技術解説(シーメンスヘルスケア)

2018年6月号

US Today 2018 超音波検査・診断最前線

カテーテルデバイスを用いた治療に貢献する“True Fusion”のご紹介

平山 秀男(シーメンスヘルスケア(株)超音波事業本部循環器麻酔超音波マーケティング推進部)

■‌True Fusion

経皮的冠動脈形成術(PCI)などカテーテルデバイスによる治療を行う場合には,X線血管撮影装置の透視画像をガイドに手技が進められる。経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)に代表されるような心構造疾患(structural heart disease)の治療では,超音波診断装置から得られる情報も非常に重要で,先進のリアルタイム3D経食道心エコー検査(以下,TEE)や3Dカラードプライメージングなどが広く活用されている。2018年4月より臨床使用できるようになった「MitraClip NTシステム」(製造販売元:アボットバスキュラージャパン株式会社)を用いた経皮的僧帽弁接合不全修復術では,3D TEEなしにはデバイスの留置を行うことはできない。シーメンスの循環器用超音波診断装置「ACUSON SC2000 PRIME」に新たに搭載された“True Fusion”は,ACUSON SC2000 PRIMEの先進技術“True Volume TEE”から得られる情報を,血管撮影装置「Artis シリーズ」へ送信することで,治療に関連する解剖学的および機能的ランドマークを血管撮影装置の透視画像上へ容易に表示することが可能である(図1)。これまで,それぞれの装置が単独で取得していた画像情報を統合し,画像を同期させることができるため,複雑な手技においても術者が治療の状況をこれまで以上に容易に把握することが可能となり,より正確かつ安全に治療を進めることができる。また,術者をサポートするチーム全体が症状や手技に関する認識を共有することも容易になるため,より確実な治療や治療ワークフローの向上,治療時間の短縮といった効果が期待される。さらに,ワークフローの向上により,造影剤の低減や,治療時間の短縮による被ばく低減にも貢献できる可能性を秘めている。

図1 弁周囲逆流症例でのTrue Fusion画像

図1 弁周囲逆流症例でのTrue Fusion画像

 

■‌位置合わせ精度向上への試み

True Fusionで非常に重要な要素となるのが位置合わせの精度である。位置合わせは血管撮影装置の透視画像上に,撮像された3D TEEプローブの外観の形状を認識することで行われる。位置合わせ精度のために,少なくとも30°以上角度の異なる2断面で位置合わせすることを推奨しているが,さらなる精度向上のため(特に奥行き方向),3D TEEプローブの構造にもこだわった。図2は,シーメンスの3D TEEプローブの透視画像とCTによる3D画像であるが,3D TEEプローブの先端に1か所,レンズ面の下側に前後左右位置をずらして2か所の計3か所に球状の構造を配置し,さらに内部構造の数か所が穴のあいた構造になっている。プローブの外観の情報のみならず内部の構造体の情報も取り入れることで,三次元的な位置合わせの精度が向上するだけでなく,位置合わせにかかる時間も短縮することが可能となった。

図2 3D TEEプローブの透視画像とCTによる3D画像

図2 3D TEEプローブの透視画像とCTによる3D画像

 

■ワークフロー向上への試み

カテーテルデバイスによる治療では,いかにスムーズに手技を進められるかということは重要なポイントになる。特に,実際にカテーテルデバイスを操作する先生方は,感染の観点からも手に触れるものは必要最小限にとどめることが望ましい。True Fusionでは,実際に透視画像上に反映させる解剖学的ランドマークは超音波診断装置本体から設定することが可能になっている。つまり,カテーテルデバイスを操作する先生方はカテーテルデバイスから手を放すことなく,3D TEEを行っている先生方がその場でランドマークを設定することができる。双方の先生方がお互いの得意分野に集中することで,手技をよりスムーズに進められ,正確性向上や手技時間の短縮などにも貢献することが可能である。

 

【問い合わせ先】
コミュニケーション部
TEL 0120-041-387
URL www.healthcare.siemens.co.jp

TOP