展示会に見るCT技術の変遷(ITEM in JRC 国際医用画像総合展)(フィリップス・ジャパン)

●2005

64列マルチスライスCT装置「BrillianceCT 64」(新製品)と楠本崇雄 MR/CT統括マネージャー(右)。40mm幅のボリュームディテクタを搭載し,従来にない高速スキャンと高精細な画質を両立。0.625mmの高精細サブミリスライスモードを64列装備し,あらゆる検査で超精密データが得られる。

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●2006

フィリップスのCTは,Patient Focusをキーワードとした製品の御提案を行っております。今回は,患者様へ”癒しの空間”を提供する検査室デザインをコンセプト展示し,BrillianceTM CT64を実機にてご紹介しております。また,マルチスライスCTの可能性を最大限に引き出す「BrillianceCT64」のVersion2は,患者様の体動を自動で補正可能な最新造影剤モニタリングスキャン”Auto Tracking ROI”,学習機能を持った”Dose Right ACS”による被ばく低減の強化,心臓検査における”Beat to BeatTM アルゴリズム”の強化などが特長です。さらに, 将来に向けての技術紹介として,1回転で臓器をカバーできるNano Panel Detector(WIP)を展示しております。
(近藤雅敏 マーケティング本部CTマーケティングアシスタントプロダクトマネージャー)

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●2007

● インターベンションを支援する心臓CTのアプリケーション"TrueView"

CTの展示では,同社のハイエンド機種であるBrillianceCT 64の実機を展示。さらにコンソールも設置し,実際の操作環境を再現するようにしていた。また,同社のワークステーションである"Extended Brilliance Workspace"を紹介していた。この"Extended Brilliance Workspace"では,心臓をターゲットにした新しいアプリケーションを搭載しているが,その代表的なものが"TrueView"である。これは,CTアンギオグラフィのデータから,IVRを行うときの血管撮影装置のアームの位置,角度を設定する。これにより造影剤量の低減や低被曝に効果があるという。

64列のマルチスライスCTの登場により,心臓CTが広がりを見せているが,フィリップスでは,血管撮影装置と連携することで,撮影だけでなく,検査から治療,フォローアップまでの有効にCTを活用できるようにしている。 このほか,CTに関しては,最先端技術を紹介するコーナーで,エネルギーの特性の異なる二層式検出器を搭載し,1回の撮影で画像を作成できる"SpectralCT"などを紹介していた。
(取材協力:菅原 崇さん 営業本部テクニカル&クリニカル サポート部CT東日本グループ長)

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●2008

● X線管,検出器,画像再構成システムの性能が向上した「BrillianceCT 64」を展示

“Essence Technology”を搭載した64列MDCT「BrillianceCT 64」が展示された。Essence Technologyは,今回参考出品されていた,0.27s/rot の高速スキャン,80 mm(0.625 mm×128)のワイドカバレッジを実現した「Brilliance iCT」(国内薬事未承認)に採用されている技術。X線管の熱膨張による焦点ブレを抑えて長寿命化を実現しているほか,新開発のNano Panel Detectorを採用し,電子ノイズを従来比で86%低減するなど,画質の向上や被ばく低減を実現する。さらに,画像再構成システムを高速化したことにより,処理能力も向上させている。

このほか,低被ばくでの心臓CT検査を可能にするアプリケーション の“Step & Shoot cardiac”では,従来比で,被ばく線量を1/3以下に低減することが可能なほか,撮影中に不整脈などが起こった場合には,自動的にスキャンを休止し,安定した時点で自動再開する。

また4月1日から,ポータルサーバ「Brilliance Workspace Portal」の販売が開始された。従来のワークステーションの機能を備えており,ユーザーが,一般PC上で三次元画像の閲覧から解析まで行うことができるシステムである。最高6万枚の画像を同時に処理することができる。初年度の販売台数は30台を見込んでいる。
(取材協力:小山 克彦さん マーケティング本部 CT/NM 部長)

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●2010

● Computed Tomography:CT検査で最大80%の被ばく低減を可能にする新技術「iDose」を紹介

iDoseが実現する被ばく低減を視覚的に訴えるため,Brilliance iCTのモックアップを半分にカットして展示した

iDoseが実現する被ばく低減を視覚的に訴えるため,Brilliance iCTのモックアップを半分にカットして展示した

“Philips CT Innovation”をテーマに掲げたCTコーナーでは,最大80%の被ばく低減を可能にする画像再構成ユニット「iDose」を展示の中心に据えた。iDoseは,従来の画像再構成とはまったく異なる逐次近似法を応用した画像再構成により,画質を維持した大幅な被ばく低減に加え,高分解能画像でのノイズ低減を従来と変わらない処理スピードで実現する。逐次近似法を用いた画像再構成の場合,秒間最大20枚,従来のフィルターバックプロジェクションであれば,秒間最大50枚の画像再構成が可能。iDoseは,既存装置を含め,256スライスCT「Brilliance iCT」,128スライスCT「Brilliance iCT SP」,64スライスCT「Brillianse CT64」に搭載可能である。

