技術解説(GEヘルスケア・ジャパン)
2017年4月号
Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点
心臓領域におけるIVRサポート─“ASSIST”機能
山田 晃寛(Radiology推進本部I&S営業推進部)
X線血管撮影装置(以下,アンギオ装置)による心臓領域での治療は,周辺機器を含めた進化が顕著である。治療成績の向上はもちろんのこと,従来では困難であった症例へのアプローチも進んでおり,治療対象の拡充が見受けられる。そのため,治療時間の長時間化と手技テクニックの複雑さが増し,装置にさらなるサポートアプリケーションが求められている。本稿では,フラットパネルディテクタ(以下,FPD)本体の機能向上,経皮的冠動脈形成術(以下,PCI),そして大動脈弁植え込み術(trans catheter aortic valve implantation:TAVI)手技をサポートする“ASSIST”機能を紹介する。
■Innova/Discovery IGS ASSIST
アンギオ装置において,画像信号の源となるFPDの性能は最重要ファクタの1つである。弊社は,当初からアンギオ装置用に特化したFPDを自社開発し,“Multi Line A/D Converter”(図1)などの弊社独自のさまざまな機構を装備し,すでに多くの特許を取得している。2016年より,新世代FPDを搭載した製品をリリースした。なかでも,低線量域のdetective quantum efficiency(DQE)は,80%(30cmFPDにおいて)と従来装置の追従を許さない高スペックになり,従来以上の高画質化,ならびに低被ばく化が期待できる。
さらに,このFPD性能を生かすために“High Contrast Fluoroモード”の搭載とイメージプロセッシングの一新を行った。High Contrast Fluoroモードは,透視下での電流制御を変化させることにより,体厚の厚い患者での透視下の視認性を向上させる。従来では透視下で確認不能であった場合に撮影をしていたケースを,透視で補うことができる。イメージプロセッシングは,エッジ,コントラスト,ノイズ処理の項目を見直している(図2)。これにより,前シリーズとのバックグラウンドノイズを考慮したコントラストの比較では,85%の画質改善を達成しつつ,21%の被ばく低減を両立した。
■Dose Map
前述のとおり,インターベンション手技自体がより複雑化することにより,長時間に及ぶケースも少なくない。患者および術者の被ばく管理の重要度が増している背景の中,“Dose Map”は患者皮膚被ばく障害への警鐘を目的として開発され,「Innova IGS ASSIST」シリーズのシングルプレーン装置に搭載されている。
Dose Mapとは,患者を模したシリンダマップ上に,術中のCアーム角度や視野に応じた照射野,線量分布,hot spotをグレイスケール表示できる(図3)。このシリンダーマップは,手技スタート時点で入力,もしくはRISから受け取った患者の身長,体重,年齢に基づいたBMI値から決定され,テーブル先端から患者頭頂までの距離も反映される。また,胸腹部や四肢などへの対応を考慮したsingle modelのほかに,頭部での使用を考慮したdual modelも装備する。各線量値は,1cm2単位でpatient entrance reference pointの線量値から算出されるが,テーブルおよびテーブルマットによるX線減衰や患者からの散乱線も考慮されている。「Gafchromic XR-RV3 films」(Ashland社製)を用いた検証実験によれば,おおむね24.9%以内の誤差での線量値であったことが報告されている。
Dose Mapでは,装置の設定状態(Cアーム角度,透視・撮影条件,テーブル位置,コリメータ位置など)に応じた照射野をリアルタイムに表示でき,X線を照射しなくてもhot spotを回避したworking angleや寝台位置の検討を可能としている。これにより,インターベンション手技中にhot spotを簡単に回避し,皮膚障害を最低限にとどめることが可能である。
Dose Mapは,必要に応じてテーブルサイドのボタンを一押しで表示可能である。また,施設ごとの治療方針などに応じて,各線量閾値を2段階,もしくは3段階に設定可能である。インターベンションにおいて,複雑困難な手技になればなるほど,術者はとかく手技に集中し,仮に別モニタなどにDose Mapに相当する画面を常時表示していても,術者はおのずとモニタを注視しなくなってしまうケースも少なくない。しかし,Dose Mapでは,施設ごとに設定した線量閾値(3段階であれば,それぞれ,第1,第2,第3閾値)に到達すると,透視を止めた瞬間にリファレンスモニタに自動ポップアップ表示されるため,術者の手技を妨げることなく術者に自然な形で注意喚起することが可能となる。再び透視フットスイッチを踏んだ瞬間にDose Map画面は自動的に消えるが,必要に応じていつでも再表示することができる。
手技終了後は,Dose MapがDICOM画像として自動的に生成され,同患者データの最後に画像として記録される。前回の手技における画像確認とともに,hot spotの位置,ならびに推定線量値の双方を確認することで,次回以降,より安全な手技の遂行につながるものと確信している。
■PCI ASSIST
“StentViz”“StentVesselViz”
PCIにおいて,近年のデバイスの進化によりステント視認性の低下が問題となっている。そのような背景の中で開発されたStentVizは,ステントの視認性を向上させるアプリケーションである。
画像処理プロセスにおいては,マーカーおよびワイヤ群の動きを相互解析することでワイヤの基準位置を決定し,各フレームにおいてワイヤが基準位置に移動するように調整を行う。次に,基準位置におけるワイヤ上でそれぞれのマーカー位置が一致するように,画像の伸縮や平行移動・回転などの細かな補正を行い,結果的にステントがあたかも静止したような状況を作り出すことができ,各フレームにおけるステント以外の背景信号が平均化されることで,通常のDA撮影では決して得られないレベルでステントを強調できる。さらに,血管走行に合わせて画面を2分割し,ワイヤをサブトラクションした画像と平行表示することで,双方を比較しながらワイヤに隠れたステント構造も把握可能となる(図4)。
加えて,StentVizにより得られた良好なステント強調画像に,血管画像を自動フュージョンできるStentVesselVizは,ステントと血管の位置関係について詳細な観察を可能にしている(図5)。
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■Valve ASSIST
TAVIをはじめとするハイブリット手術では,術前CT画像によるプランニングと3Dロードマップといった術中サポートが重要である。このワークフローを1つにまとめたのが,“Valve ASSIST”である。プランニングでは,ワークステーション上で大動脈弁輪位置をマルチオブリークviewで定めると,working angleが自動計算され表示される。また,アクセスルートの確認では,大動脈血管解析をワークステーションが自動で行い,lumen viewによる確認ならびに計測を容易にしている(図6)。また,血管の石灰化を自動抽出する機能を有しており,血管とは別ボリュームとして認識している。
術中サポートである3Dロードマップ機能は,3Dデータを透視画像とフュージョン表示することができる。弁輪位置や自動抽出した石灰化情報を付加して表示することで,プランニングに沿った手技をサポートする。また,透視画像において,石灰化やデバイスのみを強調する“Calcium Enhance”機能を追加することで,リアルタイムな視認性も向上している(図7)。
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本稿では,心臓領域IVRにおけるアプリケーションを紹介した。GEでは,より安全なIVR施行へのサポートをこれからもめざす。
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