技術解説(GEヘルスケア・ジャパン)
2024年5月号
US Today 2024
「Vivid E95 Ultra Edition」の最新技術
藤田 陽加[GEヘルスケア・ジャパン(株)超音波本部]
近年,高齢化などの影響により心不全患者が増加し,「心不全パンデミック」と言われる状態が進行している。その中で心エコー図検査も増加しているにもかかわらず,計測項目が複雑多様化し検査時間を圧迫している。しかし,検査時間と検査者の人数は従来どおりで実施しているというのがほとんどの病院の実態ではないだろうか。本稿では,心エコー図検査の課題である「検査時間の短縮」や「検者間誤差の低減」「患者の体格による検査精度のバラツキ低減」に寄与する「Vivid E95 Ultra Edition(以下,Vivid E95)」について紹介する。
■天体望遠鏡から着想を得た「cSound ADAPT」
従来より「cSound」と呼ばれるソフトウエア・ビームフォーマーにより,すべてのピクセルにフォーカスされた画像が提供されていた。しかし,スキャンが非常に困難な患者の場合には最適な画質を得ることができないことがあり,検査時間の延長やプローブ圧の増加による患者の不快感など,画質の低下は多くの潜在的な影響を及ぼす。その画質の低下の原因のうちの一つが,超音波診断装置でよく使われている「音はすべての人体組織内を同じ速度で伝播する」という仮定にある。胸壁は肋骨や脂肪組織などさまざまな組織からなり,それらの音の伝播速度は異なることを考えると,プローブに達するエコーの波面は想定される球面状ではなく歪んだ波面になる。Vivid E95に搭載されたcSound ADAPT(図1)は,この波面の歪みを連続的に推定し補正することで,さらなる高画質化を実現した。画質の向上は検査時間の短縮や,検者や患者の負担を軽減できる可能性がある。
■検者間誤差,検査時間短縮のための自動計測
Vividシリーズでは,すべてのラインアップに自動計測が搭載されている。ルーチンで測定するTeichholz法のejection fraction(EF)計測では傍胸骨左縁像を描出し,ワンクリックで拡張末期と収縮末期に時相を分割し,それぞれの部位を自動認識し計測することで瞬時にEFを算出する(図2)。ドプラ計測では波形を描出して計測ボタンを押すだけで,波形から検査者が何を計測したいかを判断し結果を算出する(図3)。現在,ガイドラインでは不整脈の場合,連続10心拍の平均が推奨されているが,マニュアルでの計測の実施は困難である。しかし,Vividの自動計測では最大15心拍までの平均値を1秒足らずで計測が可能である。心房細動でもストレスなく計測することができる。
■GLSとEFをワンクリックで同時解析
従来の心機能解析に加え,抗がん剤治療関連心筋障害の診療などでglobal longitudinal strain(GLS)の測定がガイドラインにも記載され,時間や経験が必要になる解析が要望されてきた。Vividシリーズは「Easy AFI」機能をリリースし,ワンクリックで保存された画像から適切な3断面を選択し,解析を行うことを可能にした。同時に,MOD法より算出されたEF計測も実施するため,検査時間を増加させることなく臨床ニーズに対応することが期待できる(図4)。
このように,Vivid E95ではcSound ADAPTによる高画質化と再現性と効率性の高い自動計測により,日常検査においてより快適なものを提供することに貢献するであろうと期待している。
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