Advanced Visualization System“syngo.via”
当院におけるsyngo.via CTアプリケーションの臨床活用
市川泰崇(三重大学医学部附属病院放射線診断科)
<Session Ⅱ The frontiers of CT technology>
2016-11-25
本講演では,シーメンス社の画像診断ITソリューション“syngo.via”のCT用アプリケーションについて,当院における臨床活用のポイントと今後の展望について述べる。
当院におけるsyngo.viaの主な臨床活用
当院では,シーメンス社製「SOMATOM Force」「SOMATOM Definition Flash」をはじめ,計6台のCTが稼働している。syngo.viaは,2015年のSOMATOM Force導入時に同機のコンソール横と読影室に設置した。syngo.viaは日常臨床で主に,心臓CT(負荷ダイナミック心筋パーフュージョンCT,遅延造影CT),経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)の術前評価,Dual Energy CT〔monoenergetic image(仮想単色X線画像)や肺血流イメージング,骨の除去〕に使用している。
心臓CTにおけるsyngo.viaの有用性
当院が行っている包括的心臓CT検査のプロトコールは,通常のカルシウム(Ca)スコアリングやCTAに加えて,心筋血流評価のための負荷ダイナミック心筋パーフュージョンCTや心筋の組織性状を評価するための遅延造影CTを1回の検査で施行している。syngo.viaはこれらのほかにも,“CT Cardiac Function”など多くのアプリケーションを有しており,心臓CT検査に非常に役立っている。
負荷ダイナミック心筋パーフュージョンCTでは,“Shuttle mode”を用いて心臓全体のダイナミック撮影を行い,time density curve(TDC)を基に,syngo.viaでパーフュージョンマップを作成している。syngo.viaの画像処理では,多時相撮影に起因する位置ズレを補正する“non-rigid registration”と,低線量撮影によるノイズを低減する“4D noise reduction”が重要な技術となる。実際の操作では,まずnon-rigid registration,次に4D noise reductionのボタンをクリックすると,左室心筋のセグメンテーションと下行大動脈のinput ROIの設定が自動で行われ,それを確認した後,負荷ダイナミック心筋パーフュージョンCTのパラメトリック画像が表示される(図1)。
遅延造影CTは,最近ではblood pool subtractionの手法を組み合わせることで,良好な心筋梗塞の画像を描出できるようになった。syngo.viaでは,低線量撮影で得られた3もしくは4つのボリュームデータセットからnon-rigid registrationで位置合わせを行い,さらに“image averaging”機能で処理することで,高画質の遅延造影CT画像を得ている。
当院の包括的心臓CT検査プロトコールは約30分で終了するが,負荷ダイナミック心筋パーフュージョンCTと遅延造影CT共に画像処理時間は2分程度で,患者が検査室を退出する時までに完了しているため,ワークフローの観点からもsyngo.viaは非常に有用である。
TAVIの術前評価におけるsyngo.viaの有用性
TAVIの術前評価では,心電図同期CTによる大動脈弁複合体の評価・計測が重要である。特に,3枚の弁葉付着部の最下点を結んだvirtual ringと呼ばれる平面を正確に同定する必要がある。
syngo.viaの“CT TAVI planning”は,起動するとすぐにvirtual ringが自動的に検出され,面積や径,冠動脈入り口までの距離などを速やかに算出する(図2)。さらに,virtual ringを平行移動させて,バルサルバ洞やsinotubular junction(STJ)の径も計測できる。また,人工弁を留置する際には,血管撮影装置を用いてvirtual ringに対し垂直な角度となるperpendicular viewで観察しながら手技を進めるが,CT TAVI planningでは,CT画像上で自動的にperpendicular viewを決定することができる。このほか,アクセスルートの術前評価も,“CT Vascular”を用いた半自動的な計測を行っている。syngo.viaによるTAVIの術前評価のための解析時間は5〜10分程度であり,簡便かつ短時間での処理が可能である。
