Session I CT Image Contest 2016 Japanese Edition 
受賞者

2016-11-25


Best Overall

南 汐里(金沢医科大学病院医療技術部診療放射線技術部門)

心電図同期Sequenceモードによる小児心臓2beat撮影
南 汐里(金沢医科大学病院医療技術部診療放射線技術部門)

【背 景】1歳1か月,体重10kgの女児。出生時,動脈管開存を伴うⅡ型の完全大血管転位症と診断された。根治術として,冠動脈を肺動脈に移植し大動脈と肺動脈を入れ替えるジャテン術,心房・心室中隔欠損閉鎖術が行われた。術後経過観察にて肺動脈狭窄を認め,バルーン拡張術を施行するもあまり改善されず,外科的肺動脈形成術が施行された。移植した冠動脈の評価および肺動脈狭窄改善評価の目的で造影CTが依頼された。
【所 見】ジャテン術後,肺動脈は大動脈の前方で再建されている。また,両側肺動脈の拡張を認めた。冠動脈走行は明瞭に確認でき,術前と比較して明らかな狭窄は認められない。右肺動脈起始部径8.6mm(形成術前5.3mm),左肺動脈起始部径6.0mm(形成術前3.4mm)。
【訴求ポイント】(1) 心電図同期を用いた2beat撮影にて冠動脈を描出:小児は放射線感受性が高いため,被ばく線量を抑えられるTurbo Flash Spiral撮影を第一選択としていたが,本症例では冠動脈評価が必要であったためProspectiveモードであるSequence撮影を用いた。SOMATOM Forceのディテクタ幅は約6cmであるため,心臓全体をカバーできる2beatで撮影。被ばく線量低減のためにPulsingをManualで収縮期(100〜230ms)のみ曝射されるよう設定した。また,CARE kVをonにして70kVの低管電圧を使用することで,さらなる被ばく低減を図った。(2) 造影剤の減量:希釈造影剤を用い,低管電圧70kVを使用。CARE Bolusトリガー後すぐに生理食塩水の後押しに切り替えることで,投与量を8mL(240mgI/kg)に抑えることができた。これらの工夫により,高心拍な小児心臓でも冠動脈評価を可能とし,低被ばくおよび少量造影剤で診断に有用な3D画像を提供することができた。

心電図同期Sequenceモードによる小児心臓2beat撮影
心電図同期Sequenceモードによる小児心臓2beat撮影

 

General
Single Source部門

松本一則(魚沼基幹病院医療技術部放射線技術科)

高度腎機能低下患者に対する低管電圧撮影を駆使した緊急造影検査
松本一則(魚沼基幹病院医療技術部放射線技術科)

【背 景】75歳,女性,64kg。腹痛と腹部膨満感を主訴に来院。eGFR23.7,血清クレアチニン1.67と高度の腎機能障害のため,原因検索のCT検査は単純撮影を施行。小腸に広範な壁腫脹と腸間膜に浮腫があり,明らかな閉塞機転は認められなかったが,小腸の一部に高吸収域が存在し虚血もしくは壊死が疑われた。上腸間膜動脈(SMA)の分枝に血栓と思われる高吸収域も認められ,血流障害を来している可能性が示唆された。腎臓内科より可能な限り造影剤を減量するよう指示を受け,造影検査を施行することとなった。
【所 見】上腸間膜動脈は末梢が細いものの明らかな血栓は認めない。上腸間膜静脈(SMV)〜門脈,脾静脈に多量の血栓を認める。小腸の腫脹は血栓によるうっ血〜虚血を見ていると思われる。右側に単純CTで高吸収かつ造影不良な小腸があり,虚血〜壊死疑い。下行〜腹部大動脈に壁在血栓あり。一部に潰瘍性変化あり。単純CTでは上腸間膜動脈の血栓を疑ったが,造影CT検査施行により,門脈・上腸間膜静脈血栓症と診断された。
【訴求ポイント】本症例は可能な限り造影剤量を減量することが命題であった。当院の腹部造影検査では管電圧100kV,使用ヨード量500mgI/kgとしている。一方,大血管のCTAではそれぞれ100kV,400mgI/kgを使用し動脈相と平衡相を撮影しているが,腹部臓器でも100kV,400mgI/kgで得られる造影効果を目標とした。使用管電圧を80kVとした場合,100kV,400mgI/kgと同等な造影効果を得るためには,当院で行った実験結果では400mgI/kg×0.75=300mgI/kgとなる。今回は単純CTの画像より脂肪が多いことが既知であり,詳細は省略するが,除脂肪体重を指標に使用量を算出した結果250mgI/kgとなり,動脈相,平衡相共に良好な造影効果を得ることができた。

