技術解説(富士フイルムメディカル)

2021年12月号

技術から見えるDRシステムの最前線

複雑かつ高度な検査。短時間で身近にした設計の秘密。

中村  正[富士フイルムヘルスケア(株)放射線診断事業部技術開発本部基盤技術開発部技術開発三グループ]

■‌X線透視診断装置「CUREVISTA Open」

X線透視診断装置の用途は,従来からの消化管造影検査だけではなく,近年では各種インターベンション治療が加わり,使用目的は多岐にわたっている。さらに最近では,従来他モダリティで行われてきた検査の一部を,X線透視診断装置に置き換える流れも進みつつある。例えば,通常一般撮影装置で行われる胸部撮影,長尺撮影,トモシンセシス撮影などが代表的な用途と言える。本稿では,X線透視診断装置CUREVISTA Openに搭載されたトモシンセシス撮影アプリの技術的な特長を紹介する。

■‌トモシンセシス撮影アプリ“TomoVIEW”

トモシンセシス撮影は,映像系の角度を変えながら高速で連続的に撮影し,得られた投影データにコーンビームCT再構成アルゴリズムを適用することで,コロナル断層画像を作成する機能である(図1)。トモシンセシス撮影は,診断精度の向上を目的に,一般撮影の追加撮影として活用されている。

図1 TomoVIEWのスキャンモードイメージ

図1 TomoVIEWのスキャンモードイメージ

 

■‌金属アーチファクト低減技術

トモシンセシス撮影では,金属などの高吸収体に対して再構成を行うと,その周りにアーチファクトが発生する。TomoVIEWには,CT装置開発で培われた独自の金属アーチファクト低減技術が適用されている。これにより,投影画像から金属部分が抽出され,金属投影画像と金属部分を低減した金属減衰投影画像が作成される。作成したそれぞれの画像を基に再構成した画像から金属アーチファクトを取り除き,質の高い断層画像を描出する(図2)。

図2 金属アーチファクト低減・逐次近似再構成のプロセスイメージ

図2 金属アーチファクト低減・逐次近似再構成のプロセスイメージ

 

■‌逐次近似再構成“RealtimeIR”

逐次近似再構成の主な目的は,SNR向上による高画質化である。逆説的には,同等のSNRを維持することで被ばく線量の低減を図ることも可能になると言える。
追加撮影には被ばく線量の増加が伴う。そこで,上記のような低被ばく化につながる新たな手段を装備しておくことは,X線装置メーカーの務めであると考えている。

■‌ノンビニング処理(1×1 pixel読み取り)

トモシンセシス撮影のデータ取得では,ビニングとノンビニングの2つの処理方式がある。ビニング処理は,複数画素をひとまとめとして読み取ることで高速化することが可能だが,解像度劣化というトレードオフが伴う。一方,ノンビニング処理は,1画素ずつ読み取ることでビニング処理よりも高い解像度での再構成が可能であるが,処理できる速度に影響して視野サイズが限定される場合もある。追加撮影を行う目的の本質は,診断精度の向上であると言える。したがって,TomoVIEWでは,ビニング処理(低い解像度の画像)ではなく,すべての視野サイズでノンビニング処理(高い解像度での画像)に基づいた描出方法を実装した。

■‌画像処理エンジン「VISTABRAIN」

画像の高画質化においては,多くの複雑なアルゴリズムを高速かつリアルタイムで実行できるプラットフォームが必要である。これらのソフトウエアを日々の臨床で常用するには,それを支える高速演算できるハードウエアが必要不可欠である。業界のレガシー機種では,別置きのワークステーションにて処理していたため,設置性やワークフロー,処理時間に課題を残していた。これらに対し,弊社の画像処理エンジンVISTABRAIN(標準仕様)は,上述した課題を解決している。その理由は,高性能なGPUが搭載されているからだ。GPUは,トモシンセシス撮影の推奨プロトコール*において,短時間再構成を可能とし,高い運用性を提供している。

*ノンビニング/12インチ/(20°モード)/再構成81スライス/繰り返し演算5回

 

【問い合わせ先】
プロダクトマーケティング部
URL  https://www.fujifilm.com/fhc

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