また合わせて,CT用ワークステーション「Extended Brilliance WorkSpace」を紹介した。“ゼロクリック”をキーワードとしており,頭部・体幹部の骨抜き,心臓解析,肝臓の区域分け,バーチャルコロノスコピーなどの自動処理が可能である。

Extended Brilliance WorkSpace

Extended Brilliance WorkSpace

Brilliance iCTの1000mA を実現したi-MRC管球(右)と0.27秒回転を可能としたAir Bearingの展示

Brilliance iCTの1000mA を実現したi-MRC管球(右)と0.27秒回転を可能としたAir Bearingの展示

 

●Spring of 2011

図3 Ingenuity CT

図3 Ingenuity CT

Ingenuity CT

● ユニバーサル128スライスCT

2011年4月より国内販売が開始されたIngenuity CTは,さまざまなCT検査において質の高い検査をサポートする,新しくデザインされたユニバーサルな128スライスCT装置です(図3)。iDose4とインテグレートすることにより,画質の向上と被ばくの低減の両立を実現します。

Ingenuity CTのメリット

  • ヘリカルアーチファクトを抑制する新128スライス
  • ノイズの少ない高分解能画像の取得
  • 画質を落とさず最大80%の被ばくを低減(*当社比)
  • 高速画像再構成を実現する画像演算処理速度によるスループット向上
  • 直感的な操作を可能とするユーザーインターフェイスによる検査効率向上
  • 検査前ウォームアップ時間を必要としない新しいX線管球によるスムーズな検査

 

●2012

●iDose4やO-MARなどにより低線量かつ高画質を提供する「Ingenuity CT」

CTでは,2011年に発売した「Ingenuity CT」の実機(ガントリーモックアップ)展示を行った。Ingenuity CTは,64と128スライスのラインナップをそろえている。また,フラッグシップのBrilliance iCTシリーズにiDose4などの最新の技術を利用できるTVI Editionが登場した。

CTコーナーでは,画像診断の基本となる高画質のコンセプトとして“Superb IQ(Image quality)”を紹介した。その中心となるのが,第4世代の逐次近似画像再構成法であるiDose4である。iDose4では,自然で違和感のない再構成画像が得られ,De Noiseによってアーチファクトの除去が可能になり,画質の向上に貢献する。従来からの高分解能撮影であるUltra High Resolutionにおいても,iDose4を適用することで,微細構造の描出が可能になることをパネルで紹介した。また,Superb IQのメリットの1つとして,O-MAR(Orthopedic Metal Artifact Reduction)を紹介した。O-MARは,整形インプラントでの金属アーチファクトを除去する画像処理法で,人工骨頭などのアーチファクトを補正して読影を可能にする技術である。金属アーチファクトの除去は,Dual Energy法で処理する方法があるが,O-MARでは特殊な撮影をすることなく,新しい再構成法によって簡単に画像が得られることをアピールした。

高画質を提供する"Superb IQ"をコンセプトにするIngenuity CT

高画質を提供する"Superb IQ"をコンセプトにするIngenuity CT

Ultra High Resolution撮影でのiDose4の効果を比較したパネル

Ultra High Resolution撮影でのiDose4の効果を比較したパネル

 

◆サーバ型マルチモダリティ解析ワークステーション「IntelliSpace Portal」

IntelliSpace Portalは,CT/MRI/NMのマルチモダリティの画像をサーバで一元管理し,NM ViewerやCT virtual Colonoscopy,MR Diffusionなど豊富なクリニカルアプリケーションを利用できる。最大の特長は,クライアントライセンスフリーで利用できることで,端末の増設はアプリケーションソフトをインストールするだけで追加の費用は発生せず,用途や運用に応じてシステム構成を拡張できる。IntelliSpace Portalのアプリケーションである「Tumor Tracking」は,腫瘍を経時的にマルチモダリティでトラッキングして経時変化を観察でき,より精度の高い経過観察を支援する。

IntelliSpace Portalは,Imaging 2.0のClinical Colaboration & Integrationを実現する製品の1つであり,MR,NM(PET/MR)などの各コーナーで,IntelliSpace Portalによる画像やアプリケーションの紹介が展開されていた。

IntelliSpace Portalはクライアントライセンスフリーで拡張可能

IntelliSpace Portalはクライアントライセンスフリーで拡張可能

 