高度腎機能低下患者に対する低管電圧撮影を駆使した緊急造影検査
高度腎機能低下患者に対する低管電圧撮影を駆使した緊急造影検査

 

General
Dual Source部門

谷 和紀子(神戸大学医学部附属病院医療技術部放射線部門)

時相毎に撮像エネルギーを最適化した小児腎ダイナミック撮像
谷 和紀子(神戸大学医学部附属病院医療技術部放射線部門)

【背 景】11歳,女児。増悪傾向のある上腹部膨隆を主訴に他院受診,左腎囊胞性腫瘤を指摘された。囊胞ドレナージにて囊胞の縮小を確認したが,2週間後のCTで再度,囊胞性腫瘤の増大(初診時と変化なし)を認めた。治療方針の検討目的に当院紹介,CT造影検査が依頼された。
【所 見】左腎に腎被膜下を主座とした囊胞性病変を認める。動脈相では活動性出血は認めず,腎皮質にも断裂は認めない。腎実質相における仮想単純画像では,内容液はわずかに高吸収で液面形成しており淡血性の液体と考えられるが,ヨードマップにおいて内容液への造影剤漏出は認めない。排泄相では,尿管は一部狭小化しているが,左腎機能は廃絶していない。これらの所見より,左腎を温存する囊胞固定術が望ましいとの治療方針となった。
【訴求ポイント】囊胞内容液の成因の把握,および血管・尿路の解剖の把握が重要と考え,各時相の目的を明確にしてダイナミック撮像を行った。(1) 単純:腫瘤範囲の把握のみのため,超低線量撮像を目的にSnフィルタを用いた100kVで撮像を行った。(2) 動脈相:末梢血管の描出能を向上させるため,70kVを選択した。Sn100kVの画像より,撮像範囲を絞ることで線量低減が可能となった。(3) 腎実質相:仮想単純画像にて実質相と同条件の単純撮像を免除し線量低減することと,ヨードマップおよび仮想単色画像にて偽造影の影響を排除し造影効果を正確に評価することを両立させるためDual Energyを選択した。(4) 排泄相:低線量かつ造影効果を上昇させるため70kVを選択した。時相ごとの目的に最適な撮像エネルギーを選択したプロトコルを策定したことで,低線量ながら治療方針に寄与できる画像を取得した。

時相毎に撮像エネルギーを最適化した小児腎ダイナミック撮像
時相毎に撮像エネルギーを最適化した小児腎ダイナミック撮像

 

Cardio Vascular
Single Source部門
Exceeding Expected Performance
1-16MSCT部門

津田 守(総合病院国保旭中央病院放射線科)

ルーチン下肢CTA Low-kVによる被ばく,造影剤低減症例
津田 守(総合病院国保旭中央病院放射線科)

