キヤノンメディカルシステムズのヘルスケアIT技術
キヤノンメディカルシステムズ(株)エンタープライズ画像ソリューション部
Technical Information 技術解説
2024-1-10
近年,少子高齢化が進む中,医療現場は医療スタッフの不足という環境の下で,医療DXの推進が求められている。診断・治療の質の向上,医療リスク低減,患者QOLサービス向上などさまざまな課題を解決するために,キヤノンメディカルシステムズは「Made for Life」をスローガンに,デジタル情報のオープン性やクラウドを最大限活用したデータの統合を推進し,Deep Learningなどを活用した先進のAI技術を搭載したソリューションを展開し,医療業界でのパラダイムシフトというべき大きな変化を創っていく。
医療情報統合ビューアAbierto Cockpit
医療情報統合ビューア「Abierto Cockpit」は,患者ごとに治療や検査の情報を時間軸で統合し,診療シーン別に最適な情報を提供することができる。
電子カルテシステムに保管された診療情報と医用画像保管システムに保管された検査画像情報を,1つの画面内に統合して表示する。また,表示の際にAbierto Cockpit内で統一性を持たせたパネルで表現するため,表示順やデザインもバラツキがなく,同じ精度で情報参照が可能となる(図1)。実際の医療現場,例えば入院業務で活用することで,夜勤帯と日勤帯のスタッフ交代時にバイタルサインとカルテ記載を容易に把握し,申し送り業務をスムーズに行うことができる。また,カンファレンスにおいて,普段はそれぞれの専門システムを使用するメンバーでも,統一性のある,かつ統合されたデータで確認できるため,意識齟齬のリスクが低減され,スムーズなコミュニケーションを実現することができ,業務の効率化が期待できる。
さらに,医療安全においても価値を提供することが可能である。バイタルサインと検査結果に対して,あらかじめ設定したルールを用いて,強調表示アラームの通知とリスト化が可能である(図2)。入院患者のスクリーニング業務の効率化,介入が必要な入院患者に対する気づきや見落とし防止が期待できる。
このようにAbierto Cockpitは,医療の質向上や医療の安全性向上が期待できる。
読影支援ソリューションAbierto Reading Support Solution
近年,社会で働き方改革が望まれているが,読影医の働き方に関しても同様に注目されている。画像診断機器の目覚ましい発展によって,検査数・画像枚数は増加し,高齢化による患者数の増加,また読影医の減少など,さまざまな要因により日常の読影量は増すばかりである。このような状況は読影医の疲労やストレスとなり,読影の精度低下を引き起こす可能性もある。われわれはこのような課題に対し,読影支援ソリューション「Abierto Reading Support Solution(Abierto RSS)」によって読影業務を支援する。
1.Deep Learning技術を使用したアプリケーション(図3)
現在,Abierto RSSではNeuro向けとOncology向けのアプリケーションを展開しており,特に読影量が年々増加しているがんのフォローアップに対し,読影を支援するアプリケーションを提供している。
2.オープンなアーキテクチャ
自社製だけでなく,パートナー各社も含めた解析アプリケーションを搭載し,さまざまな領域のアプリケーションを提供可能である。また,PACSベンダーに依存せず解析結果を提供することが可能なため,現状の読影フローにスムーズに画像解析結果を取り入れることができる。
3.統一したユーザーインターフェイスで結果を参照可能
一般的なAI解析アプリケーションは,解析した結果をセカンダリキャプチャ画像で出力することが多いため,通常の読影で参照する際,オリジナル画像と比較する際に手間が多くなる。また,各社のマーキング方法が異なり,偽陽性などを含む画像もそのまま院内に配信されるため,AI解析アプリケーションの安全な運用が難しくなる。Abierto RSSでは,解析結果を専用のビューアである「Findings Workflow」で参照することで,すべての解析結果を統一したユーザーインターフェイスで参照することができる。また,解析結果に対しても修正や確定が可能であり,正しい結果のみを院内へ配信する機能を有している。Findings Workflowは読影に適したレイアウト表示のため,読影業務の効率化にも貢献する(図4)。
今後も各画像診断の質の向上と業務の効率化の両面から,診療科向けのアプリケーションを展開し提供していく。
ペースメーカー統合管理サービスCardioAgent Pro for CIEDs
循環器疾患の中でも,心原性脳塞栓症の原因となる心房細動や,突然死を引き起こす心室細動といった不整脈への診療技術の進化が著しい。植込み型心臓電気デバイスには「遠隔モニタリング機能(RMS)」が搭載され,患者同意の下,在宅時でもメーカーのデータセンターにデバイスの状態や不整脈イベントが送信され,医療従事者はWeb上でデータ確認が可能となった。RMSは外来診療の軽減のみならず生命予後の改善にもつながるとし,本邦でも診療報酬で評価を受けて以来,遠隔診療のロールモデルとなっている。一方で,RMSの普及につれ,データ確認や対応など医療者側の業務負担増は深刻化してきている。
この課題を解決するために,2021年にペースメーカー統合管理サービス「CardioAgent Pro for CIEDs」をリリースした。各省ガイドラインに準拠した医療クラウド基盤で,通信インターフェイス(API)を連携し,各メーカー登録患者のRMSデータを自動収集,一元管理することを実現した。従来,各メーカーのWebサイトにアクセスして個別確認が必要だった業務の大幅削減が可能となった。施設内に設置するクラウドとの通信ゲートウェイとは,VPN接続かつ電子証明書によるなりすまし防止を施し,VPN装置のファームウエアは定期自動アップデートを講じ,常に最新バージョンのネットワーク環境を提供する。
院内端末に専用アプリをインストールすることなく,どの端末からもブラウザ上で確認が可能となり職種間での情報共有に寄与する。また,ワンクリックで受信データのサマリを生成する機能も有し,電子カルテへの転記作業も効率化が図られ,管理業務そのものの改善が可能となった。
本ソリューションは特別な支援システムとしてではなく,当たり前のツールとしてデバイスマネジメントに携わる医療従事者になじんでいただけるよう,今後も医療現場に寄り添ったサービスを提供する。
このようにキヤノンメディカルシステムズは,医療に従事されるスタッフに対し,臨床的なClinical Valueとワークフローを改善するOperational Valueを提供し,未来の医療を牽引する。
以下はエルピクセル株式会社の医療機器です。
EIRL Chest CT
EIRL X-ray Lung nodule
EIRL Chest Metry
EIRL Brain Aneurysm
*EIRL Chest ScreeningはEIRL X-ray Lung noduleとEIRL Chest Metryを含めたアプリケーションの総称です。
※Abierto Reading Support SolutionはAbierto SCAI- 1 APの愛称です。
一般的名称:汎用画像診断装置ワークステーション用プログラム
販売名:汎用画像診断ワークステーション用プログラム Abierto SCAI- 1 AP
認証番号:302 ABBZX 00004000
※記事中にある骨転移など病変の記載は医師の診断に基づきます。装置やソフトウェアが判断するものではありません。
※記事内容はご経験や知見による,ご本人のご意見や感想が含まれます。
※記事中にあるAIという記載は設計段階でAI技術を用いたことを示しており,システムに自己学習機能を有するものではありません。