技術解説(シーメンスヘルスケア)
2024年4月号
腹部領域におけるCT技術の最前線
Siemens HealthineersのCT技術革新と挑戦
藤原 知子[シーメンスヘルスケア(株)CT事業部]
画像診断領域においてCTが果たす役割が増している中,Precision Medicine時代のAbdominal Imagingに対して,Siemens HealthineersのCTシステムはさまざまな機能を提供している。
CTにとってどうしても避けて通れないX線被ばくについては,ALARA(as low as reasonably achievable)の原則に則った製品開発を継続しており,当初より「臨床要件を満たす画質を担保した被ばく低減の実現(Right Dose)」をコンセプトとしている。具体的には,CARE (Combined Applications to Reduce Exposure) programと総称される多様な被ばく最適化機能をリリースしている。現在ではすべてのCTシステムに標準搭載されているauto exposure control(AEC)機能も,スキャン中の減弱データをリアルタイムにフィードバックした4D mA調整を行う「CARE Dose4D」を搭載するなど,当時から突出したテクノロジーであった。さらに,それまで困難とされていたkV調整の自動化も可能にし(CARE kV),personalized low doseの実現に向けた道を着々と歩み続けている。
■被ばく低減
被ばく低減機能として近年特筆すべきものの一つが「Tin filter technology」である。一般的なCT装置に搭載されているbowtie filterなどの付加フィルタに,さらに可動式のTin(Sn,スズ)filterを加えて大幅にX線スペクトルを変調し,スペクトルの重心を高エネルギー側へシフトさせることで,画像化に寄与しない無効被ばくを大幅にカットするだけでなく,ビームハードニングに起因するアーチファクトを抑える効果も得られる。腹部領域では,一般撮影と同等の線量(約3mGy)でCT colonographyによるスクリーニング検査を行い,三次元的により詳細な情報を得たり,通常ビームハードニングの影響を受けやすい骨盤腔内のアーチファクトを抑えた低線量(約3mGy)CT urographyなどが実施されている。
■Low kV imaging
「個別化」と並んで積極的に推し進められている「標準化」に対しては,4D imaging,perfusion imaging,dual energy imagingなどを提供しており,治療につながる画像診断パラメータとしての活用が進んでいる。4D imaging,perfusion imagingなど,一見被ばくが増えてしまいそうな検査においても,low kVを用いることでヨードのCT値を上昇させることができるため,CNRの観点から被ばくを低減する方向に活用すると,ダイナミック造影検査程度の被ばくでより多くの機能的情報などを得ることができる。また,low kVを用いて得たCT値のゲインを,造影剤量低減の方向に利用することもでき,理論的には10kVごとに約10%の造影剤使用量を減量することができる。実臨床でこれを活用するには,kV(管電圧)だけでなくmA(管電流)側の調整が同時に必要となるため,先述のCARE kVがこの組み合わせの自動化をサポートし,low kV imaging普及の一助となっている。
■Photon-counting CT
さまざまな場面で話題となっている世界初の臨床用photon-counting CT(PCCT)「NAEOTOM Alpha」(図1)においては,X線信号を直接電気信号に変換することで,検出器サイズの狭⼩化が可能になり,カソードとアノードの間に強い管電圧を印加することで従来必須であった隔壁を取り除くことができ,幾何学的線量効率が最適化されたことで,⾯内分解能は最⾼0.11mm,体軸⽅向分解能は最⾼0.16mmを実現している。さらに,原理上,電気ノイズの影響を受けないことから,細かい構造を,これまでよりさらに低線量で観察しうる性能を擁している。また,NAEOTOM Alphaは,Dual SourceタイプのPCCTとして臨床導入されたため,高時間分解能,高速撮影のアドバンテージを失うことなく,高分解能,spectralデータを同時に活用することができ,腹部領域においても今後の発展的活用が期待されている。
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