次世代の画像解析ソフトウェア(AZE)

2018年4月号

No. 192 大腸CTにおけるAZE VirtualPlace雷神の臨床的有用性

藤原 正則(亀田メディカルセンター幕張診療放射線部)

はじめに

当施設では大腸CTを開始するに当たり,2010年5月に「AZE VirtualPlace雷神」(AZE社製)を導入し,大腸CTのみならず,内臓脂肪および頭部など,さまざまな解析を実施してきた。2017年までに7000症例ほど経験している。本稿では,大腸CTの症例の中から臨床的有用性があった1例を紹介する。

大腸CTの概要

当施設の大腸CTは,スクリーニング目的の割合がほとんどを占める。大腸内視鏡検査の予約がなかなか取れない状況において,CTで大腸の検査が実施できるのは受診者にとって非常にメリットがある。また,注腸X線検査に比べ被ばくや負担もかなり軽減できるため,積極的に大腸CTを導入するべきであると考える。
当施設における検査の実際のタイムスケジュールは,大腸CT希望者に当日,等張液2000mLを2時間かけて飲用してもらい,飲用後2時間以上の時間を空けて検査を実施している。検査後は速やかにワークステーションにて所見チェックを実施し,治療が必要な病変か判断される。治療が必要と判断され,受診者の同意が得られた場合は,同日に大腸内視鏡を実施している。
大腸CTは,大腸内視鏡と比較した大規模研究1),2)で高い精度が証明されており,当施設でもこの研究の読影方法を採用している。運用に関しては,施設によって方針がさまざまであるため,前処置から撮影および読影までの一連の運用方法を考える必要がある。

症 例

症例は,大腸の検査を初めて受ける63歳,男性で,大腸CTを希望された。便潜血検査も実施しており,大腸CTの検査開始前には便潜血陽性の結果が判明していた。大腸CT撮影後,直ちにAZE VirtualPlace雷神にデータを転送し,速やかに画像を作成した。このワークステーションの特徴として,“大腸解析”でDICOMデータを読み込むと自動的に仮想注腸像が作成される(図1)。この画像は大腸全体を抽出した画像であり,病変部の位置を正確に把握できる。
読影手順として,まず,仮想内視鏡像(以下,fly through)(図2)で直腸から盲腸まで観察し,反転して盲腸から直腸までを観察する。図1,2よりS状結腸に狭窄を認め,仮想内視鏡+multi planer reconstruction(MPR)画像(図3)にて病変と判断した。以前は注腸X線検査で静止画しか得られなかった注腸画像も,大腸CTで得られた画像をAZE VirtualPlace雷神で3D画像処理をすることにより,画像を任意の角度へ回転し,あらゆる方向から観察が可能である(図4)。fly through画像では,内視鏡で観察が難しい反転の画像も容易に表示することが可能である(図5)。撮影は2体位実施しているため画像の比較も容易であり(図6),診断に有用な画像処理が可能になる。また,レポート作成機能も搭載されており,容易にレポートを作成することができる。出力の書式はWord形式(図7,8)やPDF形式が用意されており,これらのファイルをDICOMに変換して画像として電子カルテに転送することも可能であるため,施設に合った方式を選択できる。
本症例は,迅速な解析で今後の方針を決定でき,当日に内視鏡処置を施行した。

図1 仮想注腸像

図1 仮想注腸像

図2 仮想内視鏡像

図2 仮想内視鏡像

   
図3 仮想内視鏡+MPR画像

図3 仮想内視鏡+MPR画像

図4 仮想注腸像を任意角度で表示

図4 仮想注腸像を任意角度で表示

   
図5 仮想内視鏡像の反転表示

図5 仮想内視鏡像の反転表示

 

 

図6 2体位比較

図6 2体位比較

 

図7 大腸解析レポート(結果)

図7 大腸解析レポート(結果)

 

図8 大腸解析レポート(病変部)

図8 大腸解析レポート(病変部)

 

臨床的有用性

大腸CTと同日に大腸内視鏡を実施するには,迅速な画像処理が求められるが,AZE VirtualPlace雷神では自動処理などにより速やかな画像解析が可能である。大腸CTの画像を参考に大腸内視鏡を実施することは非常に有用であり,今後の方針を速やかに決定するための要素の一つであると言える。また,AZE VirtualPlace雷神で作成した画像やレポートは電子カルテに送信可能であるため,ほかの端末からでも検査画像と読影レポートを参照することができる。
これから先,大腸検査の受診率が上がれば,すべての受診者の検査を内視鏡のみで実施することは困難であるため,便潜血および過去の大腸検査履歴などを考慮して,内視鏡または大腸CTに振り分けて検査を実施することにより,資源を有効に活用できる。AZE VirtualPlace雷神では臨床的に有用な画像解析が可能であり,大腸がん死亡率減少に役立つ重要なツールの一つとなるので,今後のワークステーションのさらなる進歩を期待する。

●参考文献
1)Nagata, K., Endo, S., Honda, T., et al. : Accuracy of CT colonography for detection of polypoid and nonpolypoid neoplasia by gastroenterologists and radiologists ; A nationwide multicenter study in Japan. Am. J. Gastroenterol., 112, 163〜171, 2017.
2)Utano, K., Nagata, K., Honda, T., et al. : Diagnostic performance and patient acceptance of reduced-laxative CT colonography for the detection of polypoid and non-polypoid neoplasms ; A multicenter prospective trial. Radiology, 282, 399〜407, 2017.

【使用CT装置】
Aquilion/CXL Edition
(キヤノンメディカルシステムズ社製)
【使用ワークステーション】
AZE VirtualPlace雷神(AZE社製)

TOP