●2013

●CT:システムモデルを用いた逐次近似画像再構成法「IMR」を発表

CTコーナーは,「A New Era of CT Superb Image Quality(CT高画質の新時代)」をテーマに,新しい画像再構成技術や,Brilliance iCTシリーズ,Ingenuityシリーズの上位機種が紹介された。
CTの新しい技術として,Imaging 2.0のコンセプトのもとに開発され,RSNA2012で発表されたシステムモデル逐次近似画像再構成法「IMR」が紹介された。IMRの特徴は,1)FBPと比べ最大90%のノイズ低減,2)低コントラスト検出能の向上(インデックス比較でFBPの2.7倍),3)コンパクトな専用画像再構成ユニット「IMR Cube」による超高速再構成スピード(999枚の画像の再構成が5分以内),4)心電図同期検査に対応していることである。IMRは,その適応をRSNA2012では躯幹部領域〔IMR(Body)〕,ECR2013で心臓領域(IMR Cardiovascular),そしてITEM2013では頭部領域(IMR Neuro)と広げ,ブースではIMR Neuroも含め,FBP,iDose4と比較した多くの画像が紹介された。
ハードウエアでは,256スライスのBrilliance iCT,128スライスのIngenuityシリーズの上位機種となる「Elite」が紹介され,ブースではBrilliance iCT Eliteのモックアップが展示された。Eliteは,IMRを搭載するために最適な技術を搭載した装置で,新検出器「NanoPanelII」と再現性の高い操作性を持つユーザーインターフェイス「iPatient」を実装した。
NanoPanelIIは,次世代を見据えて開発設計された,信号のみを純粋に受け取ることのできる検出器で,ノイズに左右されにくいため,超低線量撮影においても画像の歪みを防ぐことができる。またiPatientは,求める画像レベルを指定すると自動でプロトコールが設定され,高い再現性を得られるとともに,患者本位の最適化を図ることができる。シンプルな操作性で,必要なクリック数も大幅に減少し,スループットの向上につながる。
従来からある逐次近似画像再構成技術「iDose4」が,今年から64スライス以上の全機種に標準搭載しての販売となり,オプションとしてBrilliance iCTシリーズとIngenuityシリーズにIMRが搭載可能となる。なお,EliteとIMRは4月から販売を開始している。

フラグシップモデルの「Brilliance iCT Elite」

フラグシップモデルの「Brilliance iCT Elite」

「IMR」では,大幅にノイズを低減させることが可能

「IMR」では,大幅にノイズを低減させることが可能

   
NanoPanelIIは検出器面を球面状にすることで,X線管から照射されたX線を真っ直ぐに受け,散乱線を防ぐことができる。

NanoPanelIIは検出器面を球面状にすることで,
X線管から照射されたX線を真っ直ぐに受け,
散乱線を防ぐことができる。

 

 

●2014

●CT:逐次近似再構成技術“IMR Platinum”で,3分以内の画像再構成を実現

昨年のITEM2013で発表されたモデルベースの逐次近似再構成技術“IMR”がバージョンアップした“IMR Platinum”が,臨床画像とともに紹介された。FBP法と比べ,ノイズを最大90%低減でき,大幅な画質向上が可能になる点はIMRと同様であるが,金属アーチファクト抑制技術“O-MAR”との併用が可能になり,さらに臨床的価値が増している。低管電圧撮影でもIMR Platinumを適用すればノイズを低減できるため,より線量を抑えた撮影が可能になる。
IMR Platinumは,インテル社と共同開発した超高速画像再構成コンピュータユニット「HyperSight IMR」を搭載し,GPUも計算処理に使用するという特徴を持つ。このハードウエアに,最適な画像を作り出すアルゴリズムを組み合わせることで,IMRでは5分以内とされていた画像再構成が3分以内で可能となり,ルーチン検査での適用をさらに後押しする。
もう1つの特徴として,心電図同期,呼吸同期が可能になったことが挙げられる。従来検査では被ばく線量が多いとされていた心筋パーフュージョンなどにも対応でき,大幅な被ばく低減と,画質向上を実現する。
Brilliance iCTとIngenuityのシリーズに搭載可能で,2013年末から臨床への導入が始まっている。既存装置へのアップグレードにも対応する。

IMR Platinumのノイズ低減効果で,閾値を下げても末梢血管まで描出できる。

IMR Platinumのノイズ低減効果で,
閾値を下げても末梢血管まで描出できる。

IMR PlatiumのコンピュータユニットHyperSight IMR

IMR PlatiumのコンピュータユニットHyperSight IMR

 