【背 景】82歳,女性。左下肢動脈塞栓除去術施行後の下肢急性動脈閉塞再発疑い。前日にも同様の下肢CTA撮影を救急にて行い,その後血管撮影にて血栓除去術施行。再発を疑ったため,再度検査を行うこととなった。eGFR34のため,造影剤減量にて検査を施行。
【所 見】本症例は左浅大腿動脈に血栓閉塞が生じ,緊急血栓除去術が施行されたが,翌日に再閉塞を来した時の造影CTである。浅大腿動脈起始部より膝窩動脈まで再閉塞し,開存する深大腿動脈と大腿回旋動脈からの側副路により,下腿動脈3分岐が造影される。術前の通常CTより被ばく量,造影剤量を低減させて撮影しているが遜色のない画像が得られ,下腿動脈3分岐に関してはむしろ良好に描出されている。ASOによる石灰化プラークの少ない症例では奨励すべき撮影方法で,造影剤による腎機能障害や,繰り返しCT撮影が必要な場合に有効と思われる。
【訴求ポイント】連日のCT撮影や,その後の血管治療も考慮し,被ばくと造影剤の低減が必要と考えLow-kV撮影を行った。加えて,腎機能がきわめて低下していることから,さらなる造影剤の減量が必要と考えた。造影剤低減に関しては,フラクショナルドーズ19mgI/kg/sを目標としていた。本症例ではQ.ref.mAs:150とした結果,CTDIvolは1.43mGyまで低減することができた。3段
階の多段注入〔4.0mL/s(FD:26)→3.0mL/s(FD:20)→4.0mL/s(FD:13/50%希釈)〕を用いることで,足関節レベルにてCT値194HUを得ることができ,末梢血管まで良好に観察できた。低線量化による骨盤部のノイズ増加がMIPやVR画像作成の妨げになることから,骨盤部はスライス厚3mm,それ以降はスライス厚2mmを重ねた表示とし,SNR向上と末梢血管描出を両立した画像を提供できた。

ルーチン下肢CTA Low-kVによる被ばく,造影剤低減症例
ルーチン下肢CTA Low-kVによる被ばく,造影剤低減症例

 

Cardio Vascular
Dual Source部門

小田志穂美(東海大学医学部付属病院放射線技術科)

透析シャント血管における動静脈撮影
小田志穂美(東海大学医学部付属病院放射線技術科)

【背 景】64歳,女性。慢性腎不全で透析中。2007年に左肘部にシャントを作成。現在まで狭窄や閉塞のトラブルはない。今回,透析時にシャント肢に痛みの訴えがあり,エコー検査を施行するも,見える範囲では狭窄は認められなかった。鎖骨下静脈〜左上肢中枢にかけての狭窄疑いとして,CT検査がオーダされ,画像診断科医師の要望により,(1) 単純,(2) 動脈相,(3) 静脈相で撮影を行った。
【所 見】左鎖骨下静脈は左第1肋骨と接しており,同部位で50%程度の狭窄を認める。左腕頭静脈に有意な狭窄は認められない。肘やや近位の橈骨皮静脈には,前後と比較して狭小化を認める。
【訴求ポイント】シャント血管の狭窄好発部位には,(1) 動静脈吻合部の近傍静脈部位,(2) 肘関節屈曲部の周辺静脈,(3) 上腕橈側皮静脈が鎖骨下静脈に合流するアーチ部位,(4) 頻回穿刺部位などがあり,この範囲を撮影範囲でカバーする必要がある。シャント血管という速い血流においても,Turbo Flash Spiral Scanを用いることで,息止めを含めても撮影間delay time 7sで撮影範囲を動脈相,静脈相にて撮影することができた。また,すべての時相でTurbo Flash Spiral Scanを用いることで,1回撮影線量はCTDIvol約6.55mGyと,低線量に抑えることができた。透析患者であること,動脈相と静脈相を識別したいことから,造影剤は動脈相のトリガーがかかった時点で生理食塩水でフラッシュし,投与量は60mLに抑えた。CARE kV on,画像コントラストレベル9に設定し,100kVでの撮影であったが良好なコントラストが得られた。

時相毎に撮像エネルギーを最適化した小児腎ダイナミック撮像
時相毎に撮像エネルギーを最適化した小児腎ダイナミック撮像

 

4D Spiral
Dual Source部門

関谷俊範(神戸大学医学部附属病院医療技術部放射線部門)

