技術解説(キヤノンメディカルシステムズ)
2016年4月号
Abdominal Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点
腹部画像診断を支援する最新CT技術とアプリケーション
中島 沙記(CT営業部)
■Premium compact CT「Aquilion Lightning」
Aquilion Lightningは,Aquilionシリーズの最新技術が搭載された16列CTである(図1)。高速かつ高画質での撮影が可能となり,「Aquilion ONE」向けに開発されたさまざまな先進テクノロジーを余すところなく搭載している。
1.高速撮影&高速ワークフロー
Aquilion Lightningは,高速ガントリ回転により,体動によるアーチファクトを極力抑え,広範囲を高分解能で撮影することができる。また,15画像/秒の16列最高クラスの高速画像再構成により,スピーディに画像を提供する。これら高速撮影と高速画像再構成により,検査全体のワークフローの高速化を実現する。
2.高画質と低被ばくの両立
Aquilion Lightningには,Aquilion ONEで新たに開発された新型検出器“PUREViSION Detector”を採用している。検出器素材の最適化とDASの実装密度の最大化による電気ノイズの低減など,低線量撮影に対する検出器性能が大幅に向上した。さらに,逐次近似応用画像再構成法“AIDR 3D”に空間分解能と粒状性を維持するように作用するNPSモデルを付加した“AIDR 3D Enhanced”を搭載している。最新のハードウエアとソフトウエアにより,高画質・低被ばくをさらに高い次元で両立できる。
3.大開口径で省スペース
Aquilion Lightningのガントリは,16列/32スライスCTで最高クラスの780mm大開口径を採用している。被検者への圧迫感軽減,また操作者には位置合わせをしやすいなど快適な検査環境を実現する。
ガントリ内ユニットの設計を一から見直し,極限まで小型化・レイアウトを最適化することで,ガントリと寝台の設置面積は,最小設置面積9.8m2を実現した。
4.最新テクノロジーによるCT検査適応拡大への期待
アルゴリズム内部に逐次近似画像再構成法を一部応用した“SEMAR(Single Energy Metal Artifact Reduction)”を標準搭載し,従来CTで診断の妨げとなっていた金属周辺部のアーチファクトを大幅に低減する。ボリュームスキャンおよびヘリカルスキャンに適応可能で,金属インプラントや人工関節など幅広く対応するのも特徴である。
■医用画像処理ワークステーション「Vitrea」
CTから得られた画像をさらに診断価値の高い画像にするためには,ワークステーションの役割も重要となる。当社医用画像処理ワークステーションVitreaは,「高度な医療画像処理をやさしい操作性で」というコンセプトで,簡便なワークフローを実現している。
CTからの画像転送後,適切な解析アプリケーション候補が自動選択される機能を搭載しており,効率的なワークステーションの運用が可能となる。本ワークステーションは,施設のニーズに合わせ,スタンドアロンタイプとマルチクライアントタイプがあり,また,診療科ごとの多彩なアプリケーションを搭載している。
ここでは,腹部領域のアプリケーションを紹介する。
1.解析アプリケーション(腹部領域)
1)体脂肪面積計測
内臓脂肪の蓄積は,さまざまな生活習慣病の主要因と推定されており,正確な内臓脂肪量の同定には,CTなどの医用画像による直接的な計測が必須である。
“体脂肪面積計測”アプリケーションでは,腹部単純撮影1スライスを用いて,全脂肪面積,皮下および内臓脂肪面積,腹囲,body mass index(BMI)を自動計測できる(図2)。また,ワンクリックで解析結果を表示,レポートも自動で作成される(図3)。
2)ボディパーフュージョン
ダイナミックボリュームスキャンの4Dデータを利用して,主に体幹部の灌流解析を行うアプリケーションである。体幹部臓器において,maximum slope法およびpatlak plot法を用い,血流量などの解析を行うことができる(図4)。特に,悪性腫瘍などにおいて,病態鑑別,治療効果判定が期待される。Vitreaの“ボディパーフュージョン”では,非線形体動補正機能が併用でき,呼吸や臓器の生理的な動きの影響を極力排除することが可能である(図5)。
3)CT肝臓区域セグメンテーション解析
肝切除術前評価に必要な情報を解析するためのアプリケーションを用意している。ワンクリックで肝臓,門脈,肝静脈などを抽出し,多時相データを自動で位置合わせした上で,肝臓や各血管のフュージョン表示を行う(図6)。さらに,切除肝や腫瘍のボリューム計測も行うことができる。
肝腫瘍のフォローアップ用機能としては腫瘍部を抽出することで,WHOもしくはRECISTプロトコルによる計測結果や腫瘍縮退効果を反映したレポートを作成することも可能である。
4)CT線量マネジメント
CT装置から線量情報(DICOM Radiation Dose SR)を収集し,装置,操作者,撮影プロトコル別に線量値・検査時間・検査数の統計・分析を行うことができる(図7)。最新のDRLを含めた各種線量ガイドラインを容易に参照することも可能である。装置管理やプロトコルごとの線量管理など,さまざまな側面で検査線量低減をサポートする。
*Aquilion Lightning,Aquilion ONEは,東芝メディカルシステムズ株式会社の商標です。
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キヤノンメディカルシステムズ(株)
広報室
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