次世代の画像解析ソフトウェア(AZE)

2015年1月号

No. 153 当院MRIでのAZE VirtualPlace 風神の使用経験と活用

高村 好実(市立宇和島病院放射線科MRI室)

はじめに

現在,多くの施設でワークステーション(以下,WS)を用いてvolume rendering(以下,VR)画像の作成や解析などが行われ,そのデータは今や診断に欠かせないものとなっている。当院MRI室では,2006年に「MAGNETOM Avanto」(シーメンス社製,1.5T)の導入に合わせて「AZE VirtualPlace」(AZE社製)を導入し,本格的なWSの運用を開始した。そして今回,「MAGNETOM Skyra」(シーメンス社製,3T)を追加してMRI装置が3台になったのを機に,WSを「AZE VirtualPlace 風神」(AZE社製:以下,VirtualPlace)へと更新し,新たな運用を開始した。

当院でのWSの運用環境

当院の放射線部門におけるWSの環境は,VirtualPlace本体とクライアント2台,他社製WS4台の計7台で運用している。MRI室では3台のMRI装置にVirtualPlaceを1台ずつ,また他社製WSも2台設置し,臨床検査技師(3人)と診療放射線技師(1人)が,MRI撮像をしながらリアルタイムでVR画像を作成し,画像提供を行っている。
VirtualPlaceはそれぞれMRI操作コンソールの隣に置いてあり,撮像が忙しくVR画像作成ができない場合は,別のMRI装置の担当者が本体にアクセスしてVR画像作成を行うことを可能とした。これにより,時間的に効率の良い作業環境となっている。

日常業務で各科へ提供する主な臨床画像

1.動脈瘤
頭部MRI検査では,動脈瘤のあるすべての患者のVR画像を作成する。年間の作成件数は約840件である。さらに,当院ではクモ膜下出血患者の約80%が脳血管撮影を行わず,MRAで動脈瘤の位置や形状を確認した後,手術となるため,日中や夜間の緊急などを問わず,それらのすべてにおいて動脈瘤のVR画像を作成している(図1)。

図1 MRA-VR画像(脳血管動脈瘤)

図1 MRA-VR画像(脳血管動脈瘤)

 

2.三叉神経,顔面神経
3D撮像した元画像から神経と血管を抽出し,VR画像でシネ表示を行いvascular compressionを観察する。撮像は非造影のFLASH法で,VirtualPlaceのオパシティカーブを二峰性とすることで組織コントラストを色分けして抽出する。比較的簡便な方法であり,その精度は諸兄が報告するものには及ばないが,vascular compressionの存在や程度評価のスクリーニングにおける情報の一つとして作成している(図2)。

図2 三叉神経vascular compression image

図2 三叉神経vascular compression image
左三叉神経が上小脳動脈(SCA)と接触しているかなどを観察する

 

3.手術シミュレーション
主に脳腫瘍や脳動静脈奇形(AVM)の手術シミュレーション画像を作成している。撮像は造影FLASH法のみを用いて,複数のシーケンスを用いることによる位置ズレを避けている。この1つの元画像から頭表,頭蓋骨,脳表,腫瘍,血管を分離して配色した後,再構成してシネ表示で報告している(図3)。

図3 手術シミュレーションイメージ

図3 手術シミュレーションイメージ
頭表→脳表→手術部位や脳表からの透過像などをシネ表示で描出する。

 

4.水頭症フェーズコントラストフュージョンイメージ
非交通性水頭症例における第三脳室底開窓術(EVT)の,手術前後での脳脊髄液のフローの確認に用いる。通常のフェーズコントラスト画像のシネ表示でも脳脊髄液のフローの確認はできるが,マグニチュード画像をカラー化してリフェーズ画像とフュージョンすることで,より明瞭にフローの存在部位や程度を確認することができる(図4)。

図4 水頭症フェーズコントラストフュージョンイメージ

図4 水頭症フェーズコントラストフュージョンイメージ
第三脳室底開窓術後のフローなどをカラー化してシネ表示する。

 

5.Cardiac MR
当院における心臓撮像は月間10例ほどであるが,その8割はATP負荷を含めたone stop shopである。解析は,VirtualPlaceを用いてBull's eyeの心機能解析や冠動脈解析,フロー解析などを行っている。画像はすべてMRI担当技師が作成しており,時に描出能に関して他社製WSとの比較も行っている(図5)。

図5 Bull's eyeなどによる心機能解析

図5 Bull's eyeなどによる心機能解析

 

当院の今後の運用について

今後,WSのさらなる活用と充実をめざしたい。MRIでは,装置3台に対し担当技師4人では人員が十分とは言えず,従来の画像作成に加え,新しい種類の画像をリアルタイムに臨床側に提供するには課題がある。その対策として,まず,放射線部門全体として多くの技師がVR画像作成や解析にかかわれる体制構築の検討に入っている。また,個々の技師には“一人ひとつ新しいVR画像の作成”を努力目標として,これを部門内におけるVR画像作成への意欲と,各モダリティ担当者間の接点として位置づけている。

一般病院から見たWSの活用と今後

当院を含め,地域の病院においては人員充足が難しい施設もある。よって,臨床側が要望するVR画像の作成が多くなれば,その業務負担も増す。これらの解決には,経験による画像作成技術も必要であるが,精度を担保した上で可能なかぎり手技を簡便化し,画像作成技術を均一化する必要がある。また,それとは別に,WSの設置台数を増やし作業環境を整えることも一つの手段となる。今回,VirtualPlaceを3台導入したことにより,各技師のWSの使用頻度が増え,積極的に画像作成や画像解析を行うようになった。これが臨床へ提供する情報の充実と,技師の能力向上につながる一つの方法となっている。

まとめ

日常診療に常に必要とされる3D画像や解析が増え,モダリティの開発とともに,より一歩進んだ3D画像の報告が多くなった今日,WSの重要度は増している。それらの活用技術をリアルタイムに取り入れていくことも,今われわれに必要とされるスキルである。地域医療に必要とされるもの,患者に直接還元できるメリットを,VirtualPlaceによって得ている。

【使用MRI装置】
MAGNETOM Symphony 1.5T(シーメンス社製)
MAGNETOM Avanto 1.5T(シーメンス社製)
MAGNETOM Skyra 3T(シーメンス社製)
【使用ワークステーション】
AZE VirtualPlace 風神(AZE社製)

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