GE Healthcare Japan Edison Seminar 2021

2021年12月号

GE Healthcare Japan Edison Seminar 2021 Series 1

【パネルディスカッション】Intelligently Efficient 〜より良いケアを,より効率的に

パネルディスカッション

パネリスト
小松本 悟 足利赤十字病院 名誉院長
富山 憲幸 大阪大学大学院 医学系研究科 放射線統合医学講座 放射線医学教室 教授
増井 孝之 社会福祉法人聖隷福祉事業団 総合病院聖隷浜松病院 副院長・PETセンター長・医療情報センター長
多田荘一郎 GEヘルスケア・ジャパン株式会社 代表取締役社長 兼 CEO
モデレータ
松葉 香子 GEヘルスケア・ジャパン株式会社 執行役員・アカデミック本部長 兼 エジソン・ソリューション本部長

 

パネルディスカッションでは,「Intelligently Efficient 〜より良いケアを,より効率的に」をテーマに,4名のパネリストが意見を述べ合った。

質問(1):ご所属施設における「良いケア」とは何か? その中での効率性とは? それらを両立しようとするときの課題,課題解決案など。

小松本:良いケアと効率性を両立するためには,リーダーの役割が重要である。リーダーシップとは,投入した資源よりも大きなものを生み出す生産体をつくること,あらゆる決定と行動において今必要なものと将来必要なものを調和させることである。また,リーダーシップには,(1) 「よりどころ」としての「組織のドメイン」をつくること,(2) 「語り続ける」こと,(3) 必ずポジティブな方向を向き,後ろは絶対に振り返らないこと,(4) 旗を振り続けること,という定石がある。これを基に「場」をマネジメントするために,リーダーはストーリーとシナリオを考えなければならない。偉大なリーダーは“The best story-teller”であるべきである。そして,リーダーに必要な資質は,逃げずに後ろを振り向かない強い意志,行動に移せる決断力,勇気を持って挑む実行力,そして迅速性だと言える。

富山:日本医学放射線学会は,1950(昭和25)年に設立された。放射線科医数は右肩上がりに増加し,過去30年間で2倍となり,1万人を超えている。一方で,放射線科医の業務量は近年急激に増えている。これはCTやMRIの台数が増え,検査件数が伸びていること,またこれらの画像診断装置の高分解能化・高速化が進み,1検査あたりの発生画像数が増加していることが要因である。この課題を解決し,良いケアを実践して効率性との両立を図るためには,「遠隔」と「人工知能(AI)」がキーワードになると考える。

増井:当院では,国際的医療機能評価機関(JCI)の認証などの外部基準により,医療の質・安全を確保してきた。そして,病院安全管理委員会・安全管理室のリーダーシップの下,安全文化を醸成しており,各診療科が高い専門性をもって良好に連携している。さらに,医療事故情報を基に,「何がミスの原因か」という視点で,組織の問題として改善活動を行い,医療の質向上に取り組んでいる。その活動の一環として,読影レポートの見落とし防止対策を行った。これは,予期しない所見や偶発所見があった場合に,読影レポート上に“R”を付与し,具体的にとるべき対応までも示唆する。さらに,電子カルテと連携させて,依頼医,診療科部長,安全管理室と共有する。このような情報共有により,見落とし防止と対応を促し,質の高い診療につながっている。

多田:私はベンチャー企業で長く経験を積んできた。その時の経験が質の向上や効率化にも生かされていると感じている。

質問(2):画像診断領域におけるICT・IoT/AIの活用について具体的な取り組みは?

増井:画像診断は,速さ,画質,新しい情報,安全性・快適性のための技術進歩により発展してきた。MRIならば,日常診療で患者から有用な情報を得るために,高速撮像と高画質の両立が求められる。最近ではディープラーニングを用いたデータ収集および画像再構成技術がブレークスルーとなり,検査時間短縮が実現している。GE社の“AIR Recon DL”は,高画質を維持したまま従来の半分以下の時間で検査が可能である。スループットの向上により病院経営への寄与も期待され,積極的に活用したいと考えている。

富山:放射線医学のAIは,画像診断装置への応用と,病変の検出・診断(読影)への応用が進んでいる。画像診断装置への応用として,GE社のCTには画像再構成技術“TrueFidelity 2.0”やポジショニングを自動化する“DLカメラ Smart Workflow”が搭載されている。近年は,“Radiologists with AI”という言葉が生まれており,放射線科医とAIは,シャーロックホームズとワトソンのような関係だと言える。将来的にはAIを用いる放射線科医と用いない放射線科医に分かれるだろう。また,AIをマネジメントの観点から考えてみる。放射線科医のキーカスタマーは,患者と依頼医である。そして,キーカスタマーは正確な診断を放射線科医に求めている。それに対して放射線科医は責任がある。一方で,AIは責任がとれるだろうか。責任をとるには,患者が納得できることが重要である。患者の納得を得るには賠償すること,間違えた理由を説明すること,間違いを繰り返さないように対策すること,そして「謝罪をする」ことが大切である。これらのことから,AIが放射線科医に代わるのは難しいだろう。

多田:放射線科医は,目と手を酷使する仕事であり,入力作業を減らすなどの負担軽減技術が重要だと考えている。また,AIにはない人間の強みを生かした技術の開発にも取り組んでいきたい。

小松本:当院は2011年に新築移転した。移転前は病床稼働率が80%台であったが,移転後ICTをはじめ院内の環境整備を行ったことで,100%を維持するようになった。その結果,地域からのさらなる信頼を得るようになった。病院経営のマネージメントの観点からは,ICTやAIを活用することで患者に付加価値を与えるという視点が重要である。職員全員が患者志向のマインドを持つことで,病院経営にも良い影響が出るはずだ。

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