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社会医療法人柏葉会 柏葉脳神経外科病院
スピードと画質を両立するECHELON Smart Plusで地域の急性期脳卒中治療を支える
QSM など最新技術の臨床応用にも活用
2023-5-25
社会医療法人柏葉会 柏葉脳神経外科病院は,「信頼と尊敬の医療」を理念に,地域の急性期脳卒中や脳腫瘍治療を担っている。2022年2月に富士フイルムヘルスケア社製の1.5T MRI「ECHELON Smart Plus」を導入し,医療サービスの向上とともに,最先端の医療技術の臨床応用に積極的に取り組んでいる。同院でのECHELON Smart Plusの活用について,先端医療研究センターの松澤 等センター長と放射線科の原田邦明科長(診療技術部長兼任),鈴木淳平副科長,石田 宙技師に取材した。
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社会医療法人として地域の脳卒中診療の中心的役割を担う
柏葉脳神経外科病院は,1971年4月に札幌市で開院後,2004年の特定医療法人の認可を経て,2020年3月に社会医療法人柏葉会として認可された。より公益性の高い医療法人として,さらに高い専門性と総合力を兼ね備えた医療の提供をめざしている。また,2019年に一次脳卒中センター(PSC)認定を取得,2022年にはPSCの中で日本脳卒中学会が定めた条件を満たし,脳血栓回収治療を24時間365日体制で実施可能な医療機関である一次脳卒中センターコア(PSCコア)に認定された。PSCコアは,札幌市内では同院を含め4施設のみで,年間の救急車受け入れ台数は2000台以上に上り,地域の脳卒中診療の中心的な役割を担っている。
急性期に求められる画質とスピードを両立するECHELON Smart Plus
同院の放射線科は,12名の診療放射線技師が所属し,3台のMRI(3Tが1台,1.5Tが2台)のほか,CTや血管撮影装置,SPECT装置などを1台ずつ備える。年間のMRI検査数は約1万5000件で,90%以上を頭部検査が占めている。
そのような中,2022年2月に約15年使用してきた他社製MRI装置を更新し,ECHELON Smart Plusを導入した。その選定理由について松澤センター長は,「旧装置はSNRが低く画質が安定せず,検査時間が長いという課題がありましたが,ECHELON Smart Plusは安定した画質とスループット向上が得られます。また,国内メーカーのため装置本体や保守契約の費用が低く抑えられ,施設の経営面でのメリットが大きいことも理由の一つです」と述べる。
現在のECHELON Smart Plusの1日の検査数は平均21.1件で,予約外検査や脳ドックなど,3台あるMRI装置の中で最も多くの検査を行っている。それについて原田科長は,「3T装置では,高精細撮像や3T特有シーケンスの撮像,2021年10月に導入したMRガイド下集束超音波治療(FUS)などを行っており,検査数は制限されてしまいます。その分をカバーしているのがECHELON Smart Plusです」と話す。
ECHELON Smart Plusは,「ECHELON Smart」に人工知能(AI)を用いて開発したワークフロー向上技術「SynergyDrive」を搭載する。SynergyDriveは,高速撮像技術「IP-RAPID」やノイズ除去技術「REALISE Plus」,自動撮像機能「AutoExam」などの総称で,画質の維持と撮像時間短縮を両立する。
鈴木副科長は,「当院のような急性期病院では,短時間での撮像が求められます。1検査あたり15分以内を想定し,さらにほぼ全例でMRAのMIP画像処理を行います。MRI 1台ごとに助手1名を配置し,患者の入退室や検査後の清掃・片付けなどは助手が行うことで検査のスループット向上を図っていますが,ECHELON Smart PlusはIP-RAPIDやREALISE Plus,体動補正技術『RADAR』により短時間で必要な画像が撮像できます。また,AutoExamは,自動位置決め機能『AutoPose』や頭部MRAの自動クリッピング機能『AutoClip』などにより,位置決めから撮像,後処理,画像転送などの一連の作業が自動で行われ,時間内にスムーズな検査を行うことが可能です。特にAutoPoseは,OM LineやMRAモードなど,撮像断面の角度や範囲のパターンを事前に設定でき,経験年数が短い新人技師でも,すぐにベテラン技師と同等の位置合わせができます。また,救急外来では仰向けで寝ることができない患者さんも多いですが,ほとんど問題なく撮像断面を設定でき,時間のロスなく検査が開始できます」と話す。
