GE Healthcare Japan Edison Seminar 2021

2022年1月号

GE Healthcare Japan Edison Seminar 2021 Series 2

【癌】乳癌の画像診断について Intelligently Efficientを考える

久保田一徳(獨協医科大学埼玉医療センター 放射線科)

久保田一徳(獨協医科大学埼玉医療センター 放射線科)

乳がん診療における画像診断の役割は,存在診断,鑑別診断,生検などのガイドツール,広がり診断,効果判定,進行度判定などがあり,用途や対象,検査を行う時期,モダリティの選択を考慮する必要がある。また,従来のモダリティに加え,新たなイメージング技術の開発も進められている。本講演ではこれらを踏まえ,乳がんの画像診断におけるintelligently efficientについて考察する。

乳がん画像診断に求められる役割

乳がん診療においてはサブタイプが非常に重視されている。画像でもある程度の予測が可能であり,得られた画像所見を進行例の治療に応用することができる。一方,日常の診療においては,がんをより早期に発見し,治療に結びつけることが求められている。また,日本の乳がん患者数の推移を見ると,高齢者の罹患数が増加していることから,今後は若年〜40歳代まではもとより,高齢者やハイリスク群の乳がんを効率的かつ確実に検出していく必要がある。そのためには,治療の必要な乳がんの検出や,検診受診率の向上が求められる。
検診では,利益と不利益のバランスが重要である。不利益には,X線被ばくや造影剤の副作用,過剰診断,費用や時間的な負担などがある。また,乳がんの画像診断には,高濃度乳房(デンスブレスト)や術者依存などの課題があるため,乳がんの確実な検出にはマルチモダリティイメージングが有用と考える。
以上を踏まえ,これからの乳がん検出においては,リスク層別化,デンスブレスト対策,過剰診断への理解,受診者の意向を大切にすることが必要である。

診断方法について

乳がん画像診断のガイドラインであるAmerican College of Radiology (ACR)のBI-RADSは,マンモグラフィ,超音波,MRIに対するカテゴリー分類や標準化された読影用語での診断を目的としている。日本でも,カテゴリー分類を用いた診断を行うことで検診施設および精査施設における診断精度の向上をめざすとともに,乳がんのマネジメントにつなげていくことが求められている。

リスクと画像診断を考える

乳房MRIはマンモグラフィや超音波と比較し,ハイリスク群(特にBRCA1/2変異保因者)における乳がん検出感度が高く,生存率も向上することなどが報告されている。そのため,欧米では,デンスブレストに対してMRIやトモシンセシスの併用が検討されている。また,近年提唱されているAbbreviated Breast MRIは,造影前および造影早期相のみを短時間で撮像し,読影する手法である。病変検出能はフルスタディのMRIと遜色なく,トモシンセシスよりも良好であることが報告されている。さらに,欧米では近年,通常リスク群にMRIを用いた検討も行われている。通常リスク例に対する撮像法として新たに登場したUltrafast Breast MRI1)は,超早期相の短時間での繰り返し撮像によって,背景乳腺が低減された画像や早期の血流情報(washin)が観察できるほか,撮像時間を短縮できるというメリットがある。
図1は,右乳がん部分切除後の症例で,造影早期相にて左乳頭下に微小な病変を認める(a)。乳頭腫との鑑別が困難だが,Ultrafast Breast MRIの超早期相にて濃染を認め(図1 b),多血性の腫瘍と考えられた。病理診断の結果,浸潤性乳管癌であった。
このように,MRIは非常に有用であるが,ガドリニウム造影剤の副作用や,偽陽性が多いなどの課題もある。そこで,今後期待する技術の一つに造影マンモグラフィがある。造影剤投与後,高エネルギーと低エネルギーの乳房撮影をほぼ同時に行い差分画像を作成することで,背景乳腺の信号を抑制できるため,MRIと同等の乳がん診断能が得られると期待されている(図2)。

図1 Ultrafast Breast MRIの自験例

図1 Ultrafast Breast MRIの自験例

 

図2 造影マンモグラフィ画像

図2 造影マンモグラフィ画像

 

まとめ

乳がん診療においては,対象となる疾患や,患者・受診者についてよく理解した上で適切な検査を選択するとともに,ガイドラインや最新の動向も踏まえ,受診者が安心して受けられる検査を提供することが求められる。

●参考文献
1)Mann, R.M., et al., Current Breast Cancer Reports, 11(1) : 9-16, 2019.

 

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