技術解説(GEヘルスケア・ジャパン)
2022年3月号
腹部画像診断におけるMRIの技術の到達点
“AIR IQ Edition”がもたらす腹部領域のクリニカルベネフィット
井下 裕行[GEヘルスケア・ジャパン(株)MR営業推進部]
GE社製MR装置のプラットフォームである“SIGNA Works”の最新バージョン “AIR IQ Edition”は,患者快適性,画質,検査効率といったMR検査体験にかかわるさまざまな要素を高めるために,数多くの最新技術を実装している。近年,装置性能の向上により,あらゆる部位・いかなる検査状況であっても,アーチファクトを抑えつつ,さらなる高画質と短時間化を求められる時代となった。本稿では,それらのニーズを満たすべくリリースされたAIR IQ Editionによる腹部領域へのアプローチについて紹介する。
■ハードウエアとソフトウエアの両面からアプローチする動きへの対策
呼吸の影響をコントロールする必要がある腹部領域において,良好な息止めや安定した呼吸同期を得るためには,コイル重量による患者負担の軽減や,ボア内での検査快適性向上が重要なポイントとなる。これらに対してはハードウエアにおける対策が有効であり,従来の受信RFコイルと比較して,1素子あたり76%の軽量化(自社比較)を実現した「AIR Anterior Array coil(AIR AA coil)」にて,圧倒的な軽さという特長でアプローチする。さらに,軽さだけでなく高い柔軟性も兼ね備えるため,さまざまな患者の体形に合わせて密着性の高いコイルセッティングが可能となることで,深部方向の高いSNRやパラレルイメージングにおける低いg-factorによる恩恵を得やすいことも特筆すべき点である(図1)。
撮像条件の最適化やシーケンス選択における動きへの対策としては,広い受信バンド幅を用いることによるサンプリング時間の短縮,single-shot fast spin-echo(以下,SSFSE)法の活用などが従来から考えられてきたが,両アプローチともにSNRの低下などが問題となる。近年,ディープラーニングを用いた画像再構成アルゴリズムである“AIR Recon DL”の臨床適用が始まっており,腹部領域においてもその高い効果を発揮している。AIR Recon DLの特長として,SNRと画像尖鋭度の向上,トランケーションアーチファクトの低減が挙げられるが,先ほどのSSFSEにAIR Recon DLを用いることで,動きに強いT2強調画像を高画質かつ短時間で得ることが可能となり,疾患や患者状況によってはFSEではなくSSFSEが積極的に活用されるケースも増えつつある(図2 a,b)。また,stack-of-stars(以下,SOS)と呼ばれる特殊なk空間充填法を用いる“LAVA Star”(単相撮像)や“DISCO Star”(多相撮像)も,腹部領域の動きに対して有用なシーケンスである。SOSは,k空間のkx-ky平面をラジアル収集し,kz方向はカーテシアン収集を行うハイブリッド方式のデータサンプリング法である。LAVA StarとDISCO Starは,自由呼吸下であっても動きの影響を抑えた腹部画像を得ることができ,特に造影剤使用時の息止め不良症例で高い効果を発揮する(図2 c,d)。
■1.5TにおけるPI-RADSに準拠した前立腺イメージング
前立腺マルチパラメトリックMRIの撮像条件や読影方法の標準化を目的として,Prostate Imaging and Reporting and Data System(以下,PI-RADS)が提唱されている。しかし,その内容に準拠した撮像は,限られた検査時間の中で十分なSNRを担保することが難しく,1.5T装置と比較して高SNRを有する3.0T装置であったとしても,自施設の検査プロトコールへ組み込むことは容易ではない。AIR Recon DLを用いることで,1.5T装置であって
も,リーズナブルな時間でPI-RADSに準拠した高画質のT2強調画像や拡散強調画像を得ることが可能となる(図3)。AIR Recon DLの登場により,撮像条件の制限が大きく緩和され,磁場強度の概念を超えたMR検査の実施が実現可能となる。
シグナVoyager
医療機器認証番号:228ACBZX00009000
AIRコイル1.5T
医療機器認証番号:301ACBZX00001000
【問い合わせ先】
GEヘルスケア・ジャパン(株)MR営業推進部
TEL 0120-202-021
URL https://www.gehealthcare.co.jp/about/inquiry