次世代の画像解析ソフトウェア(AZE)

2018年5月号

No. 193 AZE VirtualPlace iNoirの使用経験

山﨑 達典(三重北医療センターいなべ総合病院画像診断部放射線科)

はじめに

当院では,2017年4月にノイズ低減処理ソフトウェア“AZE VirtualPlace iNoir(以下,iNoir)”(AZE社製)を導入した。導入時はVer.3.007であったが,現在(2018年3月)ではVer.3.011までバージョンアップしている。約1年間iNoirを使用した経験を,画像処理・画像転送の面から紹介する。

ノイズ低減処理強度の検討とiNoirの有用性

iNoirは,AZE独自のアルゴリズムによってCT・MRIのDICOM画像からノイズ成分を抽出し,元画像から減算(ノイズ低減)処理を行うソフトウェアである(図1)。ノイズ低減処理には0(処理なし)〜100までの強度を設定することができる。
当院では,iNoir導入後,放射線科医とともにノイズ低減処理強度の異なる画像の比較検討を行った。その結果,強度を上げすぎてノイズ低減すると,臓器の辺縁がぼやけた印象を受けた(図2)。そのため,CTにて撮影した1mmスライス厚以下の再構成画像には,すべて強度40のノイズ低減処理を加えることとした(図3)。
薄いスライス厚での再構成画像は,どうしてもノイズが目立つ。そこでノイズ低減処理を行うことで,読影に非常に有用になると言える。また,検診胸部CTといった低線量撮影においても,縦隔部位や撮影範囲に入った肝臓などの臓器をノイズの影響の少ない画像で読影することが可能となることも高く評価できる。画像によってはワークステーションによる3D画像処理の過程でノイズ部分を除去するという作業が少なくなるため,効率良く画像作成ができる場合もあった。

図1 iNoir起動時の画面

図1 iNoir起動時の画面

 

図2 ノイズ低減処理の強度を変えた画質の比較

図2 ノイズ低減処理の強度を変えた画質の比較

 

図3 元画像(左)から強度40にてノイズ低減処理を加えた画面(右)

図3 元画像(左)から強度40にてノイズ低減処理を加えた画面(右)

 

当院におけるiNoirの運用

iNoirでのノイズ低減処理にかかる時間としては,例えば上腹部と骨盤部を撮影したCT画像500枚では4分30秒程度である。iNoirはCT・MRIから送られてきた画像に対して自動でノイズ低減処理を行い,設定された画像サーバへ画像を自動で転送する機能を備えている。そのため当院では,DICOMタグに「CT」と入力されている画像に対して強度40の自動ノイズ低減処理を加え,画像を放射線科医が閲覧するサーバへと自動転送するように設定した。CT装置からも1mm以下の再構成画像は自動でiNoirへ画像転送するように設定しているため,CT撮影を担当する診療放射線技師は画像転送作業に時間を費やすことなく撮影業務ができている。
ただ,救急や外来などでは医師が早急に電子カルテ端末にて画像を閲覧したい場合がある。そのためCTでは,撮影部位によって3〜10mmといった厚さの再構成画像も作成して対応している。例えば腹部CT単純撮影の場合,8mm・3mm・1mmの再構成画像3種類をCTにて作成し,8mmと3mmのデータはiNoirを介さずに直接画像サーバへ転送している(図4)。また,iNoirでは自動ノイズ低減処理をかける順番を指定できるため,救急患者の画像に対するノイズ低減処理を優先的に行うことで至急の読影にも対応できている。

図4 当院におけるCT画像転送経路

図4 当院におけるCT画像転送経路

 

おわりに

当院のCT装置には逐次近似画像再構成機能が搭載されていないため,画像のノイズ低減処理が課題となっていた。このiNoirを導入することによって,CT撮影担当の診療放射線技師の負担も少なく,読影にも非常に有用な画像が提供できるようになった。
今後は,ノイズ低減処理をかける強度を撮影部位別や体格(小児など)に合わせて自動処理を設定していくことで,被ばく線量をより低減することにつながればよいと考えている。

*処理速度はx3500モデルを使用して計測

【使用CT装置】
Aquilion CX Edition
(キヤノンメディカルシステムズ社製)
【使用ソフトウェア】
AZE VirtualPlace iNoir(AZE社製)

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