次世代の画像解析ソフトウェア(AZE)
2015年11月号
No. 163 AZE VirtualPlaceにおけるcDWIの使用経験
片岡 剛/小谷野匡章/佐々木康人(社会医療法人社団慈生会 等潤病院診療技術部),高田 晃一(社会医療法人社団慈生会 等潤病院放射線科),伊藤 雅史(社会医療法人社団慈生会)
はじめに
DWIは,頭部をはじめ体幹部においてもその有効性が広く知られている1)。ただ複数のb値を撮像しようとした場合,その分総検査時間が延長する。とすると複数のb値を撮像する有用性を理解していても,検査を行う側からすると検査時間の観点から「b=1000s/mm2」など限られた値しか撮像しなくなる傾向が高まるかもしれない(もしくは画質を落としてしまう)。
また,違う問題として,さらに高いb値を得ようとするとTEを延長せざるを得ず,SNRが低下し,ノイズの多いざらついた砂嵐状の画像になる可能性もある。そこで,低いb値の画像から,計算によってより高いb値を得るcDWI(computed DWI)が有用となる2)。特に前立腺がん3)などでcDWIは有用性が多く報告されている。
しかしながら,計算で高いb値を作成すると,実際には高輝度ノイズが発生する。これはADCに0未満のピクセルが含まれていることが原因であり4),Body DWIなどでMIP画像を作成する際の障害となる。
AZE社製のワークステーションである「AZE VirtualPlace」には,以前よりcDWIを作成する機能が搭載されていたが,新たにADC値の下限値の設定ができる機能が追加された。今回,この機能を使用できる機会が得られたので報告する。
cDWIの作成方法
AZE VirtualPlaceでcDWIを作成する場合,任意の2種類のb値の画像を登録(図1 a)して実行する。まず,あらかじめ設定してあるcDWIとADCマップが作成され,自由に切り替えられる(図1 b)。cDWI作成後は,スライダーバー(図1 c)で画像を直接確認しながら任意のb値の画像を作成(図2)できる。
手順としてはこれだけであり,非常に簡便である。複雑な方法であれば使用しにくいため,この「簡便」ということは非常に重要である。
実際の操作画面としては図1 bのとおりであり,通常は2D画像であるが,いつでも1ボタンで3D画像と切り替えて確認できる。
さて,今回の機能の要となるのがADCの下限値の設定である。この設定は図3に示すとおりで,ADC下限値の値をADC下限設定値に設定した値に置き換えることができ,0未満のADC値をカットすることが可能となる。この機能を使用してみると,下限値を設定することで特に脂肪部分で発生していた高輝度のノイズがなくなっているのがわかる(図4)。
実際は,cDWI作成時に設定している下限値が自動で適用されるため,通常であればこの操作は必要ない。ただ下限値と下限設定値を別々に設定するため,最適な数値に関してはおのおの考える必要があるかもしれない。
また,ADCマップは全身のあらゆる部位で作成され,読影の参考にされていると思う。特に腫瘍分野においては,ADC値の上下によって腫瘍の性状判断や,化学療法の効果判定などに用いられることもある。AZE VirtualPlaceではROIをとることで組織を三次元的に抽出し,ADC値のヒストグラムを得ることができる。表示されたヒストグラムはソフトウェア内で統計解析処理が行われ,ヒストグラムの形状を表現する「尖度(kurtosis)」「歪度(skewness)」を計算することも,このDWI解析の機能の一つとして可能となっている(図1 d)。
臨床画像
1.前立腺(図5)
前立腺は,b=1000s/mm2(図5 b)では不十分であり,b=2000s/mm2(図5 c,d)とすることで病変部がコントラスト良く明瞭に描出される。
また図5 dは,cDWIによるb=2000s/mm2の画像であるが,通常のb=2000s/mm2(図5 c)と比較しても遜色のない画像となっている。
2.膀 胱(図6)
骨盤内病変の検索中に偶然発見した膀胱がん例である。b=1000s/mm2(図6 a)では膀胱内の信号は完全に低下しておらず,病変とのコントラストが少し悪かったため,スライダーバーで画像を確認しながらb値の調整を行い,膀胱内の信号が低下するb値(図6 b)のcDWIを作成した。
このように後から作成できるのは,cDWIの強みである。
さいごに
AZE VirtualPlaceにおけるDWI解析機能の使用経験を述べた。
特に難しい操作なしに簡便に,いつでも任意のb値の画像が得られ,ADCの下限値も設定しておけば特に留意することもなく使用できることが最大の長所と感じた(何より検査を行う側としては,検査時間の延長を考える必要がない)。
また,DWIBS法に代表されるように,全身DWIは今後さらにニーズが増えると思われ,当院でもシーケンスを検討中である。cDWIがこのような診断の一助となることが期待される。
●参考文献
1)Takahara, T., et al. : Diffusion weighted whole body imaging with background body signal suppression(DWIBS) ; Technical improvement using free breathing, STIR and high resolution 3D display. Radiat. Med., 22・4, 275〜282, 2004.
2)Blackledge, M.D., et al. : Computed diffusion-weighted MR imaging may improve tumor detection. Radiology, 261・2, 573〜581, 2011.
3)Ueno, Y., et al. : Computed diffusion-weighted imaging using 3-T magnetic resonance imaging for prostate cancer diagnosis. Eur. Radiol., 23・12, 3509〜3516, 2013.
4)高原太郎 : Ziostation2上で動作するComputed DWI用プロトコルの開発. INNERVISION, 29・9, 111〜114, 2014.
【使用MRI装置】
Vantage Titan 3T Saturn Gradient(東芝社製)
【使用ワークステーション】
AZE VirtualPlace(AZE社製)