技術解説(フィリップス・ジャパン)
2017年4月号
Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点
循環器領域におけるトータルインテグレードソリューション─WS+動画PACS+レポートシステムが提供する診断環境
小酒部洋和(ヘルスケアITソリューションサービスビジネスグループ ICAPモダリティースペシャリスト)
日常の医療の現場では,さまざまな情報を共有,活用することによって,診断から治療までを行っていることは周知の事実である。放射線関連の多くの画像データを扱う診断領域でもある循環器領域に目を向けると,angioや一般撮影,CT,MRI,USなどの画像データはもとより,心電図・血液検査などの生理検査,検体検査データ,所見レポートなどの情報を複合的に扱いながら診断を行っている。本稿では,フィリップスのヘルスケアITが持つ循環器動画PACSである“IntelliSpace Cardiovascular(ISCV)”のカテレポートシステム“InGent Report Cath(iReport Cath)”,ネットワーク型のマルチモダリティワークステーション“Intellispace Portal(ISP)”による循環器ソリューションについて記す。
■ISCV
循環器領域にフォーカスした循環器専用動画PACSであるISCVは,メインとなるangioやUSの動画表示,解析だけではなく,ECG波形表示や,CT/MRIの画像解析を,ワークステーションであるISPと親和性のある連携で呼び出すことができる。一方,データの管理面では,循環器領域の患者の特徴である再発や,過去のイベントとの関連性を見るために,比較的長い期間のデータを参照することが必要である。扱うデータの種類も多岐にわたるため,時系列上の情報量は多くなる。タイムラインは,時系列で検査結果やレポートを把握することに重点を置いてデザインされている。そのため,個々の検査画像や所見レポートなどの情報を,タイムライン上でわかりやすいアイコン形式にすることで,多くの情報を1本のライン上に表示し,簡単な操作で比較などが可能となっている(図1)。
■iReport Cath
国内開発であるカテレポートシステムiReport Cathは,ワークフローの改善をめざしレポート作成の効率向上にフォーカスし,現在と過去所見や診断/治療をクリックレスに把握できるよう設計している(図2)。また,各種機能は医師,看護師,コ・メディカルの多くの意見を取り入れて,スムーズなワークフローを提供するユーザーインターフェースになっている。
■マルチモダリティワークステーションISP
フィリップスのネットワーク型のワークステーションISPは,約70のCT/MRI/NMの解析処理,USとangioのビューイングが可能である。ISPのコンセプトにClinical Domain(診療領域)というものがある。通常クリニカルアプリケーションは対応モダリティで扱われることが多いが,この概念ではcardiology,oncology,vascular,neurology,orthopedicsの5つの診療領域に,アプリケーショングループを分けている。cardiologyの領域では,CT:9/MRI:8/NM:4/マルチモダリティ:4のアプリケーションで構成され,ISPのアプリケーションを複合的に使用できる環境になっている。
1.多彩なネットワーク連携
ISPでは,ISCVやPACSの連携起動も複数のモードを持っている。連携端末側で選択したシリーズを使用するモードのほかに,ISP,連携端末上にあるシリーズリストを表示し,リストから自由にシリーズを選択できる。また,ISPで作成した解析状態を保存しているbookmarkを表示することが可能であるため,現場で作成したbookmarkを連携端末上でも使用でき,ライブの状態の解析をすべての端末で共有できる(図3)。このように,ISPとISCVを連携することで,ISCV上のほかの情報と比較しながら,ライブの状態でCT,MRIの心臓解析を利用できる。
2.MRI Cardiac Analysis
MRIの心臓解析機能は,心機能や遅延造影,perfusion,T1 mapなどの解析を統合した形のアプリケーションになっている。特徴的なのは,これらの解析機能は心臓MRI専用の“MR Cardiac Viewer”から起動するようになっている。このビューワは,撮像シリーズに心機能や遅延造影などの目的とスキャンの方向を関連付けることによって,目的をクリックすると自動的に関連付けられたシネなどのシリーズが,カスタマイズしたレイアウトで表示され画像を見る,解析を行うという,読影に必要なフローを1つのソフトウェアで提供している(図4)。
3.統合的心臓解析オプションCCA
CT用の統合型心臓解析ソフトウェア“Comprehensive Cardiac Analysis(CCA)”は,心臓CTでメインとなるcoronary解析に加え,複数フェーズからの心機能解析まで統合的に解析が行えるように設計されている。最も特徴的なのが,自動セグメンテーション機能によりcoronaryだけではなく左右の心室,心房,心筋まで心臓全体の解剖をセグメンテーションを行う。coronary解析は,ルーチンで行う狭窄率の計測だけではなく,plaque assessmentを追加することで,狭窄部のプラークをボリュームで認識し,ヒストグラムから石灰化やプラークなどの性状を見ることも可能である(図5)。
心機能解析は,従来のシンプソン法と自動セグメンテーションのボリュームを使用するセグメンテーション法が選択できるようになっている。この方法を使用した場合,自動的に心室,心房心筋,大動脈が独立したボリュームとして認識されているため,すぐに左室駆出率(EF)などの値を知ることができる。このように,自動セグメンテーションにより得られた情報を使用することで,少ない手順でcoronaryや心機能の診断を行うことが可能である。
◎
本稿では,フィリップスヘルスケアITが提供する循環器領域のソリューションとして,動画PACSのISCV,循環器用レポートシステムのiReport Cath,マルチモダリティワークステーションのISPについて述べた。これらを今後,フィリップスヘルスケアITとして,循環器領域でさらに質の高い診断のトータルソリューションを提供していく予定である。
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