技術解説(ザイオソフト)

2017年4月号

Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

心臓領域における「Ziostation2」の最新アプリケーション

安達 雅昭(臨床応用開発グループ)

本稿では,「Ziostation2」における心筋性状の評価をはじめとした,最新の心臓領域のアプリケーションを紹介する。

■MR心筋T1マッピング

Ziostation2の“MR心筋T1マッピング”は,心筋性状の定量的な評価が得られるプロトコルである。従来,心筋性状の評価として,心臓MRIにおける遅延造影解析(late gadolinium enhancement:LGE)は,現在までに多くの施設に普及してきたが,LGEは視覚的評価法であり,拡張型心筋症(以下,DCM)やアミロイドーシスなど,びまん性線維化が生じるとLGEは病変を検出できない可能性がある。また,造影剤投与後の経過時間やinversion time(以下,TI)などの影響により,画像コントラストが変化してしまうことがある。例えば,DCMにおいては,症例の約60%で遅延造影が認められなかったとの報告がある1)
MR心筋T1マッピングの手法としては,心電図同期を行いながら息止めをし,同じ時相でTIを継時的に変化させていき,異なる複数のデータを得ることにより画素ごとのT1を直接算出し,可視化している。これにより,心筋の定量的な評価が可能となり,さらに心筋性状をより精度高く評価することができる。
さらに,MR心筋T1マッピングで得られる画素ごとの血液のT1値,ヘマトクリット値を利用して,心筋組織細胞外液分画(extracellular volume fraction:ECV)の定量評価が可能だ。Wongらの報告2)によると,線維化を伴った組織は隙間が正常例に比べて多く,より多くのガドリニウム(Gd)を取り込む。正常のECVは,20〜30%とされ,それ以上になると線維化が進んでいると一般的には言われている。短軸のオーバーレイ表示は,ECVとT1の切り替えを可能とし,全体,内膜側,外膜側での3種類の表示も可能となっている。また,セクター分割機能も備え,1〜12分割までの表示と17セグメント表示を可能としている(図1)。

図1 MR心筋T1マッピング

図1 MR心筋T1マッピング

 

また,Ziostation2の最新バージョンでは,今までのT1マップの問題点となっていた,造影前と造影後の位置ズレを合わせる方法として,非剛体レジストレーションも搭載し,精度の高いECVを算出することが可能となった。さらに,ECVマップやT1マップの画像をDICOM画像として保存(図2)することも新たに可能になった。本誌2015年4月号の当社技術解説から,飛躍的に操作性の向上および機能が追加され,より多くの施設で有効に活用いただくことができる製品として,さらに進化を遂げている。

図2 DICOM保存したT1マップ(a)とECVマップ(b)

図2 DICOM保存したT1マップ(a)とECVマップ(b)

 

■CT心筋遅延造影解析(W.I.P.)

“CT心筋遅延造影解析”プロトコルでは,CTにおいても心筋性状の評価を得ることができる。
従来は,核医学検査による心筋血流イメージングが用いられ,SPECT画像による半定量的な評価方法がゴールデンスタンダードとされてきた。特に,99mTc標識心筋血流製剤では,再灌流前にトレーサーを投与することで,再灌流後の撮像においても責任血管の灌流域であるリスクエリアの評価が可能で,慢性期の血流分布との比較により治療効果も判定できる。しかし近年では,遅延造影MRIによる梗塞心筋の評価について,心筋バイアビリティとの関連性が示されており,有用性が高く,核医学検査ではなくMRIで心筋バイアビリティの評価を行うことが広く普及し,この十数年で診断も大きく変化を遂げた3)。これは,MRIの遅延造影では,造影領域は病理学的な心筋梗塞領域と一致することが証明されており,また,遅延造影の深さによって,機能的予後が評価できるので,非常に有用な方法と認められているためである。
一方,CTでの遅延造影は,従来のMRIでの遅延造影に替わる診断方法として以前から関心の高い領域ではあった。しかし,CTでの遅延造影解析は,MRIに比べて非常にコントラストが低いといった懸念と被ばくの懸念により,実現が妨げられてきた。今回新たにリリースするCT心筋遅延造影解析プロトコルは,非剛体レジストレーションでの正確な位置合わせを実現し,単純画像との差分を出すことで,低コントラスト問題を解消し,CTにおいても正確な遅延造影を解析することを可能としたプロトコルである。
図3は遅延造影MRIとの比較であるが,心基部から心尖部の側壁側に,遅延造影MRIと同様にCTでも遅延造影効果を認める。非剛体レジストレーションを用いた遅延造影サブトラクションにより,内膜側の梗塞領域まで明瞭に観察することが可能だ。
核医学検査からMRIに移行することで,患者の費用負担を減らすことが可能であったここ十数年から,また新たにCTでの遅延造影が可能になることで,MRIの検査の負担を減らし,CTのみですべてのリスク評価が可能になれば,まさにone stop shoppingの時代に到達したと言えるであろう。今後,このプロトコルにより,多くの患者が1回の検査ですむことを開発側として強く期待している。この機能により,病変の早期発見をし,治療の必要な患者に早期の治療ができるようになればありがたい。

図3 遅延造影CT(a),遅延造影MRI(b)

図3 遅延造影CT(a),遅延造影MRI(b)

 

■CT心筋ECV解析(W.I.P.)

MRIによるECV解析を前述したが,今回新たに開発中のバージョンでは,CTにおいてもECV解析を可能としたプロトコルを提供予定である。“CT心筋ECV解析”プロトコルでは,遅延造影CTデータを利用して,左室心筋の軸と内膜および外膜を自動抽出し,遅延造影フェーズと単純フェーズで非剛体レジストレーションを行い,位置ズレのない差分ボリュームを算出することが可能になっている。この遅延造影効果を算出し,各セクターのECVを表示して線維性の評価をすることが可能だ。
図4は,冠動脈CTにて右冠動脈#1に狭窄を認める症例である。CTでの遅延造影効果も認め,ECV解析を実施した。図5のように,心基部の下壁領域においてECVが0.4と高値を示した。内膜化梗塞の線維化を遅延造影CTおよびECV解析にて指摘できた一例である。

図4 冠動脈CT解析結果と遅延造影CTの結果

図4 冠動脈CT解析結果と遅延造影CTの結果

 

図5 ECV解析の結果(a)とブルズアイ表示 (画像ご提供:三重大学様)

図5 ECV解析の結果(a)とブルズアイ表示
(画像ご提供:三重大学様)

 

●参考文献
1)McCrohon, J.A., et al. : Differentiation of heart failure related to dilated cardiomyopathy and coronary artery disease using gadolinium-enhanced cardiovascular magnetic resonance. Circulation, 108・1, 54〜59, 2003.
2)Wong, T.C., et al. : Association Between Extracellular Matrix Expansion Quantified by Cardiovascular Magnetic Resonance and Short-Term Mortality. Circulation, 126・10, 1206〜1216, 2012
3)山口隆義 : 急性冠症候群に対する心臓CT検査─特に心筋遅延造影効果の意義について. 日本放射線技術学会雑誌, 63・6, 709〜716, 2007.

 

●問い合わせ先
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