Dual Energy CTにおけるsyngo.viaの有用性
当院では,Dual Energy CTでのmonoenergetic imageの処理に,syngo.viaの“DE Monoenergetic Plus(Mono+)”を用いている。Mono+により高画質のLow-keV画像が得られるため,造影剤量の低減も可能となっている(図3)。
また,肺血流イメージングのアプリケーションである“DE Lung PBV”もルーチンで使用している。DE Lung PBVは,肺塞栓症とその疑いのある症例の精査のための造影CTにおいて,血栓以外にも肺の造影効果と血流も確認でき有用である。
このほか,骨の成分のみをCTのボリュームデータから除去するアプリケーション“DE Direct Angio”を用いている。特に当院では,大動脈CTAなどにおいてVR画像を作成する際に,積極的に活用している。
syngo.viaの今後の臨床活用
今後のsyngo.viaの臨床活用としてはまず,壁運動も含め心臓全体のボリューム解析が可能な低線量シネCTにおける3D心機能解析が挙げられる。syngo.viaを使用すれば,手間と時間がかかる心壁のトレースなども1分程度で自動処理することができる。
腹部パーフュージョンCTへの応用も今後のテーマである。現状では,撮影範囲の制限,撮影時間の長さ,呼吸運動や心拍動の影響,被ばく量が多いといった課題のある領域とされるが,syngo.viaの腹部パーフュージョンCT画像は心臓パーフュージョンCT同様,non-rigid registrationによる位置ズレ補正と4D noise reductionによるノイズ低減が画像処理の重要なポイントとなる。腹部の場合,撮影時間が2分程度と長く,自由呼吸下で検査を施行すると臓器の動きの影響が出る。そこで,non-rigid registrationを行うと,臓器の動きが止まっているような高画質な画像が得られる。また,4D noise reductionを適用することで,低線量撮影でもノイズの増加を抑えた画像を描出できる。
図4は,70歳代,女性の膵頭部がんの症例である。腹部パーフュージョンCTでsyngo.viaを用いて,blood flowやblood volumeなどのさまざまな血流のパラメトリック画像が得られ,今後,病態の解明や治療効果判定に利用することが期待される。また,syngo.viaはdual inputによる解析に対応しており,肝臓のパーフュージョンCTにおいて,動脈血と門脈血それぞれの組織灌流の評価を行うことが可能である。
さらに今後,臨床活用が期待されるsyngo.viaの機能として,体幹部CTの読影支援機能がある。骨病変の評価を行う“CT Bone Reading”は,CTのthin sliceデータがsyngo.viaに送信されると,骨の読影支援機能が働き,肋骨などを1本ずつナンバリングする。これにより,どの骨を観察しているのかを把握しながら読影を行うことができ有用である(図5)。また,肋骨を左右に広げたような画像を作成でき,1本の肋骨に2か所の骨折があるような場合も観察が容易となる(図6)。外傷患者の緊急検査を行う場合,検査前にCT Bone Readingを設定しておくことで撮影後すぐに処理が行われ,速やかに読影できる。
肺結節を自動的に同定する読影支援機能である“CT Lung CARE”は,画面上の“Lung CAD”というボタンをクリックすると,2,3mmの小さな肺結節まで高精度に自動検出するアプリケーションである。CT Lung CAREは経時的な評価にも有用で,過去の検査画像をあらかじめsyngo.viaに読み込んでおけば自動的に結節を検出・計測して最新の画像と比較できる(図7)。さらに,「RECISTガイドライン」に対応したグラフ表示により,治療効果判定も行える。
PACSのビューワの横にsyngo.viaのクライアントを設置し,これらの読影支援機能を用いれば,見落としもなく,再現性の高い診断が可能になると考える。
まとめ
本講演では,包括的心臓CTやTAVIの術前評価におけるsyngo.viaの臨床活用について概説した。今後,腹部パーフュージョンCTや読影支援機能など,syngo.viaのアプリケーションのさらなる活用が期待される。
- 【関連コンテンツ】