技術解説(富士フイルム)

2017年11月号

FPDの進化とDigital Radiographyの新次元

富士フイルムの進化するイメージソリューション

網本 直也(富士フイルムメディカル(株)営業本部MS部)

■ダイナミック処理

富士フイルムは,被写体全域の描出,コントラスト,粒状性の,相反する性能を克服する画像処理をめざし,長年,技術開発を進めてきた。
2016年に発売を開始したダイナミック処理“Dynamic VisualizationⅡ”は,人体を透過した二次元のX線情報から,人体の厚みに関する情報を解析することで,厚さが異なる人体構造全体を安定的に描出する画像処理技術である。また,粒状改善処理(ノイズ低減処理)との組み合わせで,高いコントラストと低ノイズを両立し,微細構造の良好な視認性を有する画像を提供する。
本稿では,この視認性に関する物理評価実験の結果を紹介する。

■物理指標による定量評価

ダイナミック処理を適用した画像の信号検出能を,オリジナル撮影画像および従来処理画像の信号検出能と比較する。信号検出能は,Artinis Medical Systems社製「CDRAD2.0ファントム」と同社解析ソフトウエアV2.1を用いて自動算出した。CDRADは,図1に示すように,アクリル上にある格子内の中心と四隅のうち1か所に穴が空いており,一組の穴の直径と深さは格子ごとに異なる。そして,各処理を適用した画像に同社解析ソフトウエアを適用することで,視認限界を示すcontrast detail curve(CD曲線)と画質定量指標であるIQFinvが算出される。IQFinvは,コントラストや粒状性を含む総合画質を定量化した指標であり,IQFinvが高いほど画質が良く,小サイズの低コントラスト信号を描出できていることを意味する。
本実験では,腰椎撮影を想定し,図2に示すように,厚さ1cmのCDRADファントムに対して,厚さ10cmのアクリル板を前後に挟んだ被写体を80kVの管電圧で撮影した画像を用いた。図3は,撮影線量と相対IQFinvとの関係を示している。相対IQFinvは,10mAsで撮影した画像処理がかかっていないオリジナル画像のIQFinvが1となるように正規化した値である。
図3より,従来処理画像と,従来処理においてラチチュード(L値)の調整でコントラストを1.3倍強調した画像では,IQFinvはオリジナル画像とほぼ変化がないのに対して,ダイナミック処理画像では,どの撮影線量においてもオリジナル画像よりも1.5倍程度高いIQFinvを示していることがわかる。このように,ダイナミック処理では,単純なコントラスト強調では得られない信号検出能,すなわち高いコントラストでありながら粒状性が良い画質を実現している。これは,主に粒状改善処理の寄与が大きいと考えられるが,コントラストと粒状性の相反する性能の克服を追求してきた結果と言える。

図1 CDRADファントム

図1 CDRADファントム

図2 CDRADファントムによるレイアウト

図2 CDRADファントムによるレイアウト

   
図3 相対IQFinvの自動算出結果 管電圧 80kV,SID 100cm,n=10平均,従来処理/ダイナミック処理:腰椎正面の標準パラメータ

図3 相対IQFinvの自動算出結果
管電圧 80kV,SID 100cm,n=10平均,従来処理/ダイナミック処理:腰椎正面の標準パラメータ

 

 

■臨床画像への適用例

図4に,ダイナミック処理を適用した臨床画像例を示す。コントラスト強調した従来処理画像(図4 b)に対し,ダイナミック処理画像(図4 c)では,粒状性がほとんど悪化せず,高いコントラスト感の画像になっていることがわかる。

図4 ダイナミック処理による高いコントラストと低ノイズの両立

図4 ダイナミック処理による高いコントラストと低ノイズの両立

 

2016年に発売を開始したダイナミック処理の画質向上に関して,物理評価実験の結果を紹介した。粒状改善処理との組み合わせによって,単純なコントラスト強調では得られない信号検出能の向上が検証された。本処理が広く利用され,診断画質の向上に貢献することを期待する。

* 規格化処理とマルチ周波数処理で構成される。

 

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