少量造影剤と4D撮像で達成した肺動脈および心臓,大動脈評価
関谷俊範(神戸大学医学部附属病院医療技術部放射線部門)

【背 景】80歳代,男性,ASO術後。数日前より労作時呼吸困難,全身倦怠感,ふらつきがあり,意識消失により緊急搬送された。頭部MRIのDWIにおいて明らかな急性期病変なし。単純CTで左房内に巨大血栓指摘。血栓の形態評価および肺動脈など他領域の血栓の有無の評価が必要だが,eGFR24.5という高度腎機能障害のため造影剤をできる限り減量し,肺動脈,心臓,大動脈をターゲットにして胸腹部4D Spiral検査を施行することになった。
【所 見】左心耳から左房内に大きな血栓を認めるが,僧帽弁から左室内への伸展は認めなかった。左肺中枢側の濃度上昇および左優位の胸水を認め,この血栓による肺静脈の血流うっ滞による可能性がある。肺動脈には明らかな血栓は認めず。そのほか,大動脈弓部に囊状瘤を認め,さらに腹部大動脈には限局解離が疑われる。腹部主要分枝としては,両側腎動脈起始部狭窄を認めた。両側総腸骨動脈はステント後であるが,開存している。右内腸骨動脈は閉塞,また,右内頸動脈の閉塞も指摘できる。なお,明らかな臓器虚血はとらえられなかった。左房内血栓が巨大であったため,抗凝固療法のみで溶解するのが困難と判断され,後日心臓血管外科が手術することとなった。なお,検査後の採血結果において,明らかな造影剤腎症は生じなかった。
【訴求ポイント】本症例では,70kVの4D撮影にて多時相の3Dデータを取得し,後処理で必要な時相の画像を作成する手法(“Time-blended” CT)を使用した。具体的には,5秒と注入時間の短いボーラスの造影剤が脈管内を流れている様子を4Dデータとして収集し,syngo.viaのCT Dynamic Angioを用いて非剛体補正を追加したTemporal MIPを作成し,全体が強く造影された画像を得る手法である。テストインジェクションも不要となり,造影剤総量14mLを達成できた。一時相CTDIは1.6mGyだが,4D-XLを用いることでADMIREを使用可能となり,さらに複数時相を重ねることにより,1mm厚でも十分な造影効果および低いノイズレベルの画像(肺動脈と腹部動脈CT値/SD値はそれぞれ732HU/22HU, 441HU/17HU)を提供できた。さらに,肺動脈相,大動脈相と任意時相の画像を作成し,3D画像作成も容易となった。

少量造影剤と4D撮像で達成した肺動脈および心臓,大動脈評価
少量造影剤と4D撮像で達成した肺動脈および心臓,大動脈評価

 

Dual Energy
Single Source部門

猪股崇亨(富士市立中央病院中央放射線科)

下腿部DVT検出に対するDual Energy追加撮像の有用性
猪股崇亨(富士市立中央病院中央放射線科)

【背 景】64歳,男性。肺動脈血栓・下大静脈〜右房内血栓・深部静脈血栓症の診断にて入院となり,IVCフィルター挿入・抗血栓薬・抗凝固療法中。2週間経過し症状改善があるため,現状評価を目的とし造影CTを施行。
【所 見】肺動脈血栓は著明に退縮し,残存血栓は微細なものとなった。また,右房内血栓は完全に消失。IVCフィルター内には血栓が大量に捕獲され,それに連続して腸骨静脈まで血栓が出現した。両側膝窩静脈〜下腿静脈3分枝にかけて,血栓は広範囲に残存することが確認されたが消退傾向である。
【訴求ポイント】患者は180cm,75kgと大柄であり,初回CTでは造影剤の容量不足により,膝窩静脈以下のレベルでDVTの指摘が非常に困難であった。本検査においても膝窩静脈の造影効果は低く,評価困難と考えられたため,下腿部をDual Energyモードで80kV/140kVの2回撮影を行い,40keVの仮想単色X線画像を作成した。投与ヨード量は480mgI/kgと少量で,撮影時間も300秒後開始であったが,膝窩静脈のCT値は200HU以上と高値で,血栓が明瞭に描出された。また,CTDI(mGy)/CTDLP(mGy*cm)はそれぞれ,80kVで2.23/150.8,140kVで3.22/223.0と,低線量であるが十分な画質が担保された。Dual Spiral Dual Energyモードでは2回の撮影が必要だが,しっかりと固定することで位置ずれによるアーチファクトを防ぐことができた。下腿部でDVTの検出能が低下した際に,Dual Energy CTを追加撮影することが有用であった。