●2015

● 逐次近似再構成技術“IMR Platinum”の国内導入状況や,開発中の2層検出器技術を紹介

CTコーナーは今回,モックアップの展示はなかったが,現在国内16施設に導入され稼働を始めている,システムモデルベースの逐次近似再構成技術“IMR Platinum”について臨床画像を提示した。IMR Platinumは,FBP法に比べノイズを最大90%低減し,低コントラスト検出能を向上させる。再構成は3分以内に完了することから,日常で使用できる手法であり,導入施設で撮影された臨床画像を提示して臨床価値をアピールした。金属アーチファクトを低減する“O-MAR”の併用や,心電図同期への対応も可能なため,頭部,心臓など全身どの領域にも適用することができる。
また,コーナーの一角に「CT Innovations Area」を設け,米国では2014年末にFDAを取得した二層検出器技術によるSpectralイメージングを紹介した。120kVの通常撮影を1回することで,2層になった検出器で,低エネルギーと高エネルギーに分けてデータを取得し,レトロスペクティブにSpectral解析を行うことができる。撮影は通常と変わらないため,心電図同期やAECを使用でき,被ばく線量も変わらずルーチンでDual Energy撮影が行える。また,低エネルギー画像・高エネルギー画像の位置ズレ,時相ズレがないことも大きな特長である。オーダ時にDual Energy撮影をすべきかを判断する必要がなく,通常撮影後に必要になったとしても,再撮影が不要である。CT Innovations Areaでは,二層検出器技術により得たデータから合成したSpectralイメージや,エネルギー帯の異なる仮想単色X線画像などを示して技術解説を行った。プレゼンテーション後に来場者に行ったアンケートからは,多くの人が二層検出器技術に期待していることがうかがえた。

“O-MAR”を併用した大腿部膿腫の臨床画像

“O-MAR”を併用した大腿部膿腫の臨床画像

心電図同期を使用した低線量心臓検査の臨床画像

心電図同期を使用した低線量心臓検査の臨床画像

   
参考展示された二層検出器技術によるSpectralイメージング

参考展示された二層検出器技術による
Spectralイメージング

来場者の関心を集めたSpectralイメージングの紹介コーナー

来場者の関心を集めたSpectralイメージングの
紹介コーナー

 

●2016

● 二層検出器搭載によりスペクトラルイメージングを常時取得可能な「IQonスペクトラルCT」を日本市場に投入

RSNA2014での発表後,日本への展開が待たれていた「IQonスペクトラルCT」が遂に発売となり,来場者に大きく紹介された。IQonスペクトラルCTの合い言葉である「Spectral is Always On—すべての人にスペクトラルイメージングを−」が示すように,従来と変わらぬルーチン検査でスペクトラルイメージングが可能となることが大きな特長の一つである。
搭載された検出器「NanoPanel Prism」は,異なる素材の検出器を上下2層に重ねた構造となっている。上層のYttriumシンチレータで低エネルギー,下層のGOSシンチレータで高エネルギーを弁別して収集し,スペクトラルデータセット“SBI(Spectral Based Image)”を生成することで,撮影前にスペクトラルイメージングを撮影するかの判断や設定をすることなく,通常の120kVpの撮影をするだけで120kVp画像の取得に加えて,レトロスペクティブに必要に応じてスペクトラルイメージングを得ることができる。特殊な撮影法ではないため,AECやFOV,mAs,管球回転速度,心電図同期,逐次近似再構成など,従来の設定を変えずに撮影でき,被ばくを抑えた撮影が可能で,ワークフローも変わらない。
2層の検出器であるため,従来のdual energy撮影で課題となっていた位置ズレや時相ズレがなく,高精度・高画質のスペクトラルイメージングが可能な点も特長である。40〜200keVの仮想単色X線画像を容易に表示することができ,造影画像で濃染が弱い場合には低エネルギー画像を,金属アーチファクトが多い場合には高エネルギー画像を表示し,診断に役立てることができる。低エネルギー画像でもノイズの増加がない点も大きなメリットである。また,ヨード画像や実効原子番号(Z effective)画像を取得できることで,診断に有用な画像を提供できるだけでなく,例えば定期的に単純・造影によるフォローアップが必要な患者では,造影画像から仮想単純画像を得ることで撮影回数を減らし,被ばく低減に貢献できる可能性もある。
従来のdual energy撮影の課題であった事前の追加撮影の判断,データの位置ズレ・時相ズレ,仮想単色X線画像の画質低下などを解決する次世代のモダリティとして,今後の臨床応用が期待される。

