技術解説(キヤノンメディカルシステムズ)

2022年4月号

腹部画像診断におけるXA/DRの技術の到達点

「Alphenix Hi-Def Detector」搭載血管撮影装置の腹部領域への展開

小野 宏樹[キヤノンメディカルシステムズ(株)X線営業部アプリケーション担当]

近年,IVRの発展はめざましく,それに伴い治療法の複雑化や適応疾患の拡大が進んでいる。そのため,IVRに用いられる血管撮影装置においては,さらなる技術革新が重要であると考えられる。
当社の医用機器事業は,1914年の国内初のX線管の研究着手から始まり,以来,血管撮影装置の研究開発も長い歴史と変遷を経ている。そして,2018年4月には,当社血管撮影装置の最新シリーズとして「Alphenix(アルフェニックス)」をリリースし,現在国内外の多くの施設で導入されている。
Alphenixでは,従来から取り組んできた高画質と低被ばくの両立を実現しつつ,新たな技術として,高精細検出器「Alphenix Hi-Def Detector(以下,Hi-Def Detector)」を搭載した血管撮影装置が登場し,脳血管内治療の現場において,その有用性を示している。このHi-Def Detectorは,2021年4月より腹部領域にも展開されており,本稿では,その最新技術について解説する。

■高精細検出器Alphenix Hi-Def Detectorについて

IVRの発展に伴い,血管撮影装置には,日々進化するコイルやカテーテル,ワイヤなどのデバイス類や,より細かな病変,目的血管の描出のための高い空間分解能が求められる。
血管撮影装置の空間分解能は,平面検出器のピクセルサイズに依存しており,ピクセルサイズが小さいほど空間分解能は高くなる。各社が販売している血管撮影装置用平面検出器のピクセルサイズは150〜200μmであり,当社従来の血管撮影装置に搭載する平面検出器のピクセルサイズも194μmとなっている。
そのような現状の中,既存の検出器よりも小さなピクセルサイズの検出器を開発することができれば,血管撮影装置の新たな次元に到達できるのではないかと考え,研究を進めてきた。そして,2018年に,血管撮影装置に対しHi-Def Detectorを搭載することを実現し,これまで国内外の脳血管内治療の現場において使用されている。さらに,2021年には,腹部領域のIVRで多く使用されている12インチ×16インチサイズ検出器の血管撮影装置へのHi-Def Detectorの搭載が実現した。
Hi-Def Detectorのピクセルサイズは76μmと非常に小さく,従来検出器のピクセルサイズの約1/4まで極小化している(図1)。X線チャートを用いた,従来の検出器との透視画像の比較では,Hi-Def Detectorの圧倒的な空間分解能の高さを実感することができる(図2)。
また,当社では,従来検出器の場合,6インチ以下の大きさまで視野拡大を行う際にはデジタルズームを用いている。しかし,デジタルズームは画像の一部を引き伸ばすことで視野拡大を行うため,大きく引き伸ばすほどピクセルサイズも拡大され,画像が劣化する。Hi-Def Detectorでは,76μmという非常に小さなピクセルサイズを有することにより,画像の劣化をほとんど起こさずに1.5インチまでの視野拡大を可能としている。

図1 Hi-Def Detectorのイメージ図

図1 Hi-Def Detectorのイメージ図
ピクセルサイズ76μmを実現(緑部分)

 

図2 X線チャートの透視画像比較

図2 X線チャートの透視画像比較
a:Hi-Def Detector
b:従来検出器
Hi-Def Detectorでは高い空間分解能により,X線チャートの細かなラインまで視認が可能となっている。

 

これまでHi-Def Detectorが提供する高精細な画像は,脳血管内治療の領域において,コイリングやステント留置などの場面で術者が確信を持って手技を進めるための指針となっている。今回,腹部領域においても同様の最新技術を搭載した血管撮影装置がリリースされ,今後,さらなるIVRの発展に寄与できるものと考える。このAlphenixが,より多くの患者や医療従事者の利益に貢献できれば幸いである。

* Alphenixはキヤノンメディカルシステムズ株式会社の商標です。

 

【問い合わせ先】
広報室
TEL 0287-26-5100
https://jp.medical.canon/

TOP