次世代の画像解析ソフトウェア(AZE)

2019年4月号

No. 204 整形外科領域でのワークステーション活用法

坂井 至孝(医療法人社団愛友会 津田沼中央総合病院放射線科)

はじめに

当院は,外科手術前の精査目的として造影3D画像の作成依頼はあるものの,その件数はさほど多くないというのが実情である。
3D画像の作成技術や,それに付随するようなワークステーションの性能を駆使した高度な技術の紹介は,ほかのエキスパートの方々へ譲るとして,本稿では,当院で作成する機会の多い整形外科領域を中心に,症例を交えていくつか紹介する。また,作成後の画像は,診断の補助としての役割以外にも,われわれ放射線科内のスタッフ同士の情報共有や,教育ツールとしても有用であるため,これらに役立った事例も補足しながら併せて紹介する。

当院の概要

当院は千葉県習志野市にあり,病床数は300床で,近隣地域の急性期医療を担当している。内科,外科,整形外科などの19の診療科目からなる上尾中央医科グループに属する総合病院である。
現在使用しているCT装置は「SOMATOM Definition AS+」(シーメンス社製),ワークステーションは「AZE VirtualPlace」(AZE社製)である。

症例紹介

1.症例1:肩甲骨骨折 (77歳,男性,図1)
左肩の一般撮影とCT検査を施行した。当時は一般撮影検査が混雑していたため,CT検査を先に実施したところ,上腕骨ではなく,烏口突起と肩峰の骨折が判明した。3D画像を作成し,肩関節Y撮影(図1 d)と同様に観察できる位置まで横方向に回転させていき(図1 c),得られた角度が約50°を示したことから,一般撮影時はこの角度を意識してポジショニングに臨むよう,一般撮影担当者へ助言した。また,一般撮影は肩関節2方向の指示となっていたが,照射野の絞りすぎに注意し,肩甲骨も観察できるよう撮影することを伝達した。
CT検査を先に実施したことで,骨折部位が判明し,さらにポジショニングの注意点がわかり,結果として一般撮影検査の補助になり得た事例である。

図1 症例1:肩甲骨骨折(77歳,男性)

図1 症例1:肩甲骨骨折(77歳,男性)

 

2.症例2:腰椎分離症 (35歳,男性,図2)
腰痛を主訴に他院へ通院。症状が改善しないため,当院で腰椎CT検査を施行した。この症例は,診療放射線技師のいない近隣クリニックからの紹介患者であり,前医でも一般撮影検査は施行していないようで,過去画像の提供はなかった。オパシティを下げて骨を透過させた一般撮影様の3D画像を作成し,横方向に回転させたところ,左右とも約30°の角度で上下関節突起間部の欠損(図2)が判明した。この角度は,一般撮影の腰椎斜位撮影時の角度と同様であり,CT検査から得られたこのような画像を一般撮影検査の代替画像として用いることが可能かどうか,今後評価していきたい事例でもある。CT検査後,両側第5腰椎分離症の診断を得た。

図2 症例2:腰椎分離症(35歳,男性) ↑:上下関節突起間部の欠損

図2 症例2:腰椎分離症(35歳,男性)
:上下関節突起間部の欠損

 

3.症例3:関節内異物 (33歳,男性,大工,図3)
仕事中に長さ90mmの釘が左膝に刺さり,救急搬送された。膝が屈曲したままの状態での一般撮影のため,観察領域が十分とは言えず,関節内異物の観察目的として,追加でCT検査を施行した。3D画像が完成後,緊急手術となった。「骨と異物だけでなく,皮膚面も描出してほしい」と主治医より依頼があったため,それらの表示画像に加え,一般撮影様の画像として骨を透過させた画像も作成した。上下左右にそれぞれ360°回転表示しながら観察することで,釘の形状が観察可能となった。2か所ある釘の「返し」の部分(図3 )が手術に影響を与えたため,特に同部を観察しやすい角度で表示した3D画像が重宝された。

図3 症例3:関節内異物(33歳,男性,大工) →:釘の「返し」

図3 症例3:関節内異物(33歳,男性,大工)
:釘の「返し」

 

おわりに

本来,3D画像は目的臓器やその栄養血管などを描出した術前精査目的の検査として,執刀医はもちろん,手術にかかわるスタッフの事前資料として重要な役割を担っている。上述したとおり,当院ではこのような画像の作成件数が多くないため,ワークステーションの既存の機能を活用した「術前の補助」的な役割とは少し違った側面として,実際の運用を紹介した。特に整形外科領域に関しては,3D画像を外来診察時に見せることで,患者の好評を得ているとの声を整形外科医よりいただいている。アキシャル画像のような二次元画像の表示のみで説明するよりも,視覚的にとらえやすい3D画像があった方が患者の理解が深まりやすく,説明が容易になるようである。このことからも,3D画像は手術支援目的だけにとどまらず,通常の外来診察時でも,患者にとって有益な画像であることがうかがえる。今回は,整形外科領域を中心に,当院での実運用例を示したが,今後も診療の補助として有用な画像の提供を心がけていくのはもちろんのこと,他領域での発展的な活用方法も探究していく必要がある。
本稿が,おのおのの施設でワークステーションの新たな活用方法の一端を見出すきっかけとなり得たら幸いである。

【使用CT装置】
SOMATOM Definition AS+(シーメンス社製)
【使用ワークステーション】
AZE VirtualPlace(AZE社製)

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