技術解説(キヤノンメディカルシステムズ)
2022年4月号
腹部画像診断における核医学の技術の到達点
腹部画像診断におけるデジタルPET-CT装置「Cartesion Prime」の展望
高階 慶人[キヤノンメディカルシステムズ(株)核医学営業部]
キヤノンメディカルシステムズ株式会社は,唯一の国産デジタルPET-CT装置「Cartesion Prime」を販売している。
Cartesion Primeは,PET部には半導体光検出素子(silicon photomultiplier)の特長を最大限に生かしたデジタル検出器「SURECount Detector」を搭載し,TOF時間分解能が実測263ピコ秒という優れた性能を実現した。また,27cmの長い体軸方向有効視野を持つ。高性能80列CTシステムとの組み合わせによって,FDG腫瘍検査における高画質と高スループットを実現。腹部領域はもちろんのこと,頭部や心臓などの,今後普及が期待される領域での活用も視野に入れた装置である。
2021年4月には,ディープラーニングを用いて設計された画像再構成技術“Advanced intelligent Clear-IQ Engine-integrated(以下,AiCE-i)”をPET部,CT部両方に搭載した。本稿では,このAiCE-iのPET画像への効果を中心に,腹部画像診断における展望を紹介する。
■AiCE-iのPETへの適用
AiCE-iは,設計段階で長時間収集したデータを教師データとして,統計ノイズが含まれた短時間収集のデータからノイズとシグナルの識別を学習している。装置には,すでに学習ずみのアルゴリズムが搭載されるため,ユーザーは画像再構成時にAiCE-iの使用有無を選択するだけで操作が完了する。
AiCE-iで再構成を行ったPET画像は,一般的に用いられるGaussian filterのように,一様に平滑化を行う処理とは異なり,位置分解能/コントラストを損なわずノイズが選択的に除去される。そのため,微小病変の描出能の向上もさることながら,低投与量,あるいは短時間の収集でも高画質を得ることができる(図1)。
■AiCE-iによる呼吸性体動への効果
AiCE-iによってSNRが向上することにより,例えば20s/bedといった短時間でも画質を担保することができる。その20秒間,被検者に息止めを行ってもらえば,呼吸動による位置分解能低下を軽減した画像を得ることができる(図2)。また,息止めを実施した場合,CT撮影との呼吸条件をそろえることができるため,呼吸同期によって生じるPET画像とCT画像との位置ズレ(ミスレジストレーション)の抑制にも期待ができる。
■AiCE-iによる生理的集積の鑑別
AiCE-iによる短時間収集の実現については前項で述べているが,さらに応用したプロトコール例を図3に示す。wholebody収集ではAiCE-iによって収集時間の短縮が見込めるため,従来の検査時間の中でdynamic収集が追加できる。このdynamic収集は1bedの収集になるが,Cartesion Primeは27cmの大有効視野を有しているため,腹部領域を1bedに収めることが可能である。dynamic収集の中で短時間のフレームを繰り返すことで,複数時相における腹部画像が作成でき,蠕動運動などを考慮した生理的集積の鑑別評価に応用できると考える。
◎
本稿では,腹部領域におけるCartesion PrimeおよびAiCE-iの有用性を紹介した。悪性腫瘍に対する新たな診断・治療法の登場により,全身検査の重要性はさらに増している。precision medicineとして,より高い診断能を与えるPET画像が必要になる。Cartesion Primeはデジタル検出器と人工知能(AI)技術により,進化するprecision medicineに貢献できるPET-CT装置である。今後の情勢の変化にも対応すべく新機能の開発を進め,高品質・多様性のあるPET-CT検査を提供できるように取り組んでいく。
一般的名称:X線CT組合せ型ポジトロンCT装置
販売名:PET-CTスキャナCartesion Prime PCD-1000A
認証番号:301ACBZX00003000
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広報室
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