二層検出器を搭載した「IQonスペクトラルCT」

二層検出器を搭載した「IQonスペクトラルCT」

低エネルギーと高エネルギーを弁別して収集する「NanoPanel Prism」

低エネルギーと高エネルギーを弁別して収集する「NanoPanel Prism」

   
腹部CTA:通常画像(左)では血管抽出が困難だが,40keVの仮想単色X線画像(右)により明瞭な血管描出が可能となる。

腹部CTA:通常画像(左)では血管抽出が困難だが,40keVの仮想単色X線画像(右)により
明瞭な血管描出が可能となる。

血栓の検出に有用な胸部CTパフュージョン画像も検査後に任意で作成できる。

血栓の検出に有用な胸部CTパフュージョン画像も
検査後に任意で作成できる。

 

●2017

● 「IQon Spectral CT」のクリニカルメリットを臨床画像で紹介
CTエリアでは,“人にやさしく,確実性の高い診断へ”をテーマに,スペクトラルCT装置「IQon Spectral CT」と,IQon Spectral CT,「Brilliance iCT」シリーズ,「Ingenuity」シリーズに搭載可能な逐次近似画像再構成法“IMR Platinum”をアピールした。
IQon Spectral CTは,YttriumシンチレータとGOSシンチレータを二層に重ねた検出器で高エネルギーと低エネルギーに弁別してデータを収集することで,すべての検査においてレトロスペクティブにスペクトラルイメージングを実現するCTである。会場ではスライドプレゼンテーションで,造影剤の大幅な減量,虚血領域の明確化,ヨード密度画像による定量評価,検査失敗につながるトラブルをサポートするといった臨床的メリットをPRした。また,国内ユーザーへのインタビュー映像では,スペクトラルイメージングが有効だった症例などが紹介された。会場には8台のコンソール実機が用意され,来場者は実際に操作してスペクトラルイメージングを体感した。
IMR Platinumは,日常臨床において高画質・低被ばく・少造影剤量という新たな価値を提案する手法として展示した。IMR Platinum により64スライス以上のすべてのCT装置で,造影剤量を4割ほど低減しても従来と同等の画質を得ることができる。また,高画質化による下肢アンギオの明瞭化や,大幅なノイズ低減を利用した被ばく線量の低減も可能で,低線量の胸部CT検診でも肺野・縦隔ともにノイズの少ない画像を取得できることなどが紹介された。

IQon Spectral CTの有用性を映像やスライドで紹介

IQon Spectral CTの有用性を映像やスライドで紹介

スペクトラルイメージング:実効原子番号(Z effective)画像(右)

スペクトラルイメージング:実効原子番号
(Z effective)画像(右)

 

●2018

●スループットの向上とスペクトラル画像を追加した「IQon Elite Spectral CT」
2層検出器という独創的な検出器を搭載した「IQon スペクトラルCT」が2016年4月11日に発売されて2年が経過した。現在,日本国内では13台が稼働している。異なる素材のシンチレータが上層と下層に配置された検出器“NanoPanel Prism”により,2種類の異なるX線エネルギーから時間的・空間的に同じ投影データを取得できる。これにより,ルーチン検査でdual energy画像(スペクトラルイメージ)を得られる“Spectral is Always on”の装置として,国内外で高く評価されている。撮影データは,“SBI(Spectral Based Image)”として保存され,“MonoE”と呼ばれる仮想単色X線画像などが,検査後に必要に応じて解析できる。MonoEなどの画像が容易に再構成できることから,診断の確信度が向上するだけでなく,アーチファクトや造影剤量の低減などのメリットも生んでいる。CTコーナーでは,このIQon スペクトラルCTによるスペクトラルイメージを来場者が体験できるよう9機のビューワが用意され,実際にスペクトラルイメージの解析を体験できるようにした。また,通路に面したスクリーンには,ユーザーの声が症例画像とともに紹介された。
さらに,IQon スペクトラルCT発売開始からちょうど2年後の2018年4月11日は,最新技術を搭載した上位機種IQon Elite Spectral CTが発表された。新開発の画像再構成ユニット“HyperSight Elite Spectral Reconstructor”により処理能力が大幅に向上したことで,特に検査数の多い施設や救急領域で威力を発揮する。また,IQon Elite Spectral CTでは,再構成できるスペクトラルイメージが増えた。新たに追加されたのは,“Calcium Suppression”と“Electron Density”。Calcium Suppressionは,骨挫傷の診断において,カルシウム成分を抑制した画像を再構成できる。これにより,骨の高コントラストにより評価が難しかった骨髄浮腫の診断が可能になって,MRI検査を省略できる可能性がある。一方のElectron Densityは,従来の治療計画CTでリファレンス画像から作成していた電子密度画像をダイレクトに再構成することで高精度のデータが得られる。今後治療計画への応用が期待されている。なお,IQon Elite Spectral CTは,IQon スペクトラルCTからのアップグレードにも対応している。

