GE Healthcare Japan Edison Seminar 2021
2022年1月号
GE Healthcare Japan Edison Seminar 2021 Series 2
【脳・脳血管内治療】脳神経IVR領域における血管撮影装置の使用上の工夫
キッティポン・スィーワッタナクン(東海大学医学部 外科学系脳神経外科領域 講師)
当院は,GE社の血管撮影装置「Innova IGS 630」とワークステーション(WS)「Advantage Workstation」3台を2013年に導入した。血管撮影装置で得られる画像は2Dと回転撮影のみであるが,WSを活用することで応用が広がる。本講演では,WSの機能を生かしたわれわれの工夫を紹介する。
WSによるmerge表示
基本的なmerge(融合)操作としては,同じ回転撮影情報から血管を別々のパーツとして色分け表示するものがある。単純な操作であるが,例えば脳動脈瘤塞栓後の評価で,母血管へのコイルの逸脱を見る場合に血管を半透明にするなど,目的によってVR設定を工夫することで臨床に有用な画像となる。また,同一患者で検査日(位置情報)が異なる画像の融合に,3D DSAのマスク画像で得られる骨の情報を活用している。検査日が異なると血管情報だけでは位置合わせできないが,骨の情報をリファレンスにすることで血管の位置も合いやすくなる。
Non-SCによる治療支援
われわれはこの手法を進化させ,“non-subtracted/non-contrast technique”(Non-SC)を考案した。これは,治療時には非造影の1回転撮影でマスク画像だけを取得し,骨の情報だけで事前検査の血管情報と位置合わせをするものである。複雑なシャント疾患では,治療時に造影撮影を複数回行うこともあるが,Non-SCを用いることで,事前に取得した多様な情報を融合表示でき,治療の進行の理解を深められると同時に,造影剤量と被ばくの低減にもつながる。また,リアルタイムではないが,治療中に回転撮影を行うことでカテーテルの挿入状態を確認でき,治療の精度向上にもつながる。
これを応用し,海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻の治療時の血管画像に過去の対側の血管画像を融合表示すれば,さまざまな系統のfeederを確認でき,シャントポイントを特定しやすい。また,アクセスルートとなる下錐体静脈洞が治療時に閉塞していても,閉塞前の過去画像と融合することで確信をもって手技を行える(図1)。さらに,治療中は各段階でカテーテルとコイルの情報だけを得る低線量の回転撮影を行い,Non-SCで確認することで現在地を把握でき,少量のコイル留置で正確にシャントを遮断できる。Non-SCは一般的な脳動脈瘤にも有用で,WSではマイクロカテーテルのre-shapingも迅速に計算できるため,治療時間の短縮につながる1)。
さらに高度な応用として,脳動静脈奇形(AVM)に対して液体塞栓物質(NBCA)を数回に分けて塞栓した症例では,塞栓ごとに回転撮影を行ってサブトラクションし,NBCAの情報を色分けして融合することで,1回分の塞栓分布と,次にアプローチする血管の把握に役立てることができる。
微小血管の描出
脳神経血管領域では,合併症回避のために微小血管こそが重要である。Advantage Workstationには穿通枝を描出可能なVRモードがあり,クリッピングで回避すべき重要な穿通枝を把握できる。さらに,任意の血管を抽出するAdd Vessel機能で重要な穿通枝を抽出して色づけし,別モードのVRと融合すれば穿通枝を強調表示することができる。
Embo Assist
新アプリケーション“Embo Assist”では,任意の血管にカーソルを合わせてlive trackingボタンを押すと,連続性のある血管が瞬時に表示される。これを繰り返してそれぞれ色分けすることで立体構造の把握に役立つ。また,シャント系疾患の治療シミュレーションにも活用でき,複数の仮性動脈瘤を認める出血発症のAVM症例では,Embo Assistで治療対象となる仮性動脈瘤にカーソルを合わせると,ルートを検索してカラーで表示する。実際にマイクロカテーテルを挿入して造影した画像と同様のルートを示していることが確認された(図2)。当院の経験からは80%以上の精度があると見られ,手動で修正もできる。また,3Dロードマップとしても利用でき,ターゲットへの迅速な到達を支援する。
まとめ
WSのアプリケーションは容易にアップデートでき,最新機能を使用することができる。術者の工夫次第で応用の可能性は無限に広がるだろう。
●参考文献
1)Hirayama, A., Srivatanakul, K., et al. : JNET, 15(11): 755-761, 2021.
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