展示会に見るMRI技術の変遷(ITEM in JRC 国際医用画像総合展)(シーメンス・ジャパン)
●2005
シーメンスの誇る全身撮像Timテクノロジー搭載の1.5TMRI装置「MAGNETOM Avanto」は,日本語対応の共通言語「Syngo」を装備。動く部位に強い「PACE法」により,スライス間に隙間のない検査を可能にし,モーションアーチファクトも抑制する。
1.5T MRI装置「MAGNETOM Symphony Advanced」は,独自のコイルテクノロジー「IPA」と「iPAT」を組み合わせ,広範囲高分解能撮像を高速で描出する。テーブル移動と組み合わせれば,さらに広い範囲をとらえることもできる。
「MAGNETOM Espree」は,高磁場装置としては世界初の大口径70cm・奥行き125cmのオープンボア1.5テスラのMRI装置。展示では臨床画像パネルと開口径70cmを確認できる浮き輪状のリングを設置。
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●2006
3T装置の「MAGNETOM Trio」,1.5T装置の「MAGNETOM Espree」を展示しました。1.5装置は全部で3機種あり,「MAGNETOM Avanto」,「MAGNETOM Symphony Advanced」も含めて,コイルはすべて"Tim"を使っていきます。昨2005年に薬事承認された3T MRI「MAGNETOM Trio」は,40mT/mの最大傾斜磁場強度とスリューレート200mT/m/sという強力な傾斜磁場性能,40cmのDSV(Diameter Spherical Volume)全体にひずみや乱れを起こさない0.25ppm Vrmsの磁場均一性を持ち,脂肪抑制が均一で広範囲の検査も可能になりました。そして,次にはそこに,Timが搭載される予定です。
Timについては,この2年間で十分市場で認知されたのではないかと考えていますので,今回の展示では,Timの技術で何ができるのかをご紹介しています。その主なトピックが,「syngo SWI」,「syngo SPACE」,「syngo GRAPPA」,「syngo REVEAL」,「syngo BEAT」の5つです。なかでも,「syngo SWI」はシーメンスだけのアプリケーションです。静脈系の血管や疾患をきれいに描出できるという特長があります。例えば海綿状血管腫ですが,いままでですとT2やFLAIR,または造影でも見づらかった病変が非常によく見えるようになります。磁化率が強調され,コントラストのはっきりした,誰が見てもよくわかる画像が得られますので,新しいコントラストを描出するアプリケーションとして期待されています。また,「syngo SPACE」ではボリュームデータを取ることができるため,T2強調像を約5分で撮像し,MIP像を得ることができます。さまざまな部位で等方型ボクセルデータを実現できるということで,感覚的にはMSCTと同じです。そして,これらのすべての技術を支えるベースとなっているのが“Tim”であるということです。
(水内 宣夫 マーケティング本部MRグループプロダクトマネージャー)
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●2007
● Newアプリケーション“syngo TimCT”が登場
シーメンスMRの大きな特徴として,全身を一度で撮像できる "Tim"コイルがある。発表以来,ユーザーから高い評価を得ており,市場にもかなり浸透してきた感があるが,今回のITEMでは,このTimをベースとした “T(Trendsetting)-class”と“I(Innovation)-class”が新しいコンセプトとして発表された。装置全体の性能が向上しているほか,従来から発表されている「syngo BLADE」,「syngo SWI」,「syngo GRAPPA」,「syngo REVEAL」,「syngo SPACE」,「syngo BEAT」といった最先端のアプリケーションに加えて,T-classでは,今回新たに登場した「syngo TimCT」が搭載可能となった。「syngo TimCT」のCTとは,“Continuous Table move”の略で,CT装置と同じようにテーブルを動かしながら撮像する技術のことである。従来は,段階的にテーブルを送って撮像していたため,撮像視野の連続性(例:血管の連続性)が問題となることがあったが,全身を連続して1度に撮像できるため,広い視野の画像が高い連続性で得られる。また,テーブルを送る際の待ち時間も解消されるため,全身撮像の時間分解能の向上が期待される。