次世代の画像解析ソフトウェア(AZE)
2017年12月号
No.188 当院におけるAZE VirtualPlace 新NTの使用経験─喉頭部外傷時における軟骨VR画像が有用だった1例
吉岡 謙太(医療法人社団東光会 西東京中央総合病院放射線科)
はじめに
当院では,2015年12月より「AZE VirtualPlace 新NT」(AZE社製)を導入しており,循環器領域,消化器領域,脳神経外科領域など,さまざまな用途で画像処理を行っている。画像処理を行う上で,短時間で高解像度の画像を提供することは,診断や治療方針の決定において非常に重要な役割を担っていると考える。
本稿では,AZE VirtualPlace 新NTを用いて画像処理を行うことで,喉頭部外傷時における軟骨VR画像が診断に有用となった1例を紹介する。
症例提示
症例は,28歳,男性。サーフィン中にサーフボードが喉に当たり,直後より嗄声を自覚したため,当院耳鼻咽喉科を受診した。甲状軟骨,輪状軟骨の骨折を疑い,喉頭部CT検査を施行し,アキシャル画像,オブリーク画像を作成した。甲状軟骨レベルのオブリーフ画像では骨折があることが認められるものの,骨折部の同定,また骨折部の形態的な評価は困難であった(図1)。
そこで,VR画像を用いて形態評価できないか検討を行った。喉頭軟骨はCT値が低く,骨化や石灰化を伴わない部分は筋肉などの軟部組織とほぼ同じ吸収値を示すため,閾値を変化させてもVR表示が難しく三次元画像として表示できなかった(図2)。
軟骨部分を分離して評価を行うために,AZE VirtualPlace 新NTのセミオート抽出機能を使用してVR画像を作成した(図3)。数枚のスライス上で手動にて輪郭を設定するが,スライスの間の輪郭はソフトウェアが自動的に補間するので,連続したボリュームのマスクとなる。ソフトウェアの自動補間機能の精度は高く,本症例では,約4cmの甲状軟骨で0.625mm厚,70スライス程度のデータだったが,5,6スライスの輪郭をトレースしただけで自動補間し,マスク化することが可能であった。
セミオート抽出機能を使用して,甲状軟骨,輪状軟骨,披裂軟骨の抽出処理を行ってVR画像を作成し,さらに気道のVR画像と重ね合わせて喉頭軟骨部の三次元画像を作成した。それぞれの部位でトレースして抽出処理を行うシンプルな作業なので,比較的短時間で画像を作成することが可能である。
作成したVR画像にて,甲状軟骨左下角に骨折があるのが確認できた(図4○)。また,輪状軟骨の左側壁部に線状影があり骨折しているのが確認できるが,オパシティ設定が難しく骨折部の明瞭な描出は困難であった(図4○)。輪状軟骨は低コントラストな物体であり,微細で複雑な形態を有するため,薄いスライスの情報が必要となる。そのためノイズが増加してしまい,画像に影響を及ぼしていると考えられる。
そこで,3Dフィルタを使用してオリジナル画像のノイズを低減させて,ボリュームの辺縁を滑らかに表示させる処理を行った。調整率によってフィルタのかかる割合が細かく設定でき,容易に画像確認を行うことが可能である(図5)。3Dフィルタによりノイズが低減されて辺縁が滑らかになったことで,輪状軟骨の左側壁部の骨折がより明瞭になり,内側に偏位しているのが確認できる(図6)。
まとめ
今回,甲状軟骨,輪状軟骨の骨折を生じた喉頭部外傷を経験した。喉頭軟骨のように微細で複雑な形態を有し,CT値が低く周囲の組織との分離が難しい部位でも,抽出処理を行うことで三次元的に形態評価が可能である。軟骨部のVR画像は病態の把握,患者への説明において有用性の高いものとなった。
AZE VirtualPlace 新NTを使用することで,短時間で高解像度の画像を提供することが可能となり,検査や目的に合わせて日常検査に無理なく組み込むことができると考える。
【使用CT装置】
LightSpeed VCT(GE社製)
【使用ワークステーション】
AZE VirtualPlace 新NT(AZE社製)