さらに,一般・企業向けの脳ドックにもECHELON Smart Plusを活用している。鈴木副科長は,「脳ドックは月に約80件行っていますが,入退室を含めて1件あたり約20分かかります。また最近,AIを応用して海馬の萎縮を判定するプログラムもオプションとして導入しました。ECHELON Smart Plusは短時間で必要なシーケンスを撮像できるため,検査枠を変更することなく行えるのは大きなメリットです」と述べる。
■症例1:プロラクチン産生下垂体腺腫(オープンヘッド)
■症例2:左中大脳動脈(M1)高度狭窄(ASL画像)
Smart Theatreとオープンヘッドコイルでほぼ全例で検査可能に
同院では,ECHELON Smart Plusと同時にボア内映像投影システム「Smart Theatre」を導入した。その効果について石田技師は,「以前は,閉所恐怖症のため検査が受けられない患者さんがいましたが,Smart Theatre導入後に行ったアンケートでは,『問題なく,楽に検査を終えられた』という意見が多く,現在はほぼ全例でSmart Theatreを使用しています」と話す。2023年1月にはSmart Theatreがバージョンアップされ,映像の画質が向上し,アニメーションなどのコンテンツが増加した。また,脳ドックなどを対象に,クイズなど検査が短く感じられるようなコンテンツの開発を同院とメーカーが共同で行っている。
さらに,鈴木副科長が高く評価するのが前面を外した状態(オープンヘッド)での撮像が可能な同社独自のヘッドコイルだ。鈴木副科長は,「オープンヘッドにすれば,患者さんの圧迫感が減り,手術後などで動きに制約のある患者さんにも大変有用です。感度も高く,装置の画質向上機能と組み合わせることで必要な画質が得られます」と話す。また,閉所恐怖症患者では体動が生じがちだが,Smart Theatreとオープンヘッドコイルを組み合わせることで,ほぼすべての患者で検査を行えている。
なお,最近では近隣の医療施設から委託された整形外科領域の検査をECHELON Smart Plusで行っている。汎用コイルでの撮像だが,高画質で依頼元の医師からも高評価が得られているという。
ECHELON Smart Plusで最先端技術を臨床現場で活用
同院では,2021年8月に先端医療研究センターの運用を開始,最先端の医療技術のいち早い臨床応用について,同センターの王冊研究員と共に取り組んでいるが,そこでもECHELON Smart Plusは大きな役割を果たしている。その一つが,位相画像から生体組織間の磁化率差を定量的に算出する定量的磁化率マッピング(QSM)である。松澤センター長は,「以前所属していた研究所では,3T装置を用いてオフラインでQSMを行っていましたが,解析に非常に時間がかかる上,脳表面などの算出は困難でした。しかし,ECHELON Smart Plusは出血と石灰化の区別など,救急で必要な情報のQSM解析がコンソール上で可能で,非常に有用です」とそのインパクトの大きさを評価する。
また,従来は3T装置でのみ行っていたASL(Arterial Spin Labeling)をECHELON Smart Plusでも開始しており,急性期での脳血流量の評価のほか,フォローアップに活用している。松澤センター長は,外来でも週3回診療を行っているが,「ECHELON Smart Plusは,ASLのラベル位置の設定などをはじめ,臨床医が必要とする機能が実現されていると感じます」と話す。
ECHELON Smart Plusを活用しより高度な医療の提供をめざす
ECHELON Smart Plus導入から約1年が経過したが,同院では,装置の性能・機能を高く評価しつつ,より高度な医療の提供を実現すべく取り組んでいる。
原田科長は,「腹部や整形外科領域などですでに高評価を得ている装置ですが,当院のような急性期の脳神経外科領域での運用にとってより有用な機能を,メーカーと共に開発していきたいですね」と話す。また,国内メーカーであることがECHELON Smart Plusの選定理由の一つだったが,それは「ユーザーの声が届きやすい」という面もあると松澤センター長も期待を寄せる。QSMやASLなどの最新技術に関する共同研究もすでに進められており,札幌の地で,脳卒中治療の新たな可能性が広がろうとしている。
(2023年2月20日取材)
*ご所属,肩書きは取材当時のものです
〒062-8513
北海道札幌市豊平区月寒東1条15丁目7番20号
TEL 011-851-2333
https://www.kashiwaba-nougeka.or.jp
診療科目:脳神経外科・脳神経内科・循環器内科・リハビリテーション科・放射線科・麻酔科
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