影することはできず,複数に分かれたシリーズを読影しなければならない。ここではAiの参考症例として,患者の高度側彎症例と側臥位撮影例を提示して説明する。
高度側彎症例の読影では,骨折などの見逃しを防ぐため,スライス位置がバラバラの画像を,ダブルオブリークで前後・左右を見て合わせる手間が必要であった。これに対し,AZE Phoenixではページングをしながら,必要に応じてスライディングMPR機能で自由に角度を変えて観察できるため,マウスを使って感覚的に読影することが可能になる。高度亀背症例では,胸部を読影しているとコロナルかアキシャルかがわからないような画像にも遭遇するが,容易に位置合わせができ,非常に有用である。
側臥位撮影CTについて,死後画像では経時的比較をすることはないが,参考症例でボリュームレジストレーションが有用であったため紹介する(図2)。過去画像と比較読影する際,検査によって撮影開始位置が異なっていたり,体位の違いによりスライス断面の角度が異なっていると,位置合わせに非常に時間を要する。このような場合にもボリュームレジストレーションを用いると,キー画像に合わせて断面角度,画像の向きも含めて位置合わせが自動で行われる。さらに,スライス厚が同期される点もポイントで,シンスライスでもノイズが増加することなく読影でき,大変有用であった。
死後画像で全身を読影する場合にも,バーチャルシリーズを活用することで,頭頂部から足先までを連続してページングすることができる。列数の少ないCTで画像が複数シリーズに分かれるような場合には,便利に使える機能である。

図2 側臥位撮影CTでの経時的比較(Aiの参考症例)

図2 側臥位撮影CTでの経時的比較(Aiの参考症例)
従来は,検査ごとに異なる体位やスライス角度,位置を1つ1つ合わせる手間がかかったが,AZE Phoenixでは,検査によって条件がバラバラの画像(a)でも,ボリュームレジストレーションで位置や向き,スライス厚を瞬時に合わせることができる(b)。

 

●肺がん(緩徐に増大するタイプ)
読影の見落としの原因には,Scanning Error(視野に入っていない),Recognition Error(視野に入ったが認識していない),Decision-making Error(認識はしたが異常だと思わない)があると言われているが,さらに東京大学の三木聡一郎氏は「画像自体を見ていない」エラーが近年多いことを指摘している。肺腫瘤を例に挙げると,半年ごとに検査をしている患者で,前回画像と比較して「著変なし」と記載していたが,気づいた時には最初の所見から倍のサイズになっていたり,反対に,腫瘤を見て「肺がん疑い」とレポートしたものの,実際にはずっと以前の画像と比べて著変がないといったことがある。これを回避するには,読影で複数の過去画像をきちんと見る必要があるが,変化が緩徐な病変を膨大な検査データの中から探し,必要な画像を並べて位置合わせを行うという作業は,大きな負担となる。
このような場合にも,AZE Phoenixが有用となる(図3)。ハンギングプロトコルでは,前回,前々回の直近の検査だけでなく,最初の所見CTを設定できるため,「画像自体を見ていないエラー」を防ぐことができる。ボリュームレジストレーションにより拡大・移動の操作も同期されるため,肺腫瘤と周囲血管との関係も観察しやすい。さらに,スライディングMPRで,マウスによる感覚的な操作で自由に角度を変えて観察できる点も,特に過去画像との詳細な比較が必要な肺がんの読影においては,非常に有用と言える。

図3 緩徐に増大する肺がんの読影

図3 緩徐に増大する肺がんの読影
a:従来は,経時的な比較のために膨大な検査データの中から必要な画像を1つ1つ選んで並べ,位置合わせをする必要があった。 b:AZE Phoenixでは,瞬時に必要な画像の経時的な並び替えやレジストレーションが可能で,スライディングMPRにより,アキシャルからコロナルへとマウスを使って感覚的に角度を変えて読影できる。

 

●AZE Phoenixのさらなる活用
当院では心筋perfusion CTに積極的に取り組んでいる。心筋perfusion CTの虚血部分と冠動脈CTの冠動脈走行の照らし合わせを,ワークステーションを使わずに簡便に行う方法として,AZE Phoenixのボリュームレジストレーションのフュージョン機能の活用を検討している。画像を重ね合わせてスクロールすることで,冠動脈と支配領域の観察が容易にできることが期待される。
また,当院ではAZE PhoenixとAZE VirtualPlaceを連携させている。AZE Phoenixの画面から「VPコネクト」ボタンを押すだけでAZE VirtualPlaceを起動でき,高度な解析が必要な場面でシームレスに行えるようになっている。

まとめ

日常診療の読影業務の中で,特にAZE Phoenixが有用であった例を紹介した。AZE Phoenixの多彩な機能を組み合わせることにより,読影医のストレス軽減や読影精度の向上が期待できると考える。

 

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