本稿では，腹部領域の最新のアプリケーションについて紹介する。

■ “Advanced intelligent Clear-IQ Engine”の特長

Advanced intelligent Clear-IQ Engine （以下，AiCE）は，設計段階にディープラーニングを用いたSNR向上技術である。低SNRの画像と加算回数を増やした高SNR画像を用いて，高SNRの画像に近づくように畳み込みニューラルネットワークを学習している。学習する際に高周波成分と低周波成分を分けて学習することにより，高い汎用性を有し，2Dや3Dおよび拡散強調画像を含む定量画像にも使用することが可能である（図1）。近年，上腹部領域の臨床応用として，肝臓の高分解能撮像の画質改善^1）や，呼吸停止3D-MRCPの画質改善と高速撮像の両立が可能である^2）との報告がなされている。

図1　AiCEの概念図

■ 高速化撮像技術─“Fast 3Dモード”の特長と臨床応用

3D撮像の課題の一つとして，長い撮像時間が挙げられる。腹部撮像においては，呼吸停止時間の延長や同期不良によって画質劣化が生じる場合がある。そこで当社は，撮像時間の短縮を目的として，Fast 3Dモードを開発した。Fast 3Dモードは，k-spaceの充填方法を工夫して撮像時間を短縮する技術である。目的に応じて撮像時間の短縮化や高分解能化が可能となる。Fast 3Dモードを使用した腎動脈3D Time-SLIP画像を示す（図2）。従来と同じ撮像時間であれば，空間分解能を2倍に設定できる。thin slice化や高分解能化によるSNRの低下は，AiCEを適用することで補うことが可能であるため，より詳細な非造影MRAの観察が可能となる。

図2　Fast 3Dモードによる高分解能撮像

■ 定量化解析技術─FFQ

Fat Fraction Quantification（FFQ）は，水脂肪分離の機能を拡張した6ポイントDIXON法である。1回の呼吸停止で肝臓全体のproton density fat fraction（以下，PDFF）やR2^＊を得ることが可能であり，これらの画像は脂肪定量や鉄沈着の評価に活用されている。当社では精度の高い定量化を実現するため，multiple dual echo reconstructionを行っている。この手法は，6つの異なるTE画像から3ペアごとにdual echo reconstructionを行い，次いで，水，脂肪の一次推定を行う。最終的に，すべてのエコー情報を加味してPDFFとR2^＊を出力する。この手法は，single dual echo再構成と比較して，高い推定精度が得られる^3）。AiCEは定量解析画像に対しても適用できるため，定量値に影響することなくデータのバラツキを抑えることが可能である（図3）。

図3　FFQにAiCEを適用した症例
AiCE前後で定量値は変化せずSDが小さくなっている。

◎

以上，腹部領域の臨床活用について紹介した。当社は引き続き患者負担の少ない臨床ニーズに応える技術開発に取り組んでいく。

^{●参考文献
1）Tanabe, T., et al. : Feasibility of high-resolution magnetic resonance imaging of the liver using deep learning reconstruction based on the deep learning denoising technique. Magn. Reson. Imaging, 80 : 121-126, 2021.
2）Tajima, T., et al. : Breath-hold 3D magnetic resonance cholangiopancreatography at 1.5T using a deep learning-based noise-reduction approach : Comparison with the conventional respiratory-triggered technique. Eur. J. Radiol., 144 : 109994, 2021.
3）Sharma, S.D. : Multiple dual echo reconstruction to improve the robustness of water-fat MRI. ISMSM 2020 #3230.}