技術解説(富士フイルムメディカル)

2022年4月号

腹部画像診断におけるCTの技術の到達点

「Supria Optica」における腹部領域撮影の技術

平松 万明[富士フイルムヘルスケア(株)放射線診断事業部事業推進本部プロダクトマーケティング部第三グループ]

「Supria Optica」は,人工知能(AI)技術を活用した画像処理技術とワークフローで,より高度なレベルでの診断をサポートすべく開発された64列タイプのX線CT装置である(図1)。Supria Opticaでは,ワークフロー向上ソリューションである“SynergyDrive”*1によりCT撮影時手順の流れを細分化することで,検査時間を大幅に削減した。本稿では,Supria Opticaの技術解説や腹部領域での撮影例を紹介するとともに,経済性や設置性に関しても解説する。

図1 Supria Optica

図1 Supria Optica

 

■IPV

Supria Opticaは,AI技術を活用して設計された画像再構成技術である“IPV”*2を搭載した。IPVは,心臓撮影が可能な64列CT装置である「SCENARIA View」に実装されている技術であり,これをSupria Opticaにも実装した。IPVは十分な反復処理により得られる画像を教師データとして,高精度の処理を高速化することを可能とした。IPVは独自のビジョンモデル技術を開発し,rawデータを起点とした画像再構成処理をすることにより,noise power spectrum(NPS)をfiltered back projection(FBP)に近づけ,違和感のない質感を実現した。また,低コントラスト検出能は最大2倍に改善する。図2に,IPV適用画像例を示す。被ばく低減と視認性の両立に関した画像例で,IPVの適用により被ばく量が83%低減している。

図2 IPV処理例(被ばく低減と視認性)*3

図2 IPV処理例(被ばく低減と視認性)*3

 

■腹部領域撮影

ビームピッチ1.56までFOVの制限なしで使用できるため,胸腹部撮影など広範囲の撮影や息止めが困難な方の撮影などでも短時間で自由度の高い撮影が可能であり,検査を受ける方,特に円背で息止めなどが困難な方への負担軽減が期待できる。また,高精細撮影が可能であり,コントラストの良好な画像やアーチファクトの少ない画像が得られる。
Supria Opticaには,前述したIPVを搭載している。IPVと低管電圧撮影を組み合わせることにより,造影剤投与量の低減が期待できる。一般的に,造影検査時のCT値の上昇やコントラストの向上が期待できる低管電圧撮影において,増加するノイズをIPVにより低減し,検査を受ける方の負担を軽減する。

■‌経済性と設置性

Supria Opticaは,2MHUのX線管球を搭載した,ランニングコストなどの経済性に優れたCT装置である。前述のIPVと組み合わせることで最大12MHU相当(換算値)の性能を得られ,広範囲撮影や低管電圧撮影も可能である。Supria Opticaは12m2の広さがあれば設置可能で,さらに,X線発生ユニットを内蔵し電源ユニットもないため,ガントリ・操作卓・寝台の3ユニット構成(3相200V電源の場合)を実現する。

Supria Opticaに搭載の技術などを簡単に説明した。Supria OpticaはIPVなどの画像処理技術を搭載していながら,経済性や設置性に優れた64列CT装置でもある。さらに,AI技術を活用した画像処理とワークフローで,より高度なレベルでの診断をサポートし,病院経営や地域医療の最前線にさらなる革新を届ける所存である。

*1 SynergyDriveはワークフロー向上技術の総称。AI技術の一つであるMachine Learningを用いて開発した機能を含む。導入後に自動的に装置の性能・精度が変化することはない。
*2 IPVはIterative Progressive reconstruction with Visual modelingの略称。AI技術の一つであるmachine learningを活用して開発した機能である。導入後に自動的に装置の性能・精度が変化することはない。
*3 「IPV」の項で掲載している臨床画像(図2)は,SCENARIA Viewで撮影した画像である。

販売名:全身用X線CT診断装置 SCENARIA View
認証番号:230ABBZX00027000
販売名:全身用X線CT診断装置 Supria
医療機器認証番号:225ABBZX00127000
Supria Opticaは,Supriaの64列検出器,かつ2MHUのX線管装置を搭載したモデルの呼称

 

【問い合わせ先】
放射線診断事業部事業推進本部プロダクトマーケティング部
https://www.fujifilm.com/fhc

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