Healthcare IT ソリューション(読影支援ソリューション)
神長 茂生(キヤノンメディカルシステムズ株式会社 ヘルスケアIT事業部HIT事業戦略部)
Healthcare IT
2021-6-25
キヤノンメディカルシステムズのミッションは,“Made for Life”の経営スローガンのもと,ユーザーとともに作り上げてきたモダリティやヘルスケアIT技術を活用し,院内に散在するデータを利活用できる形で統合し,人工知能(AI)などの最新技術により解析を行い,結果を医師が診療の場で活用できるようソリューションを提供することである。
これらの領域に対して,ヘルスケアIT事業部では,データの収集と統合により診療情報の二次利用などを可能にする医療情報統合管理システム「Abierto VNA」,VNAに蓄積された各種データを有機的に統合し,情報の加工と提供を行う医療情報統合ビューア「Abierto Cockpit」を開発・製品化し,診療支援技術を臨床に提供してきた。本講演では,Abiertoシリーズの新たな展開として,2020年7月に販売を開始した読影支援ソリューション「Abierto Reading Support Solution(Abierto RSS)」について紹介する(図1)。
Abierto RSS の概要
Abierto RSS は,さまざまな解析アプリケーションを臨床領域ごとに提供し,その結果を読影ワークフローの中で効果的に活用し,読影業務を効率化する新しい読影支援ソリューションである(図2)。コアコンポーネントである“Automation Platform”は,モダリティで撮影した画像データを受信すると,あらかじめ設定したルールに従い必要なアプリケーションを実行し,結果をPACSに送信することで,スピーディな読影を支援する。自社のアプリケーションはもとより,パートナー各社のアプリケーションも搭載可能とするオープンなプラットフォームのため,各臨床領域で必要なアプリケーションを診療の場に提供することが可能となる。
脳卒中への取り組み
脳卒中は,多くの医療費を費やす要介護となる要因の第2位である。急性期脳梗塞の治療には,血栓溶解療法と血栓回収療法があり,“Time is brain”と言われるとおり,重度な後遺症を残さず患者のQOLを高めるためには,発症から治療開始までの時間をできるだけ短縮することが求められる。そこでAbierto RSSでは4つのアプリケーションを開発した(図3)。単純CTを活用する2つのアプリケーションは,脳卒中疑い患者に対して出血および虚血サインの有無を評価するために用いる(脳実質評価)。また,造影CTを活用する2つのアプリケーションのうち,1つは脳梗塞患者の閉塞血管の評価(脳血管評価)に用い,もう1つは脳灌流評価を目的としている。
また,Abierto RSSはキヤノングループが運営する医用画像クラウドサービス“Medical Image Place”と連携することでさまざまなサービスを提供する。Automation Platform で動作するアプリケーションはサブスクリプションモデルによって提供されるため,最新のソフトウエアや新規のアプリケーションをクラウドからダウンロード可能で,アプリケーションの稼働状況もモニタリングすることができる。
さらに,Automation Platformで実行したアプリケーションの結果をクラウドにアップロードすることで,施設の内外を問わず,モバイル参照が可能となる。脳梗塞の事例においては,最初に搬送された病院でアプリケーションにより出血および虚血サインを評価する。血栓溶解療法による治療を行い,血栓回収療法を行える病院に患者を搬送する際には事前に解析結果を搬送先の病院と共有することが可能となる(図4)。
まとめ
Abierto RSSでは,自動化による読影ワークフロー効率化のためのAutomation Platform,最初の臨床ターゲットである脳内の出血・虚血サインなどを評価するアプリケーション,およびサブスクリプションモデルやモバイル参照などのクラウドサービスを提供可能である。今後は,脳卒中はもとより他の臨床領域に対応するアプリケーションも拡充し,さらなる読影ワークフローの改善に取り組んでいく。
Abierto Reading Support Solution
一般的名称:汎用画像診断装置ワークステーション用プログラム
販売名:汎用画像診断ワークステーション用プログラム Abierto SCAI-1AP
認証番号:302ABBZX00004000
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