技術解説(シーメンスヘルスケア)

2024年3月号

腹部領域におけるUS技術の最前線

腹部領域の超音波検査の「質」を高める

安田 直人[シーメンスヘルスケア(株)超音波事業部]

昨今,超音波技術の進化により,肝線維や肝脂肪が定量化され,いわゆるQuantitative Ultrasound(QUS)が実現されている。そのため,バラツキや検者依存性なども数値に現れ,超音波検査の「質」も主観から客観へと変化した。
本稿では,プレミアム超音波診断装置「ACUSON Sequoia」に搭載される「DAX(Deep Abdominal Xducer)」の,超音波検査における「質」に貢献する設計思想・技術について紹介する。

■DAXトランスデューサとは

厚生労働省の国民健康・栄養調査でも日本人の高BMI化が示されており,医療現場では腹部超音波検査のオーダを受けても,減衰で十分な検査ができない場合もある。DAXはこの問題の解決に挑戦する。
DAXは従来のコンベックス型トランスデューサの約1.5倍の開口面積を有する(図1)。高BMI患者でも超音波減衰に打ち勝ち,ペネトレーションを得るための設計である。生体の周波数依存減衰により,周波数を下げればペネトレーションを改善することができる。しかし,高BMI患者でも十分なペネトレーションを得るまで周波数を下げると,分解能が劣化し,超音波が届いていても検査には使えない。このジレンマの解決には,天体望遠鏡でより遠くの星を見る場合,大口径の望遠レンズを使用するのと同じ原理で超音波を受け取る面積を大きくすればよい。これが,DAXが厚型コンベックストランスデューサとなったゆえんである。
この厚型トランスデューサ,肋間走査は厳しいのではないだろうかと疑問に思われることがあるが,DAXは,エレベーション方向にも複数の素子を持つMulti-D技術を採用し,適切に超音波を収束させ,肋間走査の問題を克服している(図2)。結果,ペネトレーションの改善によりQUSの一つである肝硬度計測でのバラツキ,誤差を抑え,再現性,信頼性を向上させており,計測の高い「質」に大きく貢献する。

図1 腹部用標準コンベックストランスデューサとの比較 標準トランスデューサ(左)とDAX(右)

図1 腹部用標準コンベックストランスデューサとの比較
標準トランスデューサ(左)とDAX(右)

 

図2 Multi-D技術によるエレベーション方向の超音波ビーム制御

図2 Multi-D技術によるエレベーション方向の超音波ビーム制御

 

■DAXによる負担軽減効果

超音波検査の「質」とは,検者に依存した検者間誤差,また,検者が受けるストレスが主に挙げられる。
腹部領域における腹壁をトランスデューサで圧迫するという操作は,作業関連性運動器障害(work related musculoskeletal disorders:WRMSDs)の要因の一つとされている。トランスデューサで腹壁を圧迫するという操作に関して,従来型コンベックストランスデューサとDAXで比較・検証を行った1)。その結果,従来型コンベックストランスデューサ(ACUSON Sequoia搭載「5C1」トランスデューサ)より,DAXでは1/3以下の圧迫圧で良好な画像を得られた。
DAXは,厚型トランスデューサでありながら肋間スキャンもこなし,ペネトレーションも良好で,画像取得のスイートスポットが従来型コンベックストランスデューサより広い。よりソフトに超音波検査を行うことができ,WRMSDsの要因の一つである腹壁を圧迫することによる検者の障害を克服する。

今まで超音波技術としては,「分解能」などに支えられる「画質」にこだわってきたが,DAXでは,画質を保ちながらペネトレーションを大きく改善する設計を行った。それは,定量計測の「質」を高く保ち,さらには超音波検査に伴うWRMSDsのリスクも低減した。
ISO15189(臨床検査室-品質と能力に関する特定要求事項)に対応する施設が増えている現在,超音波検査の「質」を実現するために,ACUSON Sequoiaに搭載されるDAXのような異なる視点のアプローチも重要と思われる。

●参考文献
1)Coffin, C.T. : The Deep Abdominal transducer(DAX): See deeper with less force. White paper · DAX.

 

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