下腿部DVT検出に対するDual Energy追加撮像の有用性
下腿部DVT検出に対するDual Energy追加撮像の有用性

 

Dual Energy
Dual Source部門

中井雄一(昭和大学病院放射線室)

絞扼性イレウスの鑑別診断におけるヨードマップ画像の有用性
中井雄一(昭和大学病院放射線室)

【背 景】イレウスは,機械的と機能的の2種類に分けられ,なかでも絞扼性イレウスはその他のイレウスとは異なり,腸管壁の血流が乏しくなって壊死に至る可能性もあることから,緊急手術の適応となっている。しかし,イレウス所見による腸管壁は,単純CT検査では壁面からの出血により,しばしば高吸収域に見えることが多く,造影後のCT画像でも腸管壁の造影効果の判断に困惑することがある。絞扼性イレウスとその他のイレウスの鑑別には,単純画像と造影画像のサブトラクションを行う手法も考えられるが,腸管の動きや息止め不良等により信頼性に欠けることがある。そこで今回,Dual Energy CTを用いてヨードマップを作成することで腸管壁の微小な造影効果を抽出し,絞扼性イレウスとその他のイレウスの鑑別に有用かどうか検討を行った。
【所 見】回腸は拡張しており,内部に液体貯留を認める。回腸の壁は造影効果に乏しく,band等による絞扼性のイレウスが疑われる。ヘルニア囊が疑われるため,盲腸周囲ヘルニアとの鑑別が必要となる。
【訴求ポイント】造影CT検査のみでは,イレウスにおける腸管壁の高吸収域の原因の判断が困難であった。しかし,Dual Energy CTを用いてヨードマップ画像を作成すると,イレウスの腸管壁内の造影剤の分布,つまり,腸管壁の血流情報を把握することが可能となる。そのため,ヨードマップ画像の作成が血行障害を伴う絞扼性イレウスとその他のイレウスの鑑別に有用であると考えられる。当院では,他の虚血性疾患への適用も現在検討中である。

絞扼性イレウスの鑑別診断におけるヨードマップ画像の有用性

 

絞扼性イレウスの鑑別診断におけるヨードマップ画像の有用性

 

Technical
Single Source部門

石田智一(福井大学医学部附属病院放射線部)

非造影CTにおける下肢表在静脈瘤の描出
石田智一(福井大学医学部附属病院放射線部)

【背 景】68歳,女性,72kg。以前から両下腿内側に静脈瘤を認めていた。最近になって疼痛が出現したため心配になり,当院外来を受診。両大伏在静脈のレーザー焼灼術の適応を判断するため,術前3D画像を取得目的にてCTを施行した。
【所 見】両大伏在静脈瘤および両下腿表在静脈瘤を認めるが,複雑な蛇行はない。両大伏在静脈瘤はレーザー焼灼術,両下腿表在静脈瘤はstab avulsion法の適応と判断する(左4か所,右5か所)。
【訴求ポイント】表在静脈の描出は皮下脂肪と静脈のコントラストにて成り立つため,造影剤は使用せずに描出可能である。さらに,低管電圧撮影をすることで,脂肪のCT値は120kVに比べて低くなるため,コントラストの向上が可能となる。さらに,下肢は被写体厚が小さいため,線量が低下しても画像ノイズがそれほど増加しない。したがって,レーザー焼灼を行う術前の画像として,場所の確認は非造影3D画像で十分診断可能である。なお,逐次近似応用再構成法が使用できなくても,低被ばくにて検査可能である。