「IQon Elite Spectral CT」の2層検出器“NanoPanel Prism”

「IQon Elite Spectral CT」の2層検出器“NanoPanel Prism”

 

「IQon Elite Spectral CT」で可能となった“Calcium Suppression”

「IQon Elite Spectral CT」で可能となった“Calcium Suppression”

 

治療計画への応用が期待される“Electron Density”

治療計画への応用が期待される“Electron Density”

 

●2019

●“Tube for Life”をコンセプトに開発された128スライスのマルチスライスCT「Incisive CT」をアピール
CTは,上位機種の二層検出器搭載「IQonスペクトラルCT」と,128スライスのマルチスライスCT「Incisive CT」,16スライスのマルチスライスCT「Access CT」の新製品2機種をモックアップやモニタで紹介した。
このうち,モックアップを展示して大々的にアピールされたIncisive CTは,“Tube for Life”をコンセプトに,医療機関が抱える財務や臨床,運用などの課題に対するソリューションとして開発された。多くの技術により高い耐久性を有するX線管球“vMRC管球”は,Incisive CT専用に開発された。通常,2〜3年で交換が必要となる管球の長寿命化を図るとともに,保守契約と併せて運用することで,耐用期間(10年)のX線管球にかかるコストを抑制・平準化することができる。運用面においては,ガントリの前面左右に“OnPlanタッチスクリーン”を搭載。患者の近くで,患者情報の登録や確認,撮影条件設定が可能となっている。操作性向上と検査の標準化向上に貢献する自動位置決め機能“iPlanning”とあわせて活用することで,データ取得までの時間を約19%短縮し,ワークフローを改善させる。また,リモートサポートにも対応しており,装置の状態を常時モニタリングし,問題が生じた際にもリモートサービスで迅速に対応することで,ダウンタイムを最小限に抑えることができる。
一方,新製品のAccess CTは,確かな診断とコスト削減という,多くの医療機関が持つニーズに答える装置で,ブースではモニタによる紹介が行われた。0.75秒回転,X線管球熱容量3.5MHU,検出器幅0.8mmの基本性能に加え,フラッグシップ装置に搭載されている画像ノイズ低減技術“iDose4”を搭載し,被ばく低減に貢献する。また,線量を抑えた撮影はX線管球の長寿命化にもつながり,コスト抑制も可能になる。コンパクトなガントリは設置性も高く,コスト面などとあわせて小規模医療機関への導入しやすい,“アクセスしやすいCT”として臨床への貢献が期待される。

新開発の管球が搭載された128スライスのマルチスライスCT「Incisive CT」

新開発の管球が搭載された128スライスのマルチスライスCT「Incisive CT」

 

16スライスのマルチスライスCT「Access CT」はモニタで紹介

16スライスのマルチスライスCT「Access CT」はモニタで紹介

 

●2021

●AIを画像再構成とワークフロー改善に活用した新製品「Incisive CT Premium」
CTエリアでは,新製品の128スライスCT「Incisive CT Premium」とフラッグシップである「IQon Spectral CT」の最新情報を展示した。Incisive CT Premiumは,2019年に発売した「Incisive CT」にAIソリューション“Precise Suite”を実装した最新のCT装置で,4月7日から国内販売が開始された。“Tube for Life”をコンセプトに開発されたIncisive CTは,高耐久のX線管球“vMRC”や優れたワークフローが評価され,すでに世界で771台が導入されている。新製品のIncisive CT Premiumは,AI技術を画像再構成とワークフロー改善の両方に活用している点が特徴で,4つの新機能を搭載する。
AI画像再構成“Precise Image”は,ディープラーニングによるニューラルネットワークを画像再構成プロセスに採用し,最大80%の線量低減,最大85%のノイズ低減,最大60%の低コントラスト検出能の改善を実現。低線量撮影でもノイズを抑制しながら臓器の辺縁を明瞭に描出することができ,日常診療で利用可能な画像再構成スピードを有する。また,フィリップスのCTには従来から心拍変動に対応した後ろ向き心電図同期アルゴリズムが搭載されているが,Incisive CT Premiumではより高心拍の症例にも対応可能なAI心臓画像再構成“Precise Cardiac”が実装され,冠動脈CTのさらなる画質向上を可能にする。
ワークフローにおいては,AIカメラによる自動ポジショニング“Precise Position”が搭載された。天井にカメラを設置して患者の関節を認識することで,体位やセンタリングの状態を判断し,高い精度で一貫性のあるポジショニングを可能にする。従来のポジショニングと比べ,垂直方向精度の50%改善,オペレーター間のバラツキを70%改善,所要時間を23%短縮し,検査数の増加により収益向上にも貢献する。
AIを活用したインターベンションサポートツール“Precise Intervention”は,CT画像上で事前に穿刺プランを設定することで,穿刺角度のズレやターゲットまでの距離をリアルタイムに表示する。手技の時間短縮や安全性の向上,経験の浅い医師への教育などにおいて有用となる。
一方,2016年に国内発売された二層検出器搭載のIQon Spectral CTは,国内ユーザーからも多くの論文が発表され,臨床的価値が確立されていることをアピールした。展示では,IQon Spectral CTが,フィリップスがめざす「患者のより良い健康の実現」をはじめとする4つの目標を同時に実現するとして,それぞれの目標に合致したエビデンスを紹介した。仮想単色X線画像(MonoE)の低keV画像による悪性腫瘍の診断能向上や造影剤量の低減,Calcium Suppression画像による微小骨折の早期診断など,ユーザーからの報告を多数紹介した。

