次世代の画像解析ソフトウェア(AZE)
2015年5月号
No. 157 大腸解析ソフトウェアにおける2体位比較の有用性
岩野 晃明(徳島健生病院放射線科)
はじめに
「AZE VirtualPlace」(AZE社製)の新・大腸解析ソフトウェアが機能を大幅に更新した。大腸CT検査は,前処置と大腸拡張,画像解析が成功の鍵を握る。当院では,2009年にAZE VirtualPlaceを導入し,5年が経過したが,導入当初は画像解析に多くの時間を要した。原因として,前処置と大腸拡張の不安定さ,大腸解析技術とソフトウェアの未熟さが挙げられた。その後,前処置と大腸拡張技術,大腸解析技術とソフトウェアの進歩により解析時間は短縮し,精度は向上した。今回の大幅なソフトウェアの更新により,平素より望んでいた以上の機能が搭載された。新しい大腸解析ソフトウェアは,2体位比較における操作性が飛躍的に向上したことにより,画像解析精度,速度が向上したので報告する。
従来の大腸解析
仮想内視鏡画像の魚眼モードでの解析は,半月ヒダの裏側まで観察可能で視認性が良好である。しかし,ポリープと残渣の識別は,完全に同期した2体位比較でなければ容易ではない。従来の2体位比較は,仮想内視鏡画像の方向が一定でなく,同一部位を観察していると認識することが難しかった。また,観察部位が肛門からの距離に応じて表示されるため,拡張度の違いにより観察部位のズレが生じた。そのため,画像解析に当たっては,クレンジング処理をOFFにした仮想内視鏡MPR断面にて背臥位と腹臥位を個別に解析した後,2体位比較で隆起部位の解析を行わなければならず,煩雑であった。
新しい大腸解析─2体位比較を中心に
大腸解析ソフトウェアの主な改良点を以下に述べる。
1.2体位比較読影のレイアウト
比較読影(図1)と展開図比較(図2)のレイアウトは,図で示した以外にも多彩なレイアウトが用意され,自由な変更が可能である。
2.2体位比較読影で背面側が固定された仮想内視鏡画像(図3)
仮想内視鏡画像での解析時は,背臥位と腹臥位,側臥位ともに画像下側が受診者の背面側に固定された。これにより,2体位比較時に一見して同じ半月ヒダであることが認識でき作業効率が飛躍的に向上し,解析時の負担が大幅に軽減された。
3.2体位比較読影で大腸長の比率による観察位置の同期(図3)
2体位比較での観察位置が個々の大腸の長さの比に応じて移動することで,肛門から盲腸まで観察部位がずれることがほぼなくなった。
4.観察方向と位置の同期(図3)
2,3で述べた通り,仮想内視鏡画像での解析は,2体位ともほぼ同一部位・同一方向となり,同一の半月ヒダであると認識することが非常に容易となった。これにより,魚眼モードでの解析時は一見して同じ半月ヒダであるとの認識が可能となり,移動したポリープと残渣との識別が容易となった。また,解析時は2体位とも同様な画像が観察可能となったため,一方の体位にクレンジング処理で粘膜面にアーチファクトが生じても,もう一方は必ず残液のない粘膜面のため,ポリープの有無が一見して確認可能となった。これらのことにより,2体位比較での解析時に2体位個別の解析は不要となり,クレンジング処理をONとして,魚眼モードでの画像解析が可能となったことで,解析時間が大幅に短縮された。
5.2体位比較読影でのポリープ断面観察(図4)
従来,2体位比較では行えなかったポリープ断面観察が2体位比較で可能となり,非常に有益となった。
6.2体位比較読影の仮想内視鏡画像で現在位置からカットMPR断面表示(図5)
従来,仮想内視鏡MPR表示においては表面からの距離でMPR断面を表示していたが,今回,仮想内視鏡画像の現在位置からのMPR断面表示が可能となった。仮想内視鏡MPR表示は,径が一定で観察画面から断面表示が消えなくなり,解析中に断面位置の変更が不要となった。
7.2体位比較読影でポリープ位置の記録(図6)
2体位比較読影でのポリープ位置の記録が大腸の長さに応じた位置に表示されるようになり,一目で両体位におけるポリープ位置が確認可能となった。ポリープの番号は,肛門側と直腸側のどちらからでも編集が可能となり,所見記載時に大変便利となった。
8.ポリープと残渣のカラーマップの作成(図7)
当院では,独自にカラーマップを作成し,ポリープを緑色,タギング残渣を白色とした。このカラーマップにより,視覚的にタギング残渣とポリープが識別可能となった。
まとめ
今回の大腸解析ソフトウェアの更新では,平素より望んでいた以上の機能が搭載され,大腸解析が非常に容易となり,解析時のストレスが大幅に軽減された。
【使用CT装置】
Aquilion CXL Edition(東芝社製)
【使用ワークステーション】
AZE VirtualPlace(AZE社製)