技術解説(キヤノンメディカルシステムズ)
2013年3月号
造影超音波検査 最新技術
Aplio 500を使った乳腺造影
奈良 和彦(超音波営業部)
乳腺腫瘍に対して超音波造影剤ソナゾイドが保険収載されるに至り,腫瘍の広がり診断,良悪性診断,治療の効果判定への有用性が期待されている。本稿では,超音波診断装置「Aplio 500」(図1)における乳腺造影の設定と造影機能について解説する。
●装置設定
1.音圧,フォーカス点
超音波造影剤(バブル)は,ある音圧で超音波を照射すると,収縮,拡張,共振などが起こり,高調波成分が発生する。造影超音波は,この高調波成分をとらえ映像化しているため,超音波の音圧の設定は重要である。音圧の指標であるMI値は,当社では0.2前後を推奨している。また,フォーカス点は,より広い範囲で造影効果を得るために,対象腫瘍の下縁もしくは視野下縁に設定するのが良い。
2.造影手法
バブルからの高調波成分を効率良くとらえ,映像化する手法には,複数回の超音波送信と受信信号処理技術により,増幅された高調波成分を抽出し映像化する手法と,高調波成分に加え造影剤由来の基本波成分を増幅し映像化する手法があるが,Aplio 500は,それらの手法を独自にチューニングしたPulse Subtraction法(PS法)と,Advanced Pulse Subtraction法(APS法)を兼ね備えている。PS法は高い空間分解能が得られ,APS法はPS法に比べ高いペネトレーションと組織抑制効果が得られる。
3.プローブ・周波数
乳腺領域の超音波検査には,一般的に高周波リニアプローブが用いられる。Aplio 500での造影手法における推奨の周波数設定の一例を示すと,PLT-1204BTではh8.0MHz,PLT-805ATではh5.5MHz,PLT-704SBTではh5.5MHzである。
また,上記プローブに加え,新たにPLT-1005BT(図2)が開発され,発売されている。このPLT-1005BTは,視野幅:約58mm,標準駆動周波数:10MHz,(最大14MHz)であり,乳腺領域の超音波検査に有効な視野幅と周波数を兼ね備えており,造影手法にも対応している。
●造影機能
1.Micro Flow Imaging(MFI)
MFIは,画像ピクセルごとに最大輝度値をキャプチャするMax Hold処理を行うことにより,血流が乏しい血管形態をつながり良く表示でき,腫瘍内血管などの微小な血管構造の観察に有用な撮像法である。また,MFIは,画像重畳によるイメージングであるため,途中で生体臓器もしくはプローブが動くと画像がブレてしまうという問題があったが,このようなブレをリアルタイムに補正するStabilizer機能も開発され,造影超音波検査で簡便に使用できるようになっている。また,Aplio 500には,MFIに加え,ピクセルごとに画像の輝度が上昇した時間を監視しマッピングするParametric MFI機能(図3)を搭載でき,腫瘍の血行動態の違いを評価することに期待が持たれている。
2.4D造影機能
従来の2Dによる造影法では,血流動態の観察が,ある断面に限られるという制約があった。4D造影機能は,三次元の造影データをリアルタイムに収集・表示することが可能である。また,MFI法と組み合わせたMPR表示,Multi View表示も可能であり,腫瘍全体の経時的な血流評価,腫瘍と周囲血管との位置関係,腫瘍形態の三次元的把握に期待が持たれている。
3.Time Curve Analysis(TCA)
造影データの定量解析ツールであるTime Curve Analysis(TCA)機能は,腫瘍の鑑別,化学療法の効果判定に期待が持たれている。TCAは,2Dのみならず4Dにも対応しており,4Dデータの場合には,従来の二次元の解析ROI(region of interest)に対して,三次元のROIが利用できるため,客観性の高い定量結果の期待が持たれる。
以上のように,装置設定と造影機能により,「診断に必要な情報」が,正確かつ容易に得られることが期待される。「使いやすい」「わかりやすい」「診断しやすい」を求めて,今後もさらなる進歩をめざしたい。
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