T-classの対象となるのは,3T「MAGNETOM Trio, A Tim System」,1.5T「MAGNETOM Avant」,1.5T「MAGNETOM Espree」である。 また,従来のMAGNETOM Symphony シリーズに,新たに1.5T「MAGNETOM Symphony Advanced Power-class」が登場した。従来はTim搭載MRでしか使用できなかったさまざまなアプリケーションが搭載可能になったほか,Timアップグレードも可能になっている。ブースには,デザインがリニューアルされた「MAGNETOM Trio, A Tim System」(写真左)と「MAGNETOM Symphony Advanced Power-class」(写真右)のモックアップが展示された。
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●2008
● 究極のルーチンを実現する1.5T MRI「MAGNETOM ESSENZA」
MRIは,“まったく新しく,導入しやすい”をコンセプトとする1.5T MRI「MAGNETOM ESSENZA」(マグネトム・エッセンザ)が展示された。同社には,3T MRI「MAGNETOM Trio, A Tim System」のほか,1.5T MRIだけで4機種があるが(Rebioというリターナルパーツを利用した製品を含む),MAGNETOM ESSENZAは,それらと同等の高画質でありながら徹底的なコストダウンを図り,大学病院・基幹病院における複数台目の究極のルーチン用MRIとしての位置付けをめざしている。
MAGNETOM ESSENZAには,従来の1.5T装置と同様にTim(Total imaging matrix)コイルが搭載されており,Timによって実現された独自の技術として,「アイソセンターマトリクスコイル」が紹介された。従来のTimコイルでは,24個のコイルエレメントを持つスパインアレイコイルが寝台に内蔵されていたが,アイソセンターマトリクスコイルでは,ガントリ内にコイルを搭載し,コイルエレメントを9個とすることでコストを大幅に削減した。MRI撮像時には必ずコイルを磁場中心に合わせる必要があるが,アレイコイルを内蔵したため,位置合わせすることなく,いつでも磁場中心での撮像が可能となる。これにより,コイル交換作業を大幅に削減できるほか,コンソールには部位別のプロトコールが設定されているため,撮りたい部位を設定してボタンを押すだけで寝台が自動的に移動し,簡単に全身の撮像を行うことが可能となった。さらに,ガントリ長は145cmであり,下肢などの撮像時には患者さんの頭がガントリの外に出るなど,患者さんの安心感に配慮した設計となっている。 このほか,新開発の「Focus Shoulder Array coil」によって,磁場均一性をオフセットし,コイルの中に設置したシムコイルに合わせてシミングをかけることが可能となり,肩などの撮像でも磁場均一性の高いきわめて明瞭な画質が得られるようになった。
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●2009
● 70cmのオープンボアと高い画像の均一性を誇る「MAGNETOM Verio」
MRは今回,Tim(Total imaging matrix)コイル搭載の3T MRの新製品「MAGNETOM Verio」が展示された。3Tとしては唯一70cmという広いガントリ開口径と,ガントリ長も最短の173cm を実現し,側臥位や膝を立てた楽な姿勢での撮影が可能になるなど,患者さんにやさしい装置となっている。アプリケーションは,MAGNETOM Trio, A Tim Systemと同じものがすべて搭載されているほか,新たに,非造影での脳のパフュージョンイメージングを可能にする“syngo ASL”が搭載された。また,2つの異なる強さのRFを2つのコイルチャンネルによって独立制御して照射できる“TrueForm”という新技術によって,従来の3T装置で課題とされていた体幹部における画像の均一性が向上した。
1回のコイルセッティングで全身を一度で撮像できる“Tim”コイルにも,新たに32チャンネルのHeadコイルとBodyコイルが登場した。チャンネル数が従来の2~3倍になり,従来と同じ撮像時間でも,より高いSNRを得ることができる。
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●2010
● 優れた操作性を実現する新技術を搭載した3T MRI「MAGNETOM Skyra」を展示
MRIは新製品として,デザインが一新された3T MRI「MAGNETOM Skyra」と1.5T MRI「MAGNETOM Aera」の2機種が発表された。ブースにはMAGNETOM Skyraの実機が展示され,注目を集めた。