AIソリューション“Precise Suite”を実装した「Incisive CT Premium」

AIソリューション“Precise Suite”を実装した「Incisive CT Premium」

 

AIカメラによる自動ポジショニング“Precise Position”

AIカメラによる自動ポジショニング“Precise Position”

 

「IQon Spectral CT」が4つの目標を同時に実現することをエビデンスで紹介

「IQon Spectral CT」が4つの目標を同時に実現することをエビデンスで紹介

 

●2022

●全領域で超高速スペクトラル撮影が可能な「Spectral CT 7500」をITEM初披露
CTコーナーのトピックスは,2021年7月に国内で発売したSpectral CT 7500と64列128スライスCT Incisive CT Premiumである。Spectral CT 7500は2層検出器を搭載したスペクトラルCTで,循環器,救急,小児,高体重患者,オンコロジー,インターベンションなどのすべての領域で超高速スペクトラル検査を可能にする。2層検出器は,2016年発売の「IQon Spectral CT」から搭載され,Spectral CT 7500では新たに散乱線を低減するAnti-scatter gridを搭載したほか,2層構造の最適化による低被ばくや検出器幅の拡大による超高速撮影を実現した。また,ハードウエアも進化しており,秒間400mm以上の撮影が可能になったほか,寝台の耐荷重を307kg,ガントリ開口径を80cmとしたことで,あらゆる体型の患者や救急撮影に迅速に対応する。
Incisive CT Premiumは,2019年に国内で発売した128マルチスライスCT「Incisive CT」に,新たにAIをベースとした4つの新機能を持つ“Precise Suite”を搭載した。AI画像再構成機能“Precise Image”は,最大80%の線量低減や85%のノイズ低減,60%の低コントラスト検出性の改善を実現する。また,心臓専用のモーションフリー画像再構成機能“Precise Cardiac”やAIカメラを使用した自動ポジショニング機能“Precise Position”,自動ニードルガイダンスが搭載された先進インターベンションツール“Precise Intervention”により,画質や検査ワークフローを大幅に向上させる。なお,Precise CardiacはSpectral CT 7500にも搭載されている。

「Spectral CT 7500」の進化したハードウエア

「Spectral CT 7500」の進化したハードウエア

 

“Precise Suite”の一つである心臓画像再構成機能“Precise Cardiac”

“Precise Suite”の一つである心臓画像再構成機能“Precise Cardiac”

 

●2023

●超高速撮影とスぺクトラルイメージングを両立する「Spectral CT 7500」を実機展示
CT領域では,超高速撮影とスぺクトラルイメージングを同時に実現するフラッグシップCT「Spectral CT 7500」の実機展示と,64列/128スライスの「Incisive CT」の「CT Smart Workflow」を紹介した。Spectral CT 7500は,開口径が80cmに拡大し,検査寝台は従来の約1.4倍の体重に対応,幅広い体型の患者に対応する。加えて,同社製品では最も低い床上43cmまで下げることができ,車椅子患者の移動がスムーズに行える。また,体軸方向に8cmの二層検出器「NanoPanel Prism」を搭載,撮影後に自由にスぺクトラルイメージングを利用できる。従来のdual energy撮影と異なり,1回の撮影でスペクトラル画像が取得できることから,低被ばくと造影剤量の低減が実現する。さらに,従来の140kVp/120kVpに加え,新たに100kVpでのスペクトラルイメージングにも対応したことで,小児検査でのスペクトラルイメージングも可能になった。ブースでは,新生児へのスペクトラルイメージング撮影例や,わずかな造影剤でTAVI術前検査において,アクセスルート用の広範囲な撮影を行った症例などが紹介された。

超高速撮影とスぺクトラルイメージングを同時に実現する「Spectral CT 7500」

超高速撮影とスぺクトラルイメージングを同時に実現する「Spectral CT 7500」

 

