次世代の画像解析ソフトウェア(AZE)
2017年1月号
No. 177 3次元融合画像(3D fusion image)の有用性について
石風呂 実(広島大学病院診療支援部画像診断部門)
はじめに
3Dワークステーション(WS)は,誰でもワンクリックで3D画像表示できることをうたい文句として販売が推進されている。しかし,実際に求められている画像は臨床画像として情報量の多い高レベルな3D画像である。3D画像は診断,治療において活用範囲を拡張し,患者に有益な情報源として提供しなくてはならない。3D画像は単なる参考のためでなく,診療に貢献できるように責任を持って作成しなければならない。また,複数のモダリティの画像情報を融合した画像は,一石二鳥を超えて三鳥,四鳥へと有用性が拡大していく。
融合画像にはレイヤーとフュージョンの2種類があるが用途は異なり,レイヤーによる画像が一般的に普及している。近年では,徐々に時間軸または座標軸が異なる画像の融合が普及してきたが,剛体処理では座標を基準となる画像にレジストレーションすることは容易であるが,非剛体処理では体動で臓器自体が変形・拡張する領域では完璧なレジストレーションは困難であるものの,参照画像として十分な価値を有する。本稿では,レイヤー,フュージョンによる3次元融合画像の応用法を症例提示により紹介する。
融合画像とは何?
融合画像処理は,以前からさまざまな方法で行われてきた。融合とは,いわゆる結合ということである。臨床現場で行っている画像処理は,画像を重ねて表示する,または組み合わせて表示することである。現在一般に使用されているのは,レイヤーとフュージョンの3次元融合画像であり,頻繁に使用されているのがレイヤーによる表示法である。特殊な表示法として,フュージョンによる3次元融合画像が用いられる。
レイヤーは,1時相で得た3次元ボリュームデータから個別に抽出(分解)した画像を色付け(カラーレンダリング)し,必要なパーツを加算して組み合わせた画像である(図1)。
フュージョンは,2時相以上の異なる時間で得られた3次元ボリュームデータ,または異なるモダリティのボリュームデータを,基準画像のXYZ軸の座標に対してレジストレーションさせて加算した画像である(図2)。
レイヤーの活用
単純CTでは,異なる部位または同一部位のレイヤー画像は,整形外科領域の椎体固定,人工関節,ロッキングプレートなどの術後CTなどで活用されている。金属留置症例では,メタルアーチファクトの発生により3Dとしては不利益な画像となる場合があるため,金属のみの3D画像作成を行い,メタルアーチファクトを軽減したオパシティの低い骨の3D画像と融合させることで有益な情報となる(図3)。また,軟部組織の3D画像作成においても,モデルの違うデータを加算することでコントラストが上昇し軟部組織が明瞭に描出される(図4)。これまで靭帯の検査はMRIが主流であり,CTでの検査は避けられていた。しかし,近年,レイヤー画像にて軟部組織の描出能を向上できることが注目され,整形外科領域の検査数が多くなっている(図5)。造影CTでは,異なる組織に分解し,必要な組織のみ融合した画像を構築することで目的部位の理解度が向上する。
フュージョンの活用
フュージョンは,解剖学的位置または病態位置を表示する場合において,造影効果の時相が異なる場合または異なるモダリティの検査データ,機能的情報などを3次元画像データに融合し評価するなど使用目的の用途は幅広い。主に手術支援画像で使用される(図6)。
従来,フュージョンは,核医学検査のPET/CTで行われている2Dデータの重ね合わせ画像に主に使用されていたが,現在はWSの機能が発展し,非剛体処理においてもフュージョン画像作成が可能になったので,3D-CT,3D-MRAとPET,SPECTとを組み合わせて,より有効な画像情報として提供できる環境が実現した(図7〜11)。
結 語
3次元画像は,診断以外に手術,処置,IVRにおいても必要不可欠である。レイヤー,フュージョンの融合画像処理を活用することで病態情報がより詳細に把握できるため,3次元融合画像は臨床現場になくてはならない画像情報となっている。
【使用CT装置】
Aquilion ONE(東芝メディカルシステムズ社製)
【使用MRI装置】
Ingenia 3.0T(フィリップス社製)
【使用SPECT装置】
BrightView(フィリップス社製)
【使用PET/CT装置】
Biograph mCT(シーメンス社製)
【使用ワークステーション】
AZE VirtualPlace 雷神(AZE社製)