MAGNETOM Skyra は,MAGNETOM Verioと同じマグネットを採用し,70cmのオープンボアを継承しつつも,新たに搭載された最先端技術によって,より高性能な装置となっている。第4世代Timテクノロジーである“Tim4G”では,コイルのチャンネル数が従来のハイエンド装置の32チャンネルから,48,64,128チャンネルから選べるようになったほか,コイルエレメントは最大204個と大幅に拡張。この高密度コイルによって,従来の1.5T装置と比べてSNRが4倍に向上したことで,超高分解能撮像やより高速な撮像が可能となった。
また,syngo.viaと同じユーザーインターフェイスを採用した新しいコンソールには,患者さん一人ひとりに合わせたMRI検査を容易に可能にする新機能,“Dot(Day optimizing throughput)エンジン”が搭載された。読影医の検査ストラテジーや患者さんの年齢や体格などに応じて,FOVや息止め時間,ハートレートの設定をコンソールが自動で行うほか,コンソール上にガイドが表示されており,その手順に沿って設定を行っていくだけで,誰でも質の高い検査を簡単に行えるようになる。プロトコールの事前登録も可能であり,例えば,以前に行われた検査と同じプロトコールを翌日の検査予約に反映させておけば,検査当日にはすべての準備が整っているため,検査時間の短縮や作業効率の向上に貢献する。
このほか寝台にも,コイルをスライドさせるだけで簡単にジョイントできる“SlideConnect”方式が採用された。また,既存装置にも対応する新しくなった乳腺イメージング専用コイルでは,乳房の大きさに合わせたサイズ変更や,4chのバイオプシー対応コイルへの付け替えも可能になった。
●2012
●3Tへの“Access”を可能にするコストパフォーマンスに優れた「MAGNETOM Spectra 3T」
MRIでは,3T装置の高い性能はそのままに,よりコストパフォーマンスに優れた新しいMRI「MAGNETOM Spectra 3T」が注目の製品となっていた(2月に薬事認証取得)。ブースでは,実機の展示はなかったが,豊富に用意されたコイルを中心に新機能を紹介した。
MAGNETOM Spectraでは,3TとしてのQuality(高品質な診断画像)を維持するため,同社のMAGNETOM Skyraなどのハイエンド機種で採用されているコイルシステム「Tim4Gシステム」を搭載した。また,Usability(使い勝手の良い装置)を高めるため,オペレータの習熟度にかかわらず,安定した再現性の高い画像が得られるDot(Day optimizing throughput)エンジンを組み込んだ。Dotエンジンでは,操作のサジェスチョンやオンボードガイダンスなどによって最適な検査が行えるようにサポートする。さらに,Patient Careとして,173cmのショートガントリによって検査中の圧迫感を軽減するほか,省設置スペースとランニングコストの低減によって経済性を高めている。
●2013
● パラレル送信技術“syngo ZOOMit with TimTX TrueShape”が薬事承認取得
MRIでは,3T MRIのフラッグシップモデル「MAGNETOM Skyra」が展示されたが,Skyraに搭載される新しいアプリケーションとして局所励起撮像技術“syngo ZOOMit”が紹介された。syngo ZOOMitは,パラレル送信技術“TimTX TrueShape”によって局所の画像化を可能にするもので,関心領域を絞った撮像を短時間で高分解能に行うことができる。ディフュージョンや3D撮像などに対応し,展示では脳神経領域のアルツハイマーの診断や腹部や骨盤の診断での有用性について,臨床画像を含めて紹介した。syngo ZOOMit with TimTX TrueShapeは,4月4日に薬事承認された。また,高性能と経済性を両立した1.5Tの「MAGNETOM ESSENZA」がリニューアルされ,検査を最適化するDotシステム搭載機種として新たに紹介された。
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●2014
● 最大で97%のノイズ低減を可能にした静音技術「Quite Suite」をアピール
MRIコーナーでは,RSNA2013で発表され日本でも2014年春からMRIへの搭載がスタートした静音技術である「Quite Suite」を中心に紹介した。Quite Suiteは,勾配磁場の変調を最適化することでスイッチング時に発生する騒音を解消する技術と,“PETRA”と呼ばれるUltra short TE(uTE)技術を利用した2つの技術で構成される。勾配磁場の最適化では,プレスキャンから通常のルーチンで使用するシーケンス全体で適応でき70%以上の低減が可能。静音化したqPETRAでは,3D T1強調画像で従来のMPRAGEと比較して90%以上の騒音低減と高コントラスト画像の取得が可能になる。会場では,ヘッドフォンでQuite Suiteの静音効果を体験できるコーナーを設けて来場者にPRした。また,体動補正に大きな効果のある“FREEZEIt”を発表し,ラジアルサンプリングの採用で通常呼吸下での造影3D撮像を可能にする“syngo StarVIBE”などの紹介をパネルで行った。
実機としては,70cmのワイドボアデザイン,145cmのショートガントリで開放的な検査環境を提供する1.5T MRI「MAGNETOM Aera」が展示された。Quite Suiteは,このMAGNETOM Aeraと3TのMAGNETOM Skyraで利用可能となっている。
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●2015
● 最新ソフトウエアを搭載し,運用コストを削減した1.5T MRI「MAGNETOM Amira」
1.5T MRI「MAGNETOM Amira」は,3T MRIなどの上位機種向けのソフトウエアであるバージョン“E11”を搭載し,静音撮像法である“Quiet Suite”,体動アーチファクトを大幅に軽減して3D撮像を可能にする“FREEZEit”,高密度受信コイル“Tim4G”などが利用できる新しいハイエンド1.5T MRIである。一方で,ヘリウムの蒸発をゼロにする“ゼロボイルオフテクノロジー”と,マグネット内の液体ヘリウムの状態を常時モニタリングして,ヘリウム循環が必要ない時にはコンプレッサーを停止する“Eco-Power”によって,最大30%の電力消費削減を実現した。さらに,施設の検査数に連動した保守プランが用意されており,ハイエンド機能をコストを抑えて利用したいという,ユーザーのニーズに応える製品となっている。ボディコイルは13エレメントと高密度の構成ながら,約1kgと軽量で形状も軟らかく被検者に負担のない検査が可能になる。
そのほか,小児(新生児)用の16チャンネルコイルとして“Pediatric 16 coil”を展示した。Pediatric 16 coilは,小児を寝かせるクレードル部分が脱着できる構造となっており,検査室の外で沈静を行い検査が可能なタイミングでクレードルごとセッティングでき,スムーズな小児MRI検査が可能になる。従来に比べて検査時の騒音を最大97%低減するQuiet Suiteと併用することで,小児検査に最適なMRIソリューションが提供できることを紹介した。
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●2016
● 頭頸部領域の画質や検査効率を飛躍的に向上させる“GOBrain”と“Simultaneous Multi-Slice(SMS)”
MRIのコーナーでは,ハイエンドクラスの3T MRI「MAGNETOM Skyra」が展示された。シーメンス独自のコイル技術である“Tim(Total image matrix)”が第4世代へと進化。超高密度コイルエレメントと128のRFチャンネルからなる“Tim4G”により超高分解能撮像や全身撮像が容易に行える。操作性にも優れており,“Dot(Day optimizing throughput)”エンジンの採用により,検査部位や被検者に応じて最適なシーケンスを自動設定できるなど,検査効率とワークフローを向上する。さらに,静音技術である“Quiet Suite”によって,70%以上のノイズを除去。小児検査などにおいて,被検者の負担を軽減する。
今回の展示では,MAGNETOM Skyraに搭載されるソフトウエアの最新バージョン“syngo MR E11”に搭載された頭頸部領域向けの2つのアプリケーションが紹介された。その1つGOBrainは,Dotエンジンの最新バージョン“DotGo”とTim4Gにより,検査時間の短縮化を図った。頭頸部領域の撮像における位置決めを自動化し,5分程度で検査を施行できる。もう1つのSimultaneous Multi-Slice(SMS)は,複数断面を同時収集することで撮像時間の短縮化を図り,高分解能データを収集する。従来,神経線維を画像するMRトラクトグラフィでは,神経線維の走向に沿って撮像を行うため,時間がかかっていた。SMSでは,multi-band EPI を応用した“blipped CAIPIRINHA”で撮像することで,短時間で空間分解能に優れる画像を得ることができる。
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●2017
● 臨床的有用性と経済性のバランスが高次元でとれているMAGNETOM Sempra
MRIの新製品MAGNETOM Sempraは,3T装置「MAGNETOM Skyra」や1.5T装置「MAGNETOM Aera」といったハイエンドクラスMRIに搭載されるソフトウエアバージョン“E11”を採用している。画像の歪みと位置ズレを軽減し,拡散強調画像を提供する“syngo RESOLVE”,静止の困難な小児や高齢者,動きのある臓器の撮像において,モーションアーチファクトを抑えた画像が得られる3D撮像“StarVIBE”が使用できる。同じくE11のソフトウエアである“Advanced WARP”は,金属アーチファクトを抑制でき,安定した画質を実現する。また,ハードウエアとしても,高いSNRと高速撮像を可能にするコイル技術“Tim4G”やガントリ内の磁場均一性を確保し,FOV全域で安定した画質を得られる“TrueForm”を搭載している。さらに,独自の静音技術である“Quiet Suite”により,従来装置に比べ最大97%以上のノイズを除去することができ,小児MRIにおける鎮静剤を使用しない検査も可能。このほか,撮像断面の自動位置決めなどワークフローを効率化するとともに,検査画質を安定化させる“DotGO”も使用できる。
MAGNETOM Sempraは,医療施設経営の観点からも優れた技術を搭載している。マグネット構造と優れた冷却システムによって気化したヘリウムを循環して再び液化することで消費量をゼロにする“ゼロボイルオフテクノロジー”により,ランニングコストを抑えた運用が可能である。さらに,マグネット内の液体ヘリウムの蒸発状態をモニタリングして不必要な循環を止める“Eco-Power”技術により,前機種から最大30%消費電力量を抑えられる。このほかにも,最小設置面積を28m2と省スペース化しており,設置コストも含めて,経済性に優れた装置と言えるだろう。
MRIコーナーのもう一つの大きなトピックスとしては,「MAGNETOM Skyra」や1.5T装置「MAGNETOM Aera」に,圧縮センシング(compressed sensing:CS)のアプリケーション“Compressed Sensing Cardiac Cine”が搭載されたことが挙げられる。“E11C”に搭載されたCompressed Sensing Cardiac Cineは,少ないサンプリングデータから画像を再構成する技術で,心電図同期をすることなくシネMRIの撮像が可能。心臓MRIの検査時間を大幅に短縮できる。従来,長い検査時間を要する心臓MRIは,大学病院など一部の医療施設でしか施行できなかったが,Compressed Sensing Cardiac Cineによって,ルーチン検査でも行えると期待される。ブース内では,愛媛大学,済生会松山病院との共同研究の成果などが紹介された。
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●2018
●BioMatrix Technologyで被検者ごとに検査を最適化するMAGNETOM Vida
MRIは,日本国内で2017年11月に発売した3T MRIのMAGNETOM Vidaを展示した。最大の特長は,プレシジョン・メディシンを追究した新技術コンセプトBioMatrix Technologyを初めて実装したことである。ブースでは,“Anticipate”“Adapt”“Accelerate”をキーワードに,搭載された3つの機能を紹介した。
Anticipate(予想する)技術として搭載されたのが,“BioMatrix Sensors”である。寝台に埋め込まれた脊椎コイル内に,呼吸信号を検知するセンサを内蔵することで,被検者が寝台に寝るだけでリアルタイムに呼吸をモニタリングし,呼吸同期を可能とする。呼吸ベルトや呼吸センサの取り付けが不要で,被検者の負担を軽減できる。
Adapt(適応する)技術としては,“BioMatrix Tuners”が搭載された。MRI検査でシム調整が難しい頭頸部の磁場均一性を高めるため,頭頸部コイルにシムコイルを内蔵した。ガントリ内蔵シムコイルよりも撮像部位に近い場所からシム調整ができるため,より良好な脂肪抑制効果を得ることができる。また,頭頚部コイルは被検者に合わせて3段階(0°,9°,18°)に傾くチルト機構を搭載し,被検者に負担の少ない体位で,より精度の高い検査を実現する。
そして,Accelerate(加速する)技術として実装された“BioMatrix Interfaces”は,操作者の負担を軽減し,ワークフローを向上させる。ガントリ前面左右に設置された液晶タッチパネルでは,情報表示だけでなく,検査部位設定などの操作が可能になった。パネルに表示された人体模式図から検査部位を選択するだけで,検査部位が撮像中心となるように自動でテーブルが移動する。
このほか,ハード面の機能としては,着脱式テーブルに電動アシストが搭載された。ハンドルを両手で握り,動かそうと力を加えたときだけ作動する安全機構となっている。テーブルの着脱や車輪ロックなどをハンドル手元のボタンで操作できるようにしたことで,寝台周りからフットペダルなどをなくし安全性を高めた。また,テーブル中央に5つ目の車輪を設けることで,取り外した際の取り回しが向上している。
撮像技術としては,Compressed Sensing(圧縮センシング:CS)を用いた心臓シネ検査,肝臓ダイナミック検査の臨床的有用性をアピールした。CSは,収集するデータを1/10〜1/20に減らしても画像再構成が可能な技術で,撮像時間を大幅に短縮することができる。これにより,心臓,肝臓ともに安静呼吸下での検査が可能になり,心臓シネ検査は従来の16倍以上の撮像スピードを実現。肝臓ダイナミック検査では,CSを応用したGRASP-VIBEにより造影前から後期相まで連続的にデータを収集することで,息止めなしでの撮像が可能になった。
●2019
●再現の高い画質を提供する“BioMatrix Technology”と高速撮像のための“Turbo Suite”を搭載した「MAGNETOM Lumina」「MAGNETOM Altea」
MRIコーナーには,新型MRIの2機種「MAGNETOM Lumina」(着脱式寝台タイプ)と「MAGNETOM Altea」(固定式寝台タイプ)が展示された。両機種ともに,高い再現性と生産性の実現をめざして開発された。MAGNETOMブランドのMRIは,研究用と臨床用に大別されるが,それぞれ3Tと1.5Tのハイエンドクラスに位置づけられる。Luminaは「月」,Alteaは「星」を意味する。
高い再現性を実現するための技術として両機種には,シーメンスの研究用プレミアムハイエンド装置「MAGNETOM Vida」に採用された“BioMatrix Technology”が搭載された。BioMatrix Technologyは,被検者の性別や年齢,体格といった生理学的特性の影響を受けることなく,再現性の高い,高画質画像を安定して撮像するための技術の総称であり,“BioMatrix Sensors”“BioMatrix Tuners”“BioMatrix Interfaces”で構成される。その中の1つ,BioMatrix Sensorsは,被検者をセッティングすると,寝台のスパインコイルに内蔵されたセンサが自動的に呼吸をモニタリングして呼吸同期撮像を行える。センサは2箇所に内蔵されており,ヘッドファースト,フィートファーストの両方に対応する。従来の呼吸同期撮像では呼吸ベルトや呼吸センサの取り付けが必要であったが,その作業が簡略化され,検査の効率化にも寄与する。また,BioMatrix Tunersの技術である“CoilShim”では,高精度のシミングを行えるシムコイルを頭頸部コイルに内蔵することで,磁場の不均一性を抑え安定した脂肪抑制効果を得られるようにした。BioMatrix Interfacesとしては,タッチ操作でポジショニングを容易に行え,検査時間を短縮できる“BioMatrix Select & Go”や,フットパネルをなくし,コントロールパネルで操作できる着脱式寝台などの技術がある。
生産性の向上については,高速撮像ためのアプリケーション群の総称である“Turbo Suite”が搭載された。Turbo Suiteは多断面同時励起を行う“SMS(Simultaneous Multi-Slice TSE and DWI)”とcompressed sensing(CS),パラレルイメージングで構成される,SMSによる“syngo RESOLVE”,CSによる3D-TOF MRAや“3D SPACE”などで大幅な時間短縮が可能となる。先行して評価を行っている聖路加国際病院では,撮像時間の短縮だけではなく,撮像時間を変えずに空間分解能を上げることで画質の向上を図っており,高い評価を得ているという。
さらに,被検者がガントリ内で映像と音声を視聴できる「Innovision」が展示された。オプションとして提供される。バッテリ駆動で,クッションには骨伝導スピーカーを内蔵。被検者の不安を軽減できることから,小児検査の多い施設から期待が寄せられているという。このほか,医療機関の経済的な負担を軽減する汎用性の高いコイル「UltraFlex」も紹介された。肩や膝用のラージサイズ,手首や足首用のスモールサイズがラインアップされている18chのコイルである。
●2021
●画像のノイズ除去や鮮鋭度向上を図るディープラーニング画像再構成技術“Deep Resolve”を発表
MRIについては,RSNA 2020で発表されたディープラーニングを用いた画像再構成技術のDeep Resolveが話題を呼んだ。MR画像のSNR向上や高分解能化,撮像時間の短縮が可能となる技術である。ディープラーニングを用いた画像再構成技術は,すでに複数のメーカーから発表されているが,Deep Resolveの優れているポイントは,“Deep Resolve Gain”と“Deep Resolve Sharp”という2つの技術があり,ユーザーが目的に応じて使い分け,併用できることだ。Deep Resolve Gainは,画像のノイズ除去を行い,SNRの良い画像を提供する。rawデータから取得したノイズマップをベースに局所ノイズも選択的に低減させる。加えて,高速撮像によって生じるノイズも抑えることができるため,撮像時間の短縮にも寄与する。一方,Deep Resolve Sharpは,画像の鮮鋭度を向上させる。身体の各部位の画像を学習させたことで,ほぼすべての領域で鮮鋭度の優れた高分解能画像を得ることが可能で,マトリックスサイズを最大2倍拡大することができる。このDeep Resolve GainとDeep Resolve Sharpを適用することで画質を向上させることはもちろん,従来の画質を維持したまま撮像時間の短縮を図ることも可能だ。このDeep Resolveは既存も装置にも搭載できるという。
MRIに搭載されるAI技術としては,ほかにも“BioMatrix Technology”技術の“Select&GO”がある。簡単な操作でポジショニングの時間を従来の30%程度短縮でき,検査のスループットを向上する。このSelect&GOは,研究用ハイエンド3T MRIの「MAGNETOM Vida」,臨床用ハイエンド3T MRI「MAGNETOM Lumina」,プレミアムクラス1.5T「MAGNETOM Sola」,ハイエンド1.5T「MAGNETOM Altea」で使用できる。このほかにも,AI技術を用いた自動位置決め機能“Dot Engine”も紹介された。Dot Engineは,頭部,脊椎,四肢,心臓,腹部,乳腺などに対応している。
なお,ブース内では,BioMatrix Technology搭載のMAGNETOM Luminaが展示された。MAGNETOM Luminaは,高速撮像アプリケーションのパッケージ“Turbo Suite”も搭載している。Turbo Suiteには,多断面同時励起・データ取得を行う“SMS(Simultaneous Multi-Slice)”や圧縮センシング(compressed sensing),パラレルイメージングといったアプリケーションがある。
●2022
●デジタルと0.55Tの融合で新たな価値を提供する「MAGNETOM Free.Max」
MRIは,2021年11月から国内での販売を開始した「MAGNETOM Free.Max」が初展示となった。デジタルと0.55Tの融合で新しい価値を提供するHigh-V MRIにラインアップされる装置で,経済性や設置性を高めてMRI導入のハードルを下げることで,より多くの人がMRIにアクセスできるようになることめざして開発された。
ディープラーニングとターゲットデノイズによりノイズ除去と高分解能化を実現するMR画像再構成“Deep Resolve”を実装し,0.55Tでありながら1.5Tに迫る高画質や短時間撮像を可能にする。高磁場MRIでは検査が難しい肺の撮像や,金属インプラントを設置した症例でも良好な画像を得ることができ,臨床応用の幅を広げることができるのも特長だ。Deep Resolveについては今回,高速化を可能にする新たな機能“Deep Resolve Boost”が追加された。Deep Resolve Boostでは8倍速程度まで高速化でき,超解像機能の“Deep Resolve Sharp”と併用することで,画質を落とすことなく高速撮像が可能になる。
ガントリの開口径は80cmと大きく,閉所恐怖症や体格の大きい患者,膝を屈曲した状態での検査など,さまざまな患者が楽に検査を受けることができる。経済性・設置性においては,独自の“DryCoolテクノロジー”によりわずか0.7Lの液体ヘリウムで運用でき,クエンチパイプが不要なことに加え,コンパクトなマグネット設計(総設置面積24㎡,総重量3.2トン未満)のため,建物上階や手術室内など従来はMRIの設置が難しかった場所にも導入することができる。脊椎コイルをガントリ内に埋め込み,実際に撮像する範囲にコイルサイズを絞るなどの工夫もあり,コスト削減を実現している。
