Zio Vision 画像の本質を診る(ザイオソフト)

第83回日本医学放射線学会総会が,2024年4月11日(木)〜14日(日)にパシフィコ横浜(神奈川県横浜市)で開催された。学会共催ランチョンセミナー29「PhyZio/dynamics 2.0がもたらす4Dイメージングの進化」(ザイオソフト株式会社 / アミン株式会社)では,真鍋徳子氏(自治医科大学さいたま医療センター)が座長を務め,下宮大和氏(ザイオソフト株式会社)と長尾充展氏(東京女子医科大学)が講演した。

2024年7月号

PhyZio/dynamics 2.0がもたらす4Dイメージングの進化

講演1:動態解析のパラダイムシフト PhyZiodynamicsのさらなる進化

下宮 大和(ザイオソフト株式会社マーケティング部)

下宮 大和(ザイオソフト株式会社マーケティング部)

ザイオソフトは,2013年に「PhyZiodynamics」を発売し,4Dイメージングを牽引してきた。今回,JRC2024(ITEM2024)において,その進化形である「PhyZio/dynamics2.0」を発表した。PhyZio/dynamics2.0では,PhyZiodynamicsのダイナミック計測,ノイズ除去,モーション解析などの機能を継承しつつ,より高速で再現性の高い動態解析の実現をめざしている。本講演では,循環器領域を中心に動態解析の進化とPhyZio/dynamics2.0の技術的ポイントについて概説する。

循環器領域におけるCTの現状と心臓CTの進化

心臓CT検査は2004年頃から右肩上がりで増加している。その中心となるのが冠動脈CTであり,解剖情報の把握に優れる,感度・特異度がともに高いという特徴から多くの施設で行われている。一方で,心臓CTは装置の進化に合わせて,さまざまな情報が得られるようになっており,dual energy CT,photon counting CT,高精細CTの登場で仮想単色X線画像や物質弁別画像,高精細画像などの取得で組織性状の診断が可能になっている。さらに,deep learningなどを用いた画像再構成技術の進化,Ziostationをはじめとする医用画像処理ワークステーションの進化によって動態解析(4D-CTやモーション解析)が可能になった。これらの進化によって,CTでは形態,性状,機能といった多数の情報を取得して診断を行う包括的な心臓検査が可能になっている。2023年の論文では,重度の大動脈弁狭窄症患者の診断において,従来の心臓CTに加えてCT-ECV(extracellular volume)とCTストレインの2つのイメージング・バイオマーカーを組み合わせることで,心臓超音波による左室収縮機能の低下を同定する以上の付加価値があると報告されている1)。今後,経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)の術前CTにおいて,大動脈弁周囲計測やアプローチ評価に加えて,ECVやストレイン解析を追加で行う時代が来ることが予想される。

PhyZio/dynamics2.0〜動態解析のパラダイムシフト

PhyZiodynamicsは,ザイオソフトが持つ独自のインテリジェンス技術を生かした緻密な計算により得られる解析データの,その根幹を成す要素技術である。PhyZiodynamicsでは,インターポレーション(interpolation),レジストレーション(registration),トラッキング(tracking)といった技術を用いて,連続する複数の位相画像に対して画像補完,ノイズ低減,ダイナミック計測,4Dモーション解析,非剛体位置合わせ,三次元形状認識といった革新的な効果を生み出す。発売以来,国内では多数の施設で導入され,PhyZiodynamicsを用いてpublishされている論文数は56(2013年〜2023年)に上り,広く臨床および研究に活用されている。
その中でザイオソフトは,JRC2024において新たにPhyZio/dynamics2.0を発表した。PhyZio/dynamics2.0は,新たな計算アルゴリズムを開発し,処理の高速化と再現性の高い動態解析の実現を図った。PhyZio/dynamics2.0では,従来からのマルチフェーズ,ダイナミック計測,モーション解析,MRストレイン解析に加えて,CTストレイン解析と2Dモーション解析という2つのアプリケーションを新たに開発した(図1)。
CTストレイン解析は,4D-CTのデータからAuto MPRで短軸,長軸,4チャンバー,3チャンバーの断面を作成。それぞれで左室心筋輪郭線を自動抽出してボクセルトラッキングを行いストレイン解析を行う。解析結果としては,各セグメントごとにradial strain,longitudinal strain,circumferential strain,polar map,strainグラフを全自動解析で出すことができる。超高齢社会を迎え,ますます増加する虚血性心疾患の診断において,動態解析の必要性が高まっており,CTによるストレイン解析の可能性をさらに広げるアプリケーションである。また,2Dモーション解析は,2D画像に時間軸を加えたいわゆるシネ画像で,CT画像を読み込むことでトラッキング処理が完了し,ダイナミック計測,機能画像の生成,モーション解析が可能になる。PhyZio/dynamics2.0では,処理の高速化によって短時間で前処理から解析までを提供することができる。

図1 PhyZio/dynamics2.0の機能一覧

図1 PhyZio/dynamics2.0の機能一覧

 

まとめ

PhyZio/dynamics2.0は,高速かつ再現性の高い動態解析で従来の4D-CTの動態解析をさらに向上させると同時に,さまざまなアプリケーションによって汎用的に活用でき,臨床に役立つ新たな価値を提供していく。

●参考文献
1)Koike, H., et al., JACC Cardiovasc. Imaging, 17(4), 396-407, 2024.

 

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