非造影CTにおける下肢表在静脈瘤の描出

 

非造影CTにおける下肢表在静脈瘤の描出

 

Technical
Dual Source部門

福田剛史(鈴鹿回生病院放射線課)

心電同期4D撮影による脳動脈瘤ブレブ評価
福田剛史(鈴鹿回生病院放射線課)

【背 景】77歳,女性。ブレブのある脳動脈瘤の患者。当院では破裂の可能性が高いと考えられる脳動脈瘤患者に対して,3D CTA画像を用いてワークステーションによるComputational Fluid Dynamics(CFD)解析を行い,動脈壁にかかるWall Share Stress(WSS)の状態を把握している。さらに,4D CTAを追加撮影し,瘤拍動を視覚的にも評価している。
【所 見】CFDと4D画像を比較すると,WSS低下域に4D画像でも動きが見られる。ブレブ部分の破裂の可能性を判断をするために4D画像がどのような役割を果たすか検討中だが,ブレブの拍動を見ることができたのは貴重である。
【訴求ポイント】テーブルポジション固定の心電同期4D撮影は逐次近似再構成を使用できないプロトコルであるため,アーチファクトとノイズの少ない画像が望まれる。B20というノイズを減らした関数を選択し,さらにfull reconでの画像データを使用した。half reconではノイズおよびアーチファクトの影響が出るためである。事前のCTA画像を利用し,ピーク付近の3秒間を撮影することで無駄な被ばくを減らすよう工夫した。また,その3秒間のうち,CT値変動の少ない1心拍のみを画像化した。4D撮影は,呼吸の影響により頭蓋骨も動いてしまう。WS(モーションコレクション)で補正も可能ではあるが,それでは血管や瘤の動きまで補正してしまう。頭蓋骨のみ動きを止める方法として,息止めをして撮影を行った。息止め合図後,数秒間空白を入れることにより完全に頭蓋骨を静止した状態での4D撮影が可能となった。同時に,バルサルバ効果により心拍数が下がるため,情報量を増加することが期待できた。

心電同期4D撮影による脳動脈瘤ブレブ評価
心電同期4D撮影による脳動脈瘤ブレブ評価

 

Exceeding Expected Performance
20-64 MSCT部門

林 圭吾(製鉄記念広畑病院診療技術部放射線科)

脳色図:VRカラーマップ画像
林 圭吾(製鉄記念広畑病院診療技術部放射線科)

【背 景】64歳,男性。仕事中に左片麻痺・構音障害の症状が出現し,当院に救急搬送。出血の有無確認のため,CT撮影を施行した。
【所 見】単純CT画像では出血性変化なし。右MCA領域は左側と比較して,若干高吸収が認められる。右島皮質周囲脳溝は不明瞭である。VRカラーマップ画像は,CT値の高い順に白,赤,黄,緑,青,黒として作成した。右島皮質周囲・前頭葉・側頭葉の緑色領域は減少しており,青色領域の増大が認められる。右MCAは赤色で高吸収領域となっている。
【訴求ポイント】頭部MRIでは,DWI画像にて右島皮質周囲,前頭葉,側頭葉の一部の皮質に至る部分まで新規梗塞巣が認められ,左前頭葉にも新規梗塞を示唆する所見あり。MRAでは,右ICA Topまで描出されているが右描出不良。これらのMRI所見より,DWI画像の高信号領域がVRカラーマップ画像の青色増大領域と一致していることがわかる。以上より,単純CT撮影からVRカラーマップ画像を作成することによって,簡単に急性期脳梗塞領域の描出が明瞭化でき,確認することができた。今後,急性期脳梗塞治療の時間短縮につながると考えられる。

脳色図:VRカラーマップ画像

 

脳色図:VRカラーマップ画像

TOP