「Spectral CT 7500」が提供する価値

「Spectral CT 7500」が提供する価値

 

64列/128スライスのIncisive CTは,AIを活用したCT Smart Workflowにより,検査準備から診断,インターベンションに至る幅広い領域を効率化し,ワークフローを大きく改善した。AIアルゴリズムを用いた「Precise Image」や心臓専用モーションフリー画像再構成機能「Precise Cardiac」,インターベンションサポート機能「Precise Intervention」,AIカメラによる位置決め機能「Precise Position」などが搭載され,このうちPrecise Imageは,最大80%の線量低減,最大85%のノイズ低減,最大60%の低コントラスト検出能の改善を同時に実現する。ブースでは,Precise Imageを用いた脳梗塞症例が供覧されたほか,操作室を再現したVirtual gantryコーナーでは,AIカメラを用いたPrecise Positionのデモンストレーションが行われた。

AIカメラによる位置決め機能「Precise Position」

AIカメラによる位置決め機能「Precise Position」

 

●2024

●心臓AI技術を搭載したプレミアムモデル「CT 5300」が登場
CTは,4月に発売したばかりのCT 5300の実機を国内初展示した。64列128スライス,0.35秒/回転のスペックを有するハードウエアと先進のAI技術を組み合わせることで,フラッグシップクラスの心臓CT検査を可能にする。撮影者の技量や患者(高心拍・不整脈)に依存せず高画質・低線量な検査が可能なほか,シームレスで円滑なワークフロー,長期にわたる経済的メリットが特長で,心不全パンデミックにより高まる心臓CTのニーズに応える装置だ。
CT 5300には新型高効率検出器「NanoPanel Precise Detector」を搭載するとともに,AI画像再構成「Precise Image」と心臓専用のモーションフリー画像再構成機能「Precise Cardiac」を実装。ハード・ソフトの両面から心臓CTの画質向上を図り,冠動脈のブレがない画像を従来の1/5程度の線量で取得できる。Precise Imageにより,心臓だけでなく全身領域の画質向上を実現しており,頭部においてはMRIライクな画像を得られることもアピールした。さらに,自動的に肋骨を展開した画像を作成する「Precise Rib」やヘリカル撮影画像からOMラインに沿った画像を自動作成する「Precise Brain」,椎体に沿ったMPRを作成して椎骨の自動ラベリングを行う「Precise Spine」などのアドバンスツールも利用できる。
また,AIカメラにより13箇所の身体的特徴から被検者の向きや部位を自動認識し,ポジショニングを支援する機能も搭載する。検査担当者はガントリに備えられたタッチパネルで患者の体位・撮影部位を確認してボタンをタップするだけで,寝台の高さも含めて患者を適切な撮影位置にセットアップできる。マニュアルでの操作を少なくすることで,技師の技量によるバラツキを低減し,ワークフローを改善する。

心臓AI技術やAIカメラを備えたプレミアムモデル「CT 5300」

心臓AI技術やAIカメラを備えたプレミアムモデル「CT 5300」

 

低線量でブレのない心臓CT検査を実現

低線量でブレのない心臓CT検査を実現

 

頭部においてはMRIライクな画像を取得可能(右端はMRI FRAIR画像)

頭部においてはMRIライクな画像を取得可能(右端はMRI FRAIR画像)

 

自動認識された患者の体位・撮影部位を確認するだけでセットアップが完了

自動認識された患者の体位・撮影部位を確認するだけでセットアップが完了

 

また,CT 5300には,放射線科の働き方改革を支援するツールとして遠隔コミュニケーションツール「CT Collaboration Live」が搭載された。検査室と検査室外(院内外)をつなぎ,会話やチャットに加え,コンソール画面の遠隔操作(曝射,寝台操作以外)をすることができ,撮影を担当する技師は検査室外にいる医師や技師と相談しながら検査を行うことができる。遠隔地と画面共有すると患者情報は匿名化され,外からは個人情報を閲覧することはできないように配慮されている。

会話やチャット,遠隔操作で検査室外から検査を支援する「CT Collaboration Live」

会話やチャット,遠隔操作で検査室外から検査を支援する「CT Collaboration Live」

 

さらに,長期的な安定稼働をサポートし,医療課題の一つであるコスト増加に対応する。CTの平均稼働年数が10年を超えるようになっていることから,CT 5300には高耐久のX線管球を搭載するほか,「Tube for Life」プログラムにより,費用負担なしでの管球交換を10年間保証する(保守契約が必要)。また,長期にわたってソフトウエアのアップグレードを提供し,常に最新の状態を保つことができる「Technology Maximizer」プログラムも提供する。

 

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