また,導入ハードルを下げるためにオペレーションにも配慮し,検査ガイド機能“myExam Companion”や,ワンタッチで撮像目的部位へのポジショニングを可能にする“BioMatrix Select&GO”を実装するほか,リモートスキャン・サポートサービス「syngo Virtual Cockpit」も提供可能で,オペレータによらない一貫性のある結果の提供を可能にする。
●2023
●3T MRI「MAGNETOM Lumina」に心拍センサ内蔵のBodyコイルが対応
MRIは3T MRI「MAGNETOM Lumina」の実機が展示された。どんな被検者でも再現性高く,高画質を取得できる「BioMatrix Technology」や,パラレルイメージングなどの高速撮像技術を組み合わせた高速撮像パッケージ「Turbo Suite」を実装し,臨床用ハイエンド装置として高いスペックを有している。
再現性の向上とワークフロー改善を実現する「Select&GO」は,ガントリのタッチパネルで撮像部位を選択するだけで,撮像目的部位を磁場中心へと自動でポジショニングする。BioMatrix Technologyはコイル技術にも注がれており,チルト可能なヘッドネックコイルでは,円背患者でも安定した撮像を行える。今回は最新アップデートとして,「BioMatrix Beat Sensor」が1.5T装置に加えて3T装置にも対応したことが紹介された。BioMatrix Beat Sensorは,心拍センサを内蔵したBody matrixコイルで,患者の身体にコイルを置くだけで心臓の同期撮像を実現する。心電図同期撮像で必要なECG電極の貼り付けが不要となり,患者の快適性が向上することに加え,セッティングを大幅に簡略化できる。また,電位ノイズが生じないため検査の安定性が高まるというメリットもある。
MAGNETOM LuminaにはDeep Learningを用いた画像再構成技術「Deep Resolve」も搭載されており,高速化とノイズ除去を実現する「Deep Resolve Boost」と空間分解能を向上させる超解像機能「Deep Resolve Sharp」を併用することで,解像度向上と撮像時間短縮を両立できることをアピールした。Deep Resolveについては,シングルショットHASTEとシングルショットEPIにも適用を拡大したことがアナウンスされた。
●2024
●強力な傾斜磁場コイルを搭載し,研究ニーズにも応えるハイエンド3T MRI「MAGNETOM Cima.X」が登場
MAGNETOM Cima.Xは,ハイエンド3T MRI「MAGNETOM Prisma」の後継機。2010年から米国のマサチューセッツ総合病院とSiemens Healthineersが共同で進めている超強力傾斜磁場システムの研究の知見を集結し,10年以上の歳月をかけて開発された強力な傾斜磁場コイル「Gemini Gradients」を搭載している。Gemini Gradients では,2つのgradient power amplifier(GPA)を同時に駆動させることで,従来機の2.5倍となる最大傾斜磁場強度200mT/mを実現した。これにより,非常に高いb値においてもTEを短縮し,SNRを大幅に改善した拡散強調画像(DWI)の取得が可能となる。高b値DWIでは脳や体内の微細な構造物も高コントラストに描出できるため,脳神経領域をはじめとする研究ニーズに応える装置となっている。強力な傾斜磁場を用いるほど傾斜磁場コイルの冷却時間が延長するが,新開発の冷却方式である「HydroCore Cooling」によって冷却効率を大幅に改善し,高b値DWIの撮像時間を最大75%短縮することが可能となった。さらに,同社独自のハードウエアテクノロジーである「BioMatrix Technology」が採用された。寝台に組み込まれた「BioMatrix Sensor」によって呼吸の動きを検知するため,専用の呼吸センサなどを用いることなく,被検者が寝台に寝るだけで呼吸情報を取得でき,呼吸同期撮像を支援する。また,軽く柔軟性の高い「BioMatrix Body Coil」は,受信コイルを被検者にセットするだけでBeat Sensorによって心拍を検知するため,心拍同期撮像が容易に可能となる。
一方,ソフトウエアにおける最大の特長として,AIを用いた画像再構成アプリケーション「Deep Resolve」が搭載されたことが挙げられる。今回の展示では,Deep Resolveの機能として,ディープラーニングを用いて撮像を高速化した際のノイズ上昇を抑制する「Deep Resolve Boost」と,超解像技術を用いて撮像時間を延長することなく画像を高分解能化する「Deep Resolve Sharp」の2つが紹介された。これらの機能は併用可能であり,撮像時間を大幅に短縮しながら分解能の大幅な向上が可能となる。今回新たにDeep Resolveが3D高速撮像技術CAIPIRINHAにも適用可能となった。