技術解説(フィリップス・ジャパン)
2020年6月号
US Today 2020 超音波検査・診断最前線
表在領域の最新動向─“AI Breast”&「XL14-3」xMATRIXリニアアレイトランスジューサ
梅川 夕佳[(株)フィリップス・ジャパン 超音波診断装置ビジネスマーケティンググループ]
●AI Breast機能
超音波検査はほかのモダリティと比べるとリアルタイム性に優れるが,結果が術者の技量に依存するのが欠点である。フィリップスは近年,操作を自動化することで検査時間を短縮するとともに,客観性と再現性を高めることで,より精度の高い検査を支援する独自のAI(Anatomical Intelligence:解剖学的知識)技術を超音波診断装置に加え,さまざまな新しいソリューションを生み出している。その一つが,乳腺エコー領域の“AI Breast”である。以下に,AI Breastの代表的な機能を紹介する。
1.プローブマークの自動追従
AI Breastは,マットレス格納の磁場発生装置「テーブルトップ型フィールドジェネレータ」と,電磁トラッキングコイル内蔵の「eL18-4 EMT」トランスジューサ(図1)を組み合わせることにより,GPSと類似の技術でトランスジューサの位置情報を把握し,ボディマーク上にリアルタイムでプローブマークを表示させる。これにより,手動でプローブマークを置くといった従来の操作を省き,術者は走査に集中することができる。かつ,プローブマークは術者の主観が入らず,置き間違いのない,より正確な位置情報を残すことができる(図2左下)。
2.病変の位置をワンタッチ表示
AI Breastは位置情報を持っているため,乳頭腫瘤間距離をワンタッチで表示することが可能である(図2)。病変が乳頭から近い場合はマニュアル計測も容易であるが,離れている場合には2画面表示やパノラマの機能を使用する必要があり,計測誤差が生じやすい。AI Breastを用いることで,病変の場所や検者の経験に依存せず, ほぼ同じ結果を短時間で表示することができる。術前化学療法の治療効果判定など,過去画像との比較を行う際にも有用な機能である。
●XL14-3 xMATRIXリニアアレイトランスジューサ
日本では2019年末より販売を開始した「XL14-3」xMATRIXリニアアレイトランスジューサは,5万6000個もの素子が格子状に配列されたマトリックスアレイ型であり,3D/4D機能を備えている(図3)。超音波ビームの厚み方向にも電子的にフォーカスをかけることが可能であるため,浅部から深部まで均一で薄いビームを構成することができ,画質の向上をもたらす。また,“Live xPlane”では,直交断面をリアルタイムで同時に表示することができる(図4)。この機能は,Bモードのみではなくドプラモードでも使用できるため,直交断面における腫瘤などの大きさの計測やドプラの描出など,病態把握をより正確に迅速に行うことができると期待される。XL14-3は現在,甲状腺,血管,筋骨格のアプリケーションに対応している。
◎
フィリップスでは今後も,日々の検査を再現性高く迅速に実施できるための比類なき機能の開発を進め,医療に貢